
【決定版】なぜ「信用取引はやめとけ」と言われるのか?初心者が破滅するメカニズムと生存戦略を徹底図解
「信用取引はやめとけ」という言葉、投資の世界では耳にタコができるほど聞く格言ですよね。
しかし、なぜこれほどまでに「やめとけ」と警告されるのか、その真の恐ろしさと仕組みを初心者の方でも体系的に理解できるよう徹底解説します。
監修者:市川雄一郎
GFS校長。CFP®。1級ファイナンシャル・プランニング技能士(資産設計提案業務)。日本FP協会会員。日本FP学会会員。 グロービス経営大学院修了(MBA/経営学修士)。
日本のFPの先駆者として資産運用の啓蒙に従事。ソフトバンクグループが創設した私立サイバー大学で教鞭を執るほか、講演依頼、メディア出演も多数。著書に「投資で利益を出している人たちが大事にしている 45の教え」(日本経済新聞出版)
公式X アカウント 市川雄一郎@お金の学校 校長
第1章:なぜ「信用取引はやめとけ」と言われるのか?
「信用取引はやめとけ」――。この言葉は、単なる投資のアドバイスを超え、先人たちが資産を溶かし、家庭を壊し、人生を狂わせてきた血の滲むような教訓の集大成です。なぜこれほどまでに否定的な意見が強いのか。その理由は、信用取引が持つ**「不可逆的な破壊力」**にあります。
1. 「投資」から「借金」への変質
まず、初心者が最も勘違いしやすいのが「自分の資金の範囲内でやっているつもり」という感覚です。
現物取引は、どこまでいっても「資産運用」の域を出ません。100万円で買った株が紙屑になっても、失うのは100万円だけです。しかし、信用取引に足を踏み入れた瞬間、あなたの立場は「投資家」から「債務者(借金をした人)」へと変貌します。
無意識の借金: 証券会社のボタン一つで、自分の持っていない200万円、300万円という大金が動かせます。この「手軽さ」が、借金をしているという恐怖心を麻痺させます。
返済義務の発生: 現物なら「いつか上がるまで放置」ができますが、借金には必ず「返済」が伴います。この返済義務こそが、投資判断を狂わせる元凶となります。
2. 「負の複利」が資産を食い尽くす
アインシュタインが「人類最大の発明」と呼んだ複利の効果は、信用取引においては「人類最大の破滅装置」として機能します。
例えば、レバレッジ3倍で勝負をして、株価が10%下落したとしましょう。
現物取引なら、100万円が90万円になるだけ(マイナス10%)。
信用取引(3倍)なら、300万円分のポジションが10%下落し、30万円の損。元手の100万円から見れば、一瞬で30%の資産が消滅します。
ここからが地獄の始まりです。失った30%を取り戻すためには、次は約43%の利益を出さなければなりません。焦ってさらにレバレッジをかける……この「負のループ」に陥ると、数学的に資産がゼロになる確率は飛躍的に高まります。
3. 「時間」が味方ではなく「敵」になる
投資の最大の武器は「時間」です。複利を味方につけ、長期で保有することが成功の王道とされます。しかし、信用取引において時間は「コスト」であり「敵」です。
金利と貸株料: 1日ごとに金利が発生します。株価が動かなくても、持っているだけで毎日財布からお金が零れ落ちていきます。
制度信用の期限: 日本の制度信用取引には「6ヶ月」という返済期限があります。どんなに「あと1ヶ月待てば絶対上がる!」という確信があっても、期限が来れば強制的に決済させられます。
精神的摩耗: 毎日金利を払いつつ、期限に怯えながら株価ボードを眺める生活は、人間の精神を著しく摩耗させます。このストレスが、正常な判断力を奪い、「早く楽になりたい」という一心で誤った売買を誘発するのです。
4. 「追証(おいしょう)」という制度的暴力
「やめとけ」と言われる最大の物理的理由は、この追加保証金(追証)制度にあります。
株価が下落し、保証金維持率(担保の余裕度)が一定ラインを下回ると、証券会社から容赦ない通告が届きます。「明日までに〇〇万円入金してください。できなければ、全ての株を成行で強制売却します」という宣告です。
追い詰められる私生活: 追証を払うために、生活費や貯金を切り崩し、あるいは消費者金融に走る人さえいます。「ここで入金すれば助かる」というギャンブラーの心理に陥るのです。
最悪のタイミングでの強制終了: 追証による強制決済は、往々にして「相場の底」で行われます。全員が投げ売りをさせられ、株価が一番安いところで市場から叩き出される。そして、その直後に株価がリバウンドするというのが、信用取引で退場する人の典型的なパターンです。
5. 市場の「クジラ」に狙い撃ちされる
株式市場には、機関投資家やヘッジファンドといった「プロ」がいます。彼らは個人投資家がどの価格帯で信用買いを溜め込んでいるか(信用残)を常に監視しています。
投げ売りの誘発: プロたちは、個人投資家が追証に耐えられなくなる価格まで意図的に売り崩しを仕掛けることがあります。個人がパニックを起こして強制決済(投げ売り)をする、その安くなった株をプロが悠々と買い取る。
狩られる側としての自覚: 信用取引を使う初心者は、プロから見れば「少し揺さぶればすぐに現金を差し出してくれるカモ」に過ぎません。
6. 成功体験という名の「猛毒」
実は、信用取引で一番怖いのは「最初に勝ってしまうこと」です。
万能感の錯覚: 少ない元手で、サラリーマンの月収を1日で稼いでしまう。この成功体験は、脳に強烈なドーパミンを放出させます。
リスク感覚の喪失: 「現物でコツコツやるのが馬鹿らしくなる」という感覚。これが破滅への特急券です。一度レバレッジの味を覚えると、通常の地道な投資に戻ることができなくなり、最終的に訪れるたった一度の「想定外」ですべてを失います。
第1章のまとめ:なぜ「やめとけ」なのか
それは、信用取引が「失敗した時の再起を許さない仕組み」だからです。
投資において最も大切なのは「市場に居続けること」です。現物取引なら、どれだけ失敗しても次への種銭が残ります。しかし、信用取引は、あなたの資産だけでなく、将来の労働賃金(借金返済)や、家族との信頼、そして何より「冷静な精神状態」までをも担保に入れてしまう行為なのです。
「自分だけは大丈夫」という自信。それこそが、市場が最も好む「好物」であることを忘れてはいけません。
第2章:信用取引の仕組みを体系的に理解する
信用取引を理解する上で避けて通れないのが、「委託保証金」「レバレッジ」「代用有価証券」という3つの概念です。これらがどのように絡み合い、あなたの資産を爆発的に増やす(あるいは減らす)のか、具体的なシミュレーションを交えて解説します。
1. 資金が3.3倍になるマジック:レバレッジの計算
日本の証券ルールでは、信用取引を行うためには「売買代金の30%以上の保証金」を預ける必要があります。
つまり、手元の資金の約3.3倍までの取引が可能になるということです。
【具体例:100万円の元手がある場合】
現物取引: 100万円分の株を買う(株価が10%上がれば10万円の利益)
信用取引: 最大330万円分の株を買う(株価が10%上がれば33万円の利益)
これだけ見れば「効率がいい」と感じるでしょう。しかし、逆のケースが致命的です。
100万円の元手で330万円分購入し、株価が20%下落した場合:
損失額は 330 万円 × 0.2 = 66 万円 となります。
元手の100万円から66万円が引かれ、残高は34万円。たった20%の変動で、資産の66%が吹き飛ぶ計算になります。
2. 「保証金維持率」という命綱の仕組み
信用取引を継続できるかどうかを左右するのが「保証金維持率」です。これは、借りている金額(建玉)に対して、担保(保証金)がどれくらい残っているかを示す指標です。
多くの証券会社では、この維持率が20%〜25%を下回ると「追証(追加保証金)」が発生します。
【追証発生のシミュレーション】
自己資金(保証金): 100万円
購入した株(建玉): 300万円(レバレッジ3倍)
当初の維持率: 100 ÷ 300 = 33.3%
ここで、買った株が10%値下がりしたとします。含み損は30万円です。信用取引のルールでは、「含み損は保証金から差し引かれる」ことになっています。
実質の保証金: 100万円(現金) – 30万円(含み損) = 70万円
現在の維持率: 70 ÷ 300 = 23.3%
もし証券会社の追証ラインが25%だった場合、この時点で追証確定です。25%(75万円)に回復させるために、最低でも5万円を翌営業日までに入金しなければなりません。
3. 「代用有価証券」という罠
信用取引の保証金は、現金だけでなく「自分が持っている現物株」で代用することもできます。これを代用有価証券と呼びます。
しかし、ここには大きな落とし穴があります。現物株を担保にする場合、その価値は満額ではなく、通常「時価の80%(掛目)」で評価されます。
【二階建ての恐怖】
「A社の現物株を100万円分持っている。これを担保(80万円評価)にして、さらにA社の株を240万円分信用買いする」。これを専門用語で「二階建て」と呼びます。
A社の株価が暴落すると……
二階部分(信用): 猛烈な含み損が発生し、保証金(一階部分)を削る。
一階部分(担保): 担保にしている現物株の価値自体も下がるため、保証金そのものが目減りする。
この「挟み撃ち」に遭うと、維持率は一瞬で崩壊します。二階建ては、相場が少し逆風になっただけで即座に強制退場へと追い込まれる、最も危険な手法です。
4. 「空売り(信用売り)」のメカニズム
「株価が下がると儲かる」という仕組みも、信用取引特有のものです。これは証券会社から「株を借りてきて市場で売り、安くなったところで買い戻して株を返す」というプロセスです。
【空売りの計算例】
株価1,000円の時に1,000株売る(100万円分)
株価が800円に下がった。
800円で1,000株買い戻す(80万円払う)。
差額の20万円が利益。
一見、下落相場でも稼げる魔法の手法に見えますが、「理論上の損失が無限大」というリスクがあります。
買いの場合、損失の最大値は「投資額がゼロになるまで」ですが、売りの場合、株価が2,000円、3,000円と暴騰し続ければ、損失は青天井に膨らみます。特に、急激な好材料が出て「買い戻したくても買い注文が殺到して取引が成立しない(ストップ高)」状態になると、数日で元手の数倍の借金を背負う可能性があります。
5. 隠れたコスト:金利と管理費
信用取引は、単なる「売買手数料」以外にも多くのコストがかかります。これらは、長く持てば持つほど確実に利益を蝕みます。
| 項目 | 内容 | 目安 |
| 買い方金利 | 証券会社からお金を借りる利息 | 年率 2.0% 〜 3.5% 程度 |
| 貸株料 | (空売りのみ)株を借りるレンタル料 | 年率 1.1% 〜 2.0% 程度 |
| 管理費 | 建玉を1ヶ月以上維持した場合にかかる | 1株あたり数円(月額) |
| 名義書換料 | 決算期をまたいで保有した場合 | 1売買単位あたり55円 |
例えば、300万円の買い建玉を1ヶ月保有するだけで、金利(年率3%と仮定)だけで約7,500円が消えます。これは、株価がその分以上値上がりして初めてプラスになる、という厳しい「ハンデ」を背負っていることを意味します。
第2章のまとめ:数字が示す「不利な戦い」
信用取引の仕組みを紐解くと、以下の3点が明確になります。
レバレッジは諸刃の剣: 利益を3.3倍にするが、損失を補填するスピードはそれ以上に速い。
維持率の呪縛: 自分の意思に関わらず、証券会社のルールで「強制終了」させられる。
コストの壁: 持っているだけで金利が発生し、長期保有すればするほど現物取引よりも不利になる。
初心者が「なんとなく儲かりそう」と足を踏み入れるには、あまりにも計算ずくで、かつ残酷なルールが敷かれているのが信用取引の世界なのです。
・投資で収入を得たい、資産を増やしたい YES or NO
・リスクはできるだけ抑えたい YES or NO
・投資先の見極め方を知りたい YES or NO
・成功している投資家と接点が欲しい YES or NO
・物価上昇への対策には投資が必要と考えている YES or NO
第3章:初心者がハマる「負けの黄金パターン」
信用取引で破滅する人は、決して「最初から無謀なギャンブラー」だったわけではありません。むしろ、最初は慎重だった人が、「成功体験という名の毒」を飲み、段階的に感覚が麻痺していくことで地獄へと突き進みます。そのプロセスは、驚くほど共通しています。
ステップ1:成功体験による「リスク感度の麻痺」
すべての悲劇は、小さな成功から始まります。
事例: 自己資金100万円のAさん。
最初は怖々、30万円分だけ信用取引で買ってみます。たまたま相場が良く、数日で株価が5%上昇しました。
利益は1.5万円。「金利を引いても数日で1万円以上稼げた。これは現物より効率がいいぞ」と考えます。
ここでAさんの脳内では、「信用取引=資金効率を上げる魔法の杖」という認識が定着し、本来あるべき「借金である」という恐怖心が消し飛びます。
ステップ2:全力投資(フルレバ)への移行
小さな勝ちを数回繰り返すと、初心者は「もっと早く資産を増やしたい」という誘惑に勝てなくなります。
事例: Aさんは「自分の実力なら大丈夫」と、ついに「フルレバレッジ(全力買い)」に踏み切ります。
自己資金100万円を担保に、約330万円分の株を購入します。
この時、保証金維持率は約30.3%。多くの証券会社で追証ラインとなる20%〜25%まで、わずか数%の猶予しかありません。
この状態は、「時速200kmでブレーキの壊れた車を運転している」ようなものです。少しのハンドルミス(株価の数%の下落)が即、大事故(追証)に直結します。
ステップ3:想定外の急落と「お祈り投資」
市場は常に残酷です。全力で買い向かった直後に、悪材料や地合いの悪化で株価が急落します。
事例: 330万円で買った株が、翌日に7%急落しました。
含み損: 330 万円 × 0.07 = 23.1 万円
実質保証金: 100 万円 – 23.1万円 = 76.9 万円
維持率: 76.9 ÷ 330 = 23.3%
ここで多くの証券会社が設定する「維持率25%以下」に抵触し、「追証」が発生します。
本来ならここで損切りすべきですが、初心者は「今売ったら23万円の損が確定してしまう。明日になれば戻るはずだ」と、根拠のない希望に縋る「お祈り投資」に切り替わります。
ステップ4:追証回避のための「さらなる泥沼」
追証が発生すると、翌日の正午や15時までに入金しなければなりません。Aさんの手元には、もう余剰資金がありません。
ここで初心者が取る最悪の選択肢が、「他の資産を売って追証に充てる」または「生活費を投じる」ことです。
Aさんは、大切にしていた定期預金や、他の中長期用の現物株を売って50万円を工面し、証券口座に入金します。
これで一時的に維持率は回復しますが、「負けられない戦い」へと自分を追い込んでしまいます。冷静な判断力はこの時点で完全に失われています。
ステップ5:強制決済と「借金の確定」
追い打ちをかけるように、株価はさらに下がります。パニック売りが重なり、株価はさらに10%下落。
累計の下落幅: 17%
累計の含み損: 330 万円 × 0.17 = 56.1 万円
実質保証金: (100 + 50)万円 – 56.1万円 = 93.9 万円
維持率: 93.9 ÷ 330 = 28.4%
一見耐えているように見えますが、ここで証券会社による「代用有価証券の評価替え」や「特別空売り気配」などが重なると、維持率は一気に崩壊します。ついに入金が間に合わなくなり、証券会社はルールに基づき、全ポジションを「成行」で強制決済します。
最悪の価格(底値)で売らされるため、手元に残ったのは、元手の100万円と追加した50万円を大きく下回る、わずかな残金だけ。
もしこれが大暴落(ストップ安の連続)であれば、残高がマイナス(不足金)になり、証券会社から「至急、借金を返済してください」という督促状が届くことになります。
なぜ「黄金パターン」に陥るのか:3つのバイアス
生存者バイアス: SNSなどで「信用取引で1億稼いだ」という極端な成功例だけが目に入り、その裏で退場した数万人の存在を無視してしまう。
損失回避性: 人間は「得をする喜び」よりも「損をする痛み」を2倍強く感じます。そのため、損を確定させることができず、事態を悪化させます。
サンクコスト(埋没費用)の誤謬: 「これまで追証に100万円も突っ込んだのだから、今さら引けない」という心理が、さらなる損失を呼び込みます。
第3章のまとめ:初心者が辿る「死へのロードマップ」
「自分だけは特別だ」という傲慢
「レバレッジ3.3倍」という過信
「損切りできない」という弱さ
「追証入金」という執着
この4つが揃ったとき、信用取引はあなたの資産を根こそぎ奪っていきます。信用取引はやめとけと言われるのは、このパターンが「個人の意志の強さ」に関わらず、人間の脳の仕組み上、回避するのが極めて困難だからなのです。
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第4章:信用取引が持つ「4つの目に見えないコスト」
現物取引であれば、一度株を買ってしまえば、かかる費用は売買手数料のみです。しかし信用取引は、建玉(ポジション)を持っている間、「レンタル料」が発生し続けます。これが積み重なると、株価が予想通りに動いても「利益がほとんど残らない」あるいは「トータルでマイナス」という事態を招きます。
1. 買い方金利:お金を借りる「時間代」
信用買いをする際、あなたは証券会社から購入資金を借りています。この借金に対して、「買い方金利」が日割りで発生します。
具体例: 買い建玉:1,000万円
金利:年率 3.0%
保有期間:90日間(約3ヶ月)
わずか3ヶ月で、約7.4万円が金利として徴収されます。これは株価が0.74%以上上昇して、ようやく損益分岐点に立つことを意味します。デイトレードならまだしも、数ヶ月のスイングトレードをする場合、この金利がボディブローのように効いてきます。
2. 貸株料(かしかぶりょう):株のレンタル代
空売り(信用売り)をする場合は、お金ではなく「株」を借ります。この「株を借りるための手数料」が貸株料です。
買い方金利との違い: 金利は「現金」にかかりますが、貸株料は「株」にかかります。一般的に年率1.1%〜2.0%程度ですが、空売りの場合は後述する「逆日歩」という爆弾が隠れているため、この貸株料だけで済むとは限りません。
3. 逆日歩(ぎゃくひぶ):空売りの「致死量コスト」
信用取引のコストの中で、最も恐ろしく、かつ予測不可能なのがこの「逆日歩(品貸料)」です。
通常、空売りのための株は証券会社が用意しますが、空売りが殺到して株が不足すると、証券会社は外部(機関投資家など)から無理やり株を借りてきます。その際にかかる追加コストが「逆日歩」として、空売りをしている個人投資家に請求されます。
逆日歩の恐怖:
逆日歩は、株価に関係なく「1株あたり〇円」という形で決まります。
土日祝日もカウントされます。 金曜日に空売りを持ち越すと、3日分(金・土・日)の逆日歩が発生します。
事前にいくらかかるか正確に把握できません(翌営業日に判明します)。
【地獄のシミュレーション:逆日歩の直撃】
ある人気銘柄を1,000株空売りし、3連休をまたいだとします。株不足が深刻化し、1株あたり1日5円の逆日歩がつきました。
逆日歩:5円 × 1,000株 × 4日分(連休+当日)= 20,000円
株価が全く動いていなくても、たった数日で2万円の損失が確定します。
これが「最高料率」と呼ばれる異常事態になると、一晩で数十万円のコストが発生し、利益を出すどころか一撃で退場に追い込まれる「踏み上げ」の要因となります。
4. 管理費と名義書換料:地味に効く維持費
短期間の取引であれば微々たるものですが、体系的な理解には欠かせないコストです。
事務管理費:
建玉を新規に建ててから1ヶ月を経過するごとに発生します(1株あたり約0.11円、上限1,100円程度)。
名義書換料(権利処理手数料):
建玉を持ったまま「決算期(権利確定日)」をまたぐと発生します。1売買単位あたり55円程度ですが、多くの銘柄を分散して信用で持っている場合、無視できない金額になります。
番外編:税金と「配当調整金」の落とし穴
信用取引では、配当金そのものを受け取ることはできません。代わりに「配当落調整金」という仕組みがあります。
買い方: 配当金相当額を受け取れますが、これは「配当所得」ではなく「譲渡益(雑所得的な扱い)」になります。そのため、現物株の配当金のように「配当控除」が使えません。
売り方: 配当金相当額を自分のポケットから支払わなければなりません。 高配当銘柄を空売りしていると、権利確定日に配当利回り分(例えば3〜5%)がそのまま損失として強制的に差し引かれます。
第4章のまとめ:コストが投資判断を歪ませる
信用取引におけるこれらのコストは、単に「お金が減る」以上の悪影響を及ぼします。それは、「焦り」を生むことです。
「毎日金利がかかっているから、早く決済しないと」
「逆日歩が怖いから、意に反して買い戻さないと」
現物投資であれば「待つのが仕事」と言えますが、信用取引は「持っているだけで資産が溶けていく」ため、常に時間との競争を強いられます。この「焦り」こそが、投資家から冷静さを奪い、結果として「やめとけ」と言われるような無謀なトレードへと駆り立てるのです。
第5章:それでもやりたい人への「生存戦略」
信用取引を安全に使いこなすことは、プロの投資家でも至難の業です。しかし、もしあなたがこの道具を武器として使いたいのであれば、感情を一切排除し、「証券会社のシステムよりも冷徹なルール」を自分自身に課す必要があります。
生存のための戦略は、以下の4つの柱で構成されます。
1. レバレッジの「実効倍率」を1.3倍以下に封印する
制度上は3.3倍まで可能ですが、初心者がこれを使うのは「目隠しをして高速道路を走る」のと同じです。生存戦略における最大の掟は、「フルレバレッジを絶対にかけない」ことです。
戦略: 自己資金100万円に対し、建玉(取引額)を130万円程度に抑える。
メリット:
株価が10%下落しても、維持率の低下は緩やかです。
維持率の計算: (100 – 13) ÷ 130 = 66.9%。
追証ライン(25%)までには、株価が約35%以上暴落しても耐えられる計算になります。
教訓: 「余力」こそが最大の防御です。余力があれば、相場の急変時にもパニックにならず、冷静に次の戦略を練ることができます。
2. 「損切り」をシステム化する(逆指値の絶対遵守)
信用取引で退場する人の共通点は、「損切りができない」ことです。生存者は、注文を出した瞬間に「いくらになったら負けを認めるか」を確定させます。
手法: 「2%・6%ルール」の導入。
1トレードの許容損失を元本の2%に設定: 100万円の資金なら、2万円の損で撤退する。
買値から数%下がったら自動で売る「逆指値注文」: パソコンやスマホを閉じていても、システムが勝手に損を確定させるようにします。
例: 1,000円で信用買いをした際、同時に「960円になったら成行で売る」という逆指値を出しておく。
生存の理屈: 信用取引は「一度の大きな負け」が致命傷になります。小さな負けを何度も受け入れ、致命傷を避けることだけが、次のチャンスに繋がります。
3. 「二階建て」と「ナンピン」の厳禁
この2つは、信用取引における「禁忌(タブー)」です。生存したいなら、以下の行為は脳から消去してください。
二階建て禁止: 第2章でも触れましたが、持っている現物株と同じ銘柄を信用で買う行為です。これはリスクが掛け算で膨らみます。
信用ナンピン禁止: 株価が下がった時に、平均取得単価を下げるためにさらに信用で買い増す行為です。
現物なら「いつか戻る」を待てますが、信用ナンピンは「維持率を急速に悪化させ、追証へのカウントダウンを早める」だけの自殺行為です。
鉄則: 「下がったら買う」のではなく「下がったら切る」のが信用の鉄則です。
4. 資金管理の「黄金比」を守る
信用取引口座に入れるお金は、あなたの全財産の「失っても生活に支障がない範囲」に限定してください。
具体例:
全財産が500万円あるなら、信用口座に入れるのは100万円まで。
残りの400万円は銀行預金や、インデックス投資などの「堅実な資産」として隔離する。
なぜ隔離が必要か: 信用口座の資金が底を突いたとき、手元に「別の財布」があれば、生活を守れます。人間は「これが全財産だ」と思うと、パニックで正常な判断ができなくなります。「最悪、この100万円がゼロになっても明日からまた笑って仕事に行ける」という精神状態を保つことが、結果として良いトレードを生みます。
5. 「時間コスト」を意識した短期決戦
第4章で解説した通り、信用取引は持っているだけでコストが発生します。
生存者の時間軸: 信用取引は「数日〜長くても2週間」の短期決戦用と割り切ります。
「配当狙い」や「優待狙い」で使わない: これらの目的であれば、現物取引の方が圧倒的に低コストで安全です。
出口戦略の明確化: 「〇〇円になるか、あるいは3日経過したら、利益が出ていてもいなくても決済する」という時間軸でのルールを持っています。
第5章のまとめ:信用取引は「手段」であり「目的」ではない
生存戦略の核心は、「信用取引を特別な魔法だと思わないこと」にあります。
多くの初心者は、信用取引を「お金を増やす近道」だと勘違いします。しかし、生き残るプロたちは、信用取引を「一時的な相場の歪みを取りに行くための、リスクの高い精密機械」として扱います。
現物取引: 資産を「育てる」場所
信用取引: 徹底した管理のもとで「リスクを限定的に取る」場所
もし、あなたが上記の「レバレッジ制限」「逆指値の徹底」「二階建て禁止」というルールを、一度たりとも破らずに実行できる自信がないのであれば、やはり「信用取引はやめとけ」という言葉を、自分への最高の守り言葉として受け入れてください。
マーケットは明日も明後日も開いています。最大の勝利とは、1年後に大儲けしていることではなく、10年後もマーケットに居続けていることなのです。
結論:なぜ「やめとけ」と言い続けるのか
信用取引は、例えるなら「プロがひしめくF1レースに、免許取り立ての初心者がブレーキの壊れやすい車で参戦する」ようなものです。
相場は時に、合理的な判断を無視して動きます。その「万が一」が起きた時、現物投資なら「塩漬けにして数年待つ」という選択ができますが、信用取引には「時間切れ(期限)」と「追証」があります。待つことが許されないのです。
「生き残ること」が投資の最大の目的です。
まずは現物取引で、自分のリスク許容度と市場の呼吸を学ぶことから始めてください。信用取引に手を出すのは、10年生き残ってからでも遅くありません。
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