
朝、クローゼットを開ける。手に取ったのは、数年前に買ったユニクロのダウンジャケットだ。流行のデザインというわけではない。でも軽くて暖かく、まだ十分に着られる。気づけば何年も冬になると袖を通している。
最近、ニュースで「ESPR(エコデザイン規則)」という言葉を目にした。ヨーロッパが進める新しい環境ルールで、製品は長く使えること、修理できること、そしてリサイクルできることまで考えて設計する必要があるという。
その話を聞いたとき、ふと思った。
自分が何気なく着ているこの服も、実は“長く使えるように設計された服”なのではないだろうか、と。
ESPRの時代、服はただ流行を追うだけの存在ではなくなる。ユニクロのようなブランドが作る「生活の服」は、これからのサステナブル社会においてどんな意味を持つのだろうか。
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ESPRとユニクロ ― サステナブル時代に問われる「服の設計思想」
2024年、EUは新たな環境規制として「エコデザイン規則(ESPR:Ecodesign for Sustainable Products Regulation)」を打ち出した。これは従来の家電製品などに限られていたエコデザインの考え方を、衣料品を含むほぼすべての製品に拡大するという野心的な政策だ。単に「環境に優しい素材を使う」という話ではない。製品の設計段階から耐久性、修理可能性、リサイクル性、そしてトレーサビリティまでを求める、いわば“製品の一生”を規制するルールである。
このESPRの議論において、ファッション産業は特に注目されている分野の一つだ。衣料品は世界で年間1,000億点以上が生産されると言われ、廃棄問題や資源消費の大きさが長年指摘されてきた。いわゆる「ファストファッション」はトレンドの移り変わりを加速させる一方で、短い使用期間と大量廃棄を生み出す構造でもある。EUはこの構造を変えるため、デジタルプロダクトパスポート(DPP)などを通じて、衣服の素材・製造過程・環境負荷を透明化しようとしている。
この流れの中で興味深い存在が、日本発のアパレルブランド、ユニクロである。ユニクロは一般的にファストファッションの一角と見られがちだが、そのビジネスモデルは実はやや異なる。流行を追うよりも、「定番商品を長く売る」戦略を重視しているからだ。ヒートテックやエアリズム、ウルトラライトダウンといった商品は毎年改良されながらも基本的なデザインは大きく変わらない。これはESPRが求める「長く使える製品設計」と相性が良い。
さらにユニクロは近年、「LifeWear」というコンセプトを掲げている。これは流行消費型ではなく、生活に長く寄り添う服という思想だ。たとえば耐久性の高い素材の採用や、シンプルで飽きのこないデザインは、結果的に衣服の使用期間を延ばす。ESPRが重視する「製品寿命の延長」という観点から見ると、この方向性は規制時代に適応した戦略とも言えるだろう。
また、ユニクロはリサイクルや回収の取り組みも進めている。店舗での衣料回収プログラムでは、着なくなった服を世界の難民支援に活用したり、リサイクル素材として再利用する試みが行われている。ESPRでは今後、製品のリサイクル性や再資源化の仕組みがより厳しく問われる可能性が高く、こうした循環型の取り組みは重要性を増すと考えられる。

一方で課題もある。ESPRではサプライチェーンの透明性が重要なテーマとなる。衣料品は原料の綿花から紡績、染色、縫製まで複雑な国際分業で作られている。ユニクロも例外ではなく、世界各地の工場で生産が行われている。将来的にデジタルプロダクトパスポートが義務化されれば、素材や環境負荷の詳細データを消費者に提示する必要が出てくる。これは企業にとって大きなデータ管理の課題となるだろう。
しかし見方を変えれば、ESPRは単なる規制ではなく、ブランド価値を高める機会にもなり得る。環境配慮が消費者の購買判断に影響する時代において、透明性と持続可能性を示すことは競争力そのものになるからだ。ユニクロのように品質・機能・価格のバランスを強みとする企業にとって、サステナビリティを組み込んだ製品設計は新たな差別化要因になる可能性がある。
ESPRが示しているのは、「安く作って売る」時代から「長く使えるように設計する」時代への転換だ。ファッションはこれまで流行のビジネスだった。しかしこれからは、デザインだけでなく“設計思想”そのものが問われる産業になるのかもしれない。ユニクロのLifeWearという理念は、まさにその転換点を象徴する存在と言えるだろう。
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