
地方銀行・時価総額トップ10を徹底解説――地域金融を支える有力10行の現在地
地方銀行は、地域の企業や個人に資金を供給し、地域経済を支える重要な金融インフラである。近年は、日銀の金融政策や金利環境の変化に加え、人口減少、事業承継、DX、地域企業の成長支援など、地銀を取り巻く経営環境が大きく変わっている。一方で、経営統合や再編を進めることで経営基盤を強化し、収益力や株主還元を高めてきた銀行も多い。
今回は、上場する地方銀行・地方銀行系金融グループを対象に、2026年8月下旬時点の時価総額を目安として上位10社を取り上げる。銀行業全体の時価総額ランキングでは、横浜フィナンシャルグループ、千葉銀行、しずおかフィナンシャルグループなどが上位に位置している。
なお、八十二長野銀行は2026年1月1日に八十二銀行と長野銀行が合併して発足した銀行である。金融庁も2025年12月に合併を認可しており、今回のランキングでは現在の「八十二長野銀行」として扱う。
| 順位 | 企業名 | 証券コード | 主な地盤 | 時価総額 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 横浜フィナンシャルグループ | 7186 | 神奈川県 | 約2.15兆円 |
| 2 | 千葉銀行 | 8331 | 千葉県 | 約2.14兆円 |
| 3 | めぶきフィナンシャルグループ | 7167 | 茨城県・栃木県 | 約1.56兆円 |
| 4 | 京都フィナンシャルグループ | 5844 | 京都府 | 約1.46兆円 |
| 5 | ふくおかフィナンシャルグループ | 8354 | 福岡県など | 約1.45兆円 |
| 6 | 八十二長野銀行 | 8359 | 長野県 | 約1.27兆円 |
| 7 | 群馬銀行 | 8334 | 群馬県 | 約1.07兆円 |
| 8 | ほくほくフィナンシャルグループ | 8377 | 北海道・北陸 | 約9,827億円 |
| 9 | 七十七銀行 | 8341 | 宮城県・東北 | 約8,592億円 |
| 10 | 山口フィナンシャルグループ | 8418 | 山口県・広島県など | 約7,292億円 |
横浜フィナンシャルグループ――首都圏を代表する大型地銀グループ
横浜フィナンシャルグループは、神奈川県を主要な営業基盤とする大型の地方銀行系金融グループである。証券コードは7186。時価総額は2026年8月下旬時点で約2.1兆円と、地方銀行系ではトップクラスの規模となっている。銀行業全体のランキングでも2兆円を超える水準にあり、千葉銀行と並んで地方銀行株を代表する存在だ。
中核となる横浜銀行は、神奈川県を中心に強固な顧客基盤を築いている。神奈川県は横浜市、川崎市などの大都市を抱え、人口規模も大きい。東京都心との経済的な結び付きも強く、製造業、IT、サービス業、不動産など幅広い産業が集積していることが特徴だ。地方銀行といっても、一般的な地方都市型の銀行とは異なり、大都市圏ならではの事業機会を持っている。
横浜銀行にとって重要なのは、地域企業との取引を単なる融資にとどめないことである。企業の事業承継、M&A、経営改善、資産運用、法人向けコンサルティングなど、金融以外のサービスを組み合わせることで、顧客との関係を深めることができる。金利環境が変化する局面では、貸出金利と預金金利の差である利ざやの改善も収益に影響する。
また、神奈川県は住宅市場や不動産関連ビジネスも大きく、個人向け住宅ローンや資産形成サービスにも商機がある。NISAなどを通じた個人の資産形成需要が高まれば、銀行にとって預金だけでなく投資商品を含む金融サービスの拡大余地も広がる。
一方で、大都市圏の金融市場は競争も激しい。メガバンク、ネット銀行、証券会社、フィンテック企業などが顧客を奪い合う環境にあり、従来型の店舗中心の銀行経営だけでは成長を続けることが難しい。そこで重要になるのがデジタル化である。
横浜フィナンシャルグループの魅力は、巨大な地域経済圏を背景に持ちながら、地方銀行として地域企業との距離が近い点にある。今後は、金利正常化による銀行収益の改善に加え、地域企業の成長支援や資産運用など、非金利分野をどこまで伸ばせるかが評価ポイントとなる。地方銀行の大型化・高収益化を象徴する銘柄として、今後も市場から注目されそうだ。
千葉銀行――首都圏の成長力を取り込む有力地銀
千葉銀行は、千葉県を代表する地方銀行である。証券コードは8331。2026年8月下旬の時価総額は約2.1兆円で、横浜フィナンシャルグループと並ぶ地方銀行最大級の銘柄となっている。銀行業全体でも上位に位置しており、地銀の中でも特に市場から高い評価を受けている銀行の一つである。
千葉銀行の大きな強みは、千葉県そのものの経済成長力だ。東京に近い千葉県は、住宅地として発展しているだけでなく、成田空港、湾岸エリア、物流施設、商業施設、製造業など、多様な産業を抱えている。東京都心への通勤圏としての住宅需要も大きく、個人向け金融サービスの市場も厚い。
特に注目したいのが、千葉県の人口集積と企業集積である。地方銀行は一般的に人口減少が収益基盤へのリスクとなるが、首都圏に位置する千葉銀行は、地方銀行の中では比較的恵まれた市場環境を持つ。もちろん千葉県でも少子高齢化は進むため、長期的には地域経済の構造変化への対応が欠かせない。
銀行にとって金利環境も大きなテーマとなる。長期間続いた低金利環境では貸出金利が低下し、銀行の利ざやが圧迫されてきた。しかし、金利が上昇する局面では、貸出金利の改善を通じて銀行の本業収益が回復する可能性がある。地銀株が市場から注目される背景には、こうした収益環境の変化もある。
千葉銀行は、地域企業の資金調達や経営支援だけでなく、個人向け資産形成などにも取り組む必要がある。預金を集めるだけではなく、投資信託、保険、住宅ローン、相続関連など、顧客のライフステージに応じた金融サービスを提供することが重要になる。
また、千葉県は成田空港を抱えることから、インバウンドや物流、航空関連産業などとの結び付きも強い。空港周辺の再開発や物流拠点の整備などが進めば、法人融資やプロジェクトファイナンスなどの需要につながる可能性もある。
千葉銀行は、巨大な地域経済圏と首都圏の成長力を背景に、地銀の中でも比較的高い成長余地を持つ銀行といえる。横浜FGと並ぶ時価総額を持つことは、投資家から見てもその事業基盤が高く評価されていることの表れだろう。
しずおかフィナンシャルグループ――製造業集積地を支える金融グループ
しずおかフィナンシャルグループは、静岡県を主要な営業エリアとする金融グループである。証券コードは5831。2026年8月下旬時点の時価総額は約2兆円に迫り、地方銀行系では上位3社に入る規模となっている。
静岡県は、製造業の集積地として知られている。自動車、輸送機器、機械、楽器、食品など、さまざまな産業が県内に展開しており、地域金融機関にとって法人金融の重要な市場となっている。こうした産業基盤は、しずおかフィナンシャルグループにとって大きな強みである。
地方銀行のビジネスモデルでは、地域企業への融資が重要な収益源となる。静岡県の場合、中小企業だけでなく比較的大規模な製造業も多いため、設備投資、海外展開、事業承継、M&Aなど、企業の成長段階に応じた金融需要が存在する。
特に製造業では、脱炭素化やサプライチェーン再構築への対応が迫られている。電動化や省エネ設備への投資、再生可能エネルギーの導入など、企業が必要とする資金は今後も変化していく。地域金融機関にとって、単純な融資だけでなく、経営課題そのものを解決するコンサルティング機能が重要になっている。
個人向けでは、住宅ローンや資産形成、相続などが重要だ。静岡県は東京と名古屋の中間に位置し、東海道新幹線や高速道路などの交通網も充実している。地域経済の広域化が進む中、静岡県内だけに閉じない金融ネットワークを構築できるかもポイントになる。
また、銀行を取り巻く金利環境の変化は追い風となる可能性がある。預金金利と貸出金利の双方が上昇する中で、適切な資産・負債管理を行えば、銀行本来の収益力を高める余地がある。
一方、人口減少や地域企業数の減少は長期的な課題だ。そのため、静岡県内の既存顧客を深掘りするだけでなく、首都圏など県外への事業展開、資産運用、M&A支援などによって収益源を多様化することが重要になる。
しずおかフィナンシャルグループは、製造業を中心とした強固な地域経済を背景に持つ大型地銀グループである。時価総額の大きさだけでなく、地域企業との関係性や金利環境の変化を踏まえると、地方銀行株を見るうえで外せない存在といえる。
めぶきフィナンシャルグループ――北関東の広域金融ネットワーク
めぶきフィナンシャルグループは、茨城県を地盤とする常陽銀行と栃木県を中心とする足利銀行を傘下に持つ金融グループである。証券コードは7167。2026年8月下旬の時価総額は約1.55兆円で、地方銀行系の中でもトップクラスの規模だ。
めぶきFGの特徴は、複数の県にまたがる広域的な営業基盤を持っていることにある。茨城県と栃木県はいずれも首都圏に近く、製造業や物流、農業、観光など多様な産業が存在する。東京へのアクセスが比較的良好であるため、企業の設備投資や物流拠点開発などの金融需要も期待できる。
地方銀行の再編が進んだ背景には、人口減少や低金利によって単独での成長が難しくなったことがある。経営統合によって店舗やシステムなどの重複コストを削減し、規模のメリットを生かすことができれば、収益性を高められる。
めぶきFGにとっても、単純なコスト削減だけでなく、両行の顧客基盤を活用したビジネス拡大が重要になる。例えば、茨城県の企業と栃木県の企業を結び付けることで、販路拡大や取引先紹介につなげられる。さらに、首都圏とのネットワークを活用すれば、地域企業の東京進出や資金調達を支援することもできる。
地域企業にとって事業承継も大きなテーマだ。経営者の高齢化が進む中、後継者不足に悩む企業は少なくない。銀行が持つ企業情報や地域ネットワークを活用すれば、M&Aや第三者承継の支援につなげることができる。
個人向けでは住宅ローンや預金、資産形成などが中心となる。金利が上昇すれば預金者の金利への関心が高まり、銀行側には預金獲得競争という新たな課題も生じる。貸出金利だけでなく、預金コストまで含めた総合的な収益管理が重要になる。
めぶきFGは、地銀再編の成果を評価するうえでも注目される銘柄だ。北関東という地域経済圏を一体的に捉え、地域企業への金融支援と効率的な経営を両立できるかが、今後の企業価値を左右するだろう。
京都フィナンシャルグループ――伝統産業と先端企業を支える京都の金融力
京都フィナンシャルグループは、京都銀行を中核とする金融グループである。証券コードは5844。時価総額は2026年8月下旬時点で約1.46兆円となっている。
京都といえば寺社仏閣や観光都市というイメージが強いが、経済面では伝統産業だけでなく、電子部品、機械、精密機器、ITなどの企業が集積する地域でもある。世界的に知られる企業も多く、地域金融機関にとって魅力的な法人顧客基盤を持つ。
京都フィナンシャルグループの強みは、こうした多様な企業との長期的な関係にある。地域企業の設備投資、研究開発、海外展開などを金融面から支援することで、地域経済の成長を取り込むことができる。
また、京都は観光産業の存在感も大きい。訪日外国人旅行者が増えれば、ホテル、飲食、小売、交通など幅広い業種に資金需要が生まれる。インバウンド需要を地域経済の成長につなげるうえで、銀行の果たす役割は大きい。
一方、観光業は景気や為替、国際情勢などの影響を受けやすい。特定産業への依存を避けながら、地域企業の経営改善や事業承継を支援することが重要になる。
京都には大学や研究機関も多く、スタートアップ育成の可能性もある。銀行がベンチャー企業や新規事業を支援できれば、将来の成長企業との関係を早期に構築できる。従来型の預貸業務から、投資やコンサルティングを含む総合金融サービスへと役割を広げることが期待される。
また、金利上昇局面では銀行本来の収益力が改善する可能性がある。京都フィナンシャルグループは、地域経済のブランド力と企業集積を背景に、地方銀行の中でも独自のポジションを築いている。
今後は、京都の観光と製造業、伝統産業とスタートアップという幅広い経済基盤をどのように金融サービスへ結び付けるかが注目される。
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ふくおかフィナンシャルグループ――九州最大級の金融経済圏を形成
ふくおかフィナンシャルグループは、福岡銀行、熊本銀行、十八親和銀行などを傘下に持つ九州を代表する金融グループである。証券コードは8354。2026年8月下旬の時価総額は約1.44兆円で、地方銀行系では上位に位置する。
最大の特徴は、福岡県だけでなく九州各地に広がる営業基盤だ。九州では福岡市を中心に人口や企業が集まり、半導体関連をはじめとした産業投資も活発化している。熊本県では半導体関連の大型投資が地域経済に大きな変化をもたらしており、九州全体で金融需要が拡大する可能性がある。
銀行にとって、企業の工場建設や設備投資は大きな融資需要につながる。さらに、サプライヤーとなる中小企業にも設備投資資金が必要になるため、一つの大型プロジェクトが地域金融全体に波及する可能性がある。
福岡市自体も、スタートアップ都市としての成長を目指している。IT企業や新興企業が集まれば、従来の地場企業中心の金融モデルとは異なる顧客層を獲得できる。創業支援、ベンチャー投資、M&Aなどを通じて、新しい収益機会を開拓できる点は重要だ。
また、九州は観光資源にも恵まれている。訪日外国人旅行者の増加は、ホテル、飲食、小売、交通など幅広い産業を刺激する。金融機関には、設備投資や事業拡大を資金面から支援する役割が求められる。
一方で、九州の地域ごとに経済構造が異なることは課題でもある。大都市圏と地方部では人口動態や企業数に差があり、地域ごとに異なる金融戦略が必要だ。
ふくおかFGの強みは、こうした九州各地の経済を一つの金融ネットワークとして捉えられることにある。今後は半導体、観光、スタートアップなど成長分野を取り込みながら、九州の地域経済そのものの成長を金融収益につなげられるかがポイントとなる。
八十二長野銀行――合併で誕生した新たな長野県の地域金融中核
八十二長野銀行は、2026年1月1日に八十二銀行と長野銀行が合併して発足した銀行である。金融庁は2025年12月25日に合併を認可しており、現在の商号は「八十二長野銀行」となっている。
2026年8月下旬の時価総額は約1.29兆円とされ、地方銀行系の中でも上位に位置する。
長野県は、精密機械、電子部品、機械などの製造業が盛んな地域である。また、山岳観光やスキー、温泉など観光産業も重要な役割を担っている。こうした多様な地域経済を金融面から支えることが、八十二長野銀行の大きな役割となる。
今回の合併の最大のポイントは、経営基盤の強化だ。人口減少や低金利、金融DXへの対応など、地方銀行単独で負担するには大きなコストが必要となる分野は多い。合併によって経営資源を集約できれば、システム投資や人材投資を効率化できる。
また、地域企業の事業承継支援にも期待がかかる。長野県には多くの中小企業が存在する一方、後継者問題は重要な課題となっている。銀行がM&Aや事業承継を支援することで、企業の存続だけでなく地域雇用の維持にもつながる。
長野県は首都圏や中京圏にも比較的アクセスしやすい。地域企業が県外へ販路を広げる際に、金融機関がビジネスマッチングや資金調達を支援する余地も大きい。
一方、合併後にはシステム統合や組織文化の融合など、さまざまな課題も生じる。合併によるコスト削減を実現しながら、顧客サービスの質を維持することが重要になる。
八十二長野銀行は、地銀再編の一つの象徴だ。今後、合併によってどれだけ収益力と競争力を高められるかは、他の地方銀行にも影響を与える可能性がある。
いよぎんホールディングス――四国経済を支える大型地銀グループ
いよぎんホールディングスは、愛媛県を主要地盤とする金融グループである。証券コードは5830。2026年8月下旬の時価総額は約1.20兆円となっており、地方銀行系の中でも1兆円を超える大型銘柄だ。
中核となる伊予銀行は、愛媛県を中心に四国で長い歴史を持つ。四国では人口減少が大きな課題となっている一方、造船、化学、紙・パルプ、農林水産業、観光など特色ある産業が存在する。
地方銀行にとって、こうした地域産業の成長を金融面から支えることは重要だ。設備投資資金や運転資金の提供だけでなく、企業の海外進出、M&A、事業承継などを支援することで、地域経済の競争力を高めることができる。
特に四国は、企業の商圏が県境を越えるケースも多い。四国各県や中国地方、さらに首都圏・関西圏とのネットワークを強化することで、地域企業の販路開拓を支援することが可能になる。
また、愛媛県は観光資源にも恵まれている。道後温泉、しまなみ海道などは国内外から観光客を呼び込む地域資源だ。観光客の増加は宿泊施設、飲食店、小売業、交通事業者などへの投資需要につながる。
一方、人口減少は無視できない課題である。銀行にとって顧客数の減少は、預金や融資、手数料収入の減少につながる可能性がある。そのため、人口が減少しても一人当たりの金融サービス収益を高める戦略が重要になる。
資産形成支援もその一つだ。預金だけでなく投資信託や保険などを組み合わせ、顧客の資産形成を支援できれば、銀行にとっても安定した手数料収入につながる。
いよぎんHDは、四国という地域経済圏を背景にしながら、従来の銀行業務を超えた総合金融サービスを目指すことが重要になる。1兆円を超える時価総額は、地方銀行としての規模と市場からの評価の高さを示している。
群馬銀行――北関東の企業ネットワークを強みに成長
群馬銀行は、群馬県を代表する地方銀行である。証券コードは8334。2026年8月下旬の時価総額は約1.07兆円で、地方銀行系では1兆円を超える規模となっている。
群馬県は自動車関連をはじめとする製造業が盛んな地域である。また、食品、機械、物流など幅広い産業が存在する。群馬銀行にとって、こうした企業集積は法人金融の強力な基盤となる。
企業が工場を新設したり設備を更新したりする際には、多額の資金が必要になる。銀行にとって設備投資融資は重要な収益機会であり、地域企業との長期的な関係構築にもつながる。
群馬県は首都圏北部に位置するため、東京都心や埼玉県との経済的な結び付きも強い。物流拠点の整備や企業の移転などが進めば、新たな金融需要が発生する可能性がある。
一方で、群馬県も人口減少と高齢化という課題を抱えている。地方銀行にとって人口減少は、個人向け融資や預金の伸びを抑える要因となる。そのため、地域企業の生産性向上や事業承継を金融面から支援し、地域経済そのものを活性化することが重要だ。
事業承継では、M&Aの仲介や後継者探しなど、銀行が持つ企業ネットワークを生かせる。地域企業同士をつなぐことで、企業の存続と雇用の維持につながる可能性がある。
個人向けでは、住宅ローン、資産形成、相続などが主要なテーマとなる。高齢化が進めば相続関連の金融ニーズが増えるため、資産管理や承継支援などのサービスには成長余地がある。
また、金利環境が変化する中で、銀行の収益構造そのものが変わろうとしている。貸出金利の上昇による利ざや改善が期待される一方、預金金利の引き上げによる資金調達コストの増加も意識する必要がある。
群馬銀行は、北関東の製造業集積と首都圏への近さを強みに持つ地銀である。地域企業支援と収益性向上を両立できれば、今後も大型地銀の一角として存在感を高められるだろう。
ほくほくフィナンシャルグループ――北海道と北陸をつなぐ広域地銀
ほくほくフィナンシャルグループは、北海道銀行と北陸銀行を傘下に持つ金融グループである。証券コードは8377。2026年8月下旬の時価総額は約9,700億円で、今回取り上げる地方銀行系企業の中では10番目前後に位置する大型銘柄だ。
最大の特徴は、北海道と北陸という異なる地域に営業基盤を持っていることだ。両地域にはそれぞれ特色ある産業があり、地域企業への金融支援だけでなく、地域間のビジネスマッチングにも可能性がある。
北海道では、農業、食品、観光、物流、エネルギーなどが主要産業となる。特に食料生産基地としての北海道には、農業法人や食品関連企業など幅広い金融ニーズが存在する。観光産業の成長もホテルや商業施設などへの投資需要を生む。
北陸では、製造業や機械、電子部品などが地域経済を支えている。地域企業の設備投資や技術開発を金融面から支援することで、地域産業の競争力向上に貢献できる。
また、北海道と北陸はいずれも人口減少への対応が重要な課題となっている。地方銀行にとっては、顧客基盤が縮小する中で収益性を維持する必要がある。そのため、店舗網の効率化やデジタルサービスの拡充が不可欠だ。
さらに、地域企業の事業承継も大きなテーマとなる。後継者不足を抱える企業に対して、M&Aや事業承継の支援を提供することで、銀行自身の手数料収入を増やすだけでなく、地域経済の維持にもつながる。
金利環境の変化も重要だ。銀行の本業である預貸ビジネスが改善する可能性がある一方、預金獲得競争が激しくなる可能性もある。
ほくほくFGは、広域的な営業基盤を持つことで、単一県に依存する地銀とは異なる強みを持つ。北海道と北陸、それぞれの地域経済の成長分野を取り込みながら、広域ネットワークを生かした金融サービスを展開できるかが今後の焦点となる。
地方銀行トップ10から見える「地銀再評価」の流れ
今回のランキングを見ると、地方銀行の中でも時価総額1兆円を超える企業が複数存在することが分かる。特に横浜フィナンシャルグループ、千葉銀行、しずおかフィナンシャルグループは2兆円前後の規模に達しており、もはや「地域だけの小規模銀行」というイメージでは捉えきれない存在となっている。2026年8月下旬の銀行業時価総額ランキングでも、この3社が地方銀行系の上位を形成している。
背景の一つにあるのが、金利環境の変化だ。長期間の低金利によって銀行の利ざやは圧迫されてきたが、金利が正常化する局面では、貸出金利の改善によって本業収益が拡大する可能性がある。そのため、地銀株は金利上昇メリットを受ける銘柄として注目されやすい。
もう一つのテーマが再編である。めぶきFGやほくほくFGのような経営統合型の金融グループに加え、八十二長野銀行のように実際の銀行合併によって規模を拡大するケースもある。八十二銀行と長野銀行は2026年1月1日に合併し、八十二長野銀行として新たなスタートを切った。
今後の地銀を考えるうえでは、単純な貸出残高だけを見るのではなく、地域企業の成長支援、M&A、事業承継、資産運用、DXなど、どれだけ収益源を多様化できるかが重要になるだろう。
一方で、人口減少や地域経済の縮小という構造問題は残っている。時価総額が大きい地銀であっても、地域の人口や企業数が減少すれば従来型の銀行ビジネスには限界が生じる。だからこそ、地域企業の生産性向上や新産業の育成を支援し、「地域経済を成長させること」が銀行自身の成長につながるビジネスモデルを構築できるかが重要になる。
地方銀行株は、単なる「金利上昇メリット株」から、地域再生、企業再編、資産形成、DX、産業政策などを映す地域経済株へと位置付けが変わりつつある。今回のトップ10は、それぞれ異なる地域特性を持っており、各社の成長戦略を比較することで、日本の地域経済の現在地も見えてくる。投資対象として見る場合には、時価総額だけでなく、PBR、ROE、配当利回り、貸出金の伸び、不良債権、政策保有株式、株主還元方針なども合わせて確認することが重要である。




