
「推し活」から企業販促まで、拡大するオリジナルグッズ市場
Tシャツやトートバッグ、アクリルスタンド、缶バッジ、スマートフォンケースなど、自分だけのデザインを商品にできる「オリジナルグッズ」の需要が広がっている。かつては企業のノベルティやイベントの記念品などが中心だったが、現在はアイドルやアーティスト、VTuber、アニメ、ゲーム、スポーツ、個人クリエイターなど、幅広い分野で活用されている。特に「推し活」の定着やSNSの普及によって、グッズそのものがファンとコンテンツをつなぐ重要なアイテムになっている。
市場の変化を後押ししているのが、ECとオンデマンド生産の普及だ。以前は一定数の商品をまとめて発注する必要があったが、現在は1個からオリジナル商品を作り、注文を受けてから生産するサービスも増えている。これにより、個人クリエイターや小規模な事業者でも在庫リスクを抑えながらグッズ販売に参入しやすくなった。
こうした市場を支える上場企業にも注目したい。イメージ・マジックはオリジナルプリントECとオンデマンド生産の仕組みを展開し、トランザクションは企画・製造からEC、物流まで幅広くカバーする。GMOペパボは「SUZURI」を通じて、クリエイターが自らの作品をグッズ化して販売できる環境を提供している。それぞれ事業モデルは異なるものの、「作りたいものを必要な分だけ作り、インターネットを通じて届ける」という市場の変化を捉えている点は共通している。
オリジナルグッズは単なる物販ではなく、ファンビジネス、クリエイターエコノミー、EC、デジタル製造など複数の市場が交差する分野へと変化している。今回は、その需要がどこから生まれ、どのような企業がその仕組みを支えているのかを見ていく。
| 企業名 | 証券コード | 市場 | 主なサービス | オリジナルグッズの特徴 |
|---|---|---|---|---|
| GMOペパボ | 3633 | 東証スタンダード | SUZURI | Tシャツ、トート、スマホケース、マグカップなどを画像アップロードで作成・販売 |
| イメージ・マジック | 7793 | 東証グロース | オリジナルプリント.jp | Tシャツ、バッグ、マグカップ、スマホケースなど幅広い商品を1点から制作 |
| トランザクション | 7818 | 東証プライム | オリジナルグッズドットコム、オリジナルグッズプレス | ノベルティ、物販、コンサート・推し活グッズ、OEMなどに対応 |
オリジナルグッズはどこで売れる?「推し活」「イベント」「企業販促」へ広がる現在地
オリジナルグッズというと、かつては企業のノベルティやライブ会場で販売されるTシャツ、タオルなどをイメージする人が多かったかもしれません。しかし現在は、アイドルやアーティスト、VTuber、アニメ、ゲーム、スポーツ、地域イベント、企業のキャンペーンなど、さまざまな場面で需要が生まれています。特に2026年現在は「推し活」とECの普及がオリジナルグッズ市場を押し上げる大きな要素になっています。
その背景にあるのが、消費者の「好きなものを所有したい」「応援していることを形にしたい」という需要です。2026年に実施された調査では、EC利用者の45.0%に「応援したい対象・推し」が存在し、そのうち80.0%が実際に支出しているとされています。さらに、推し・応援対象への支出では「グッズ・関連商品」が60.6%で最も多く、CD・DVDやライブを上回りました。つまり、オンラインで商品を購入する人にとって、グッズは推しを応援する代表的な消費になっています。
特に分かりやすいのがアイドルやアーティストです。ライブ会場ではTシャツ、タオル、ペンライト、アクリルスタンド、缶バッジ、キーホルダーなどが販売され、ライブそのものだけでなく「グッズを買う」「集める」「写真を撮る」ことまで含めてファン活動になっています。国内ライブ・エンタテインメント市場は2025年に8,564億円となり、3年連続で過去最高を更新しました。動員数も9,223万人に達しており、ライブ市場の拡大は関連する物販・グッズ需要を考えるうえでも重要な材料です。
しかも、グッズ需要はアイドルだけに限定されません。2026年の調査では、現在推し活をしているジャンルとして「漫画・アニメキャラクター」が15.2%で最多となり、女性10代では38.3%がアイドルを推しているという結果が出ています。また、企業コラボ商品の購入経験はVTuberで62.1%、アイドルで59.3%、ゲームキャラクターで59.2%、漫画・アニメキャラクターで58.9%に達しました。購入後には商品をコレクションしたり、SNSに写真を投稿したりする行動も目立ちます。
ここから見えてくるのが、オリジナルグッズの「所有する商品」から「体験を共有する商品」への変化です。例えばアクリルスタンドを購入して自宅に飾るだけでなく、カフェや旅行先に持ち出して写真を撮り、SNSに投稿する。ぬいぐるみ用の衣装やポーチを用意して、推しと一緒に出掛ける。2026年上半期のオリジナルグッズに関する動向でも、ぬいぐるみを連れて出掛けたり写真を撮ったりする「ぬい活」が定番化していることが紹介されています。(トランス)
一方、オリジナルグッズの需要は「ファンビジネス」だけではありません。企業にとっても、販促キャンペーン、展示会、周年記念、採用活動、店舗イベントなどで活用できます。ロゴ入りのTシャツやバッグ、ステッカー、ボトル、文房具などは、商品そのものを販売するだけでなく、企業やブランドを知ってもらうための広告媒体にもなります。特にSNSとの相性が良く、購入者やイベント参加者がグッズの写真を投稿すれば、企業側が広告費を直接負担しなくても情報が広がる可能性があります。
さらに現在は、グッズを「大量に作って在庫を抱える」という従来型のビジネスモデルだけではありません。画像をアップロードして商品をデザインし、注文を受けてから生産するオンデマンド型のサービスも普及しています。これによって、個人のクリエイターや小規模な事業者でも、Tシャツやトートバッグ、スマホケース、マグカップなどを商品化しやすくなりました。オリジナルグッズを販売するための初期投資や在庫リスクが低下したことは、市場の裾野を広げる要因になっています。
この変化は、上場企業の事業にも表れています。GMOペパボの「SUZURI」のように、クリエイターがデザインした商品を製造・販売できるプラットフォームがある一方、イメージ・マジックの「オリジナルプリント.jp」のように、Tシャツやバッグなどを1点から注文できるサービスもあります。また、トランザクションでは「オリジナルグッズドットコム」や「オリジナルグッズプレス」などを展開し、企業・イベント・エンタメ向けのグッズ制作に対応しています。
特に注目したいのは「小ロット化」です。オリジナルグッズプレスでは、アクリルスタンド、缶バッジ、ペンライト、うちわなど、推し活に関連する商品を幅広く扱っています。同サービスでは30個からの小ロットにも対応しており、アイドルやVTuber、舞台などのイベント向けグッズにも活用されています。
これは、ファンビジネスの変化とも関係しています。以前は人気アーティストなど、一度に大量の商品を製造できるコンテンツがグッズ市場の中心になりやすい構造でした。しかし現在は、SNSや動画配信サービスによって、小規模なアイドル、VTuber、インフルエンサー、クリエイターでもファンを獲得できます。そのため「100万人に売る」だけでなく、「数千人、数百人のファンに熱量の高い商品を販売する」というモデルが成立しやすくなっています。
矢野経済研究所の2025年調査でも、「推し」がいるオタクは64.2%に達し、アニメ、漫画、アイドル、ゲームなど複数のジャンルでファン消費が存在することが示されています。調査対象31分野におけるオタクの年間平均消費金額は5万472円でした。
つまり、2026年のオリジナルグッズ市場は「グッズそのものが欲しい」という需要だけを見ると実態を捉えにくくなっています。ライブに参加した記念、推しを応援する証、SNSで共有するコンテンツ、企業やブランドとの接点、地域やイベントへの参加証明など、さまざまな役割を一つの商品が担うようになっているからです。
今後のポイントは、単純に商品数を増やすことよりも「誰が、どんな場面で使いたいのか」を捉えられるかにあります。持ち歩きやすい商品、写真映えする商品、コレクションしたくなる商品、限定性のある商品など、購入後の行動まで設計されたグッズが重要になりそうです。ライブ市場や推し活市場が拡大する一方、ECとオンデマンド生産によって小規模な需要にも対応できる環境が整いつつあります。オリジナルグッズは、単なる記念品から「ファン・消費者とブランドをつなぐEC商品」へと、その役割を広げているといえるでしょう。
イメージ・マジック――「必要なものを必要な分だけ」作るオンデマンドグッズの成長企業
オリジナルTシャツやアクリルグッズ、スマートフォンケース、バッグなどを、インターネット上でデザインして注文できるサービスが身近になっている。こうした「オリジナルグッズEC」の代表的な企業の一つが、東証グロース市場に上場するイメージ・マジックだ。同社は1995年の創業以来、オンデマンドプリントを軸に事業を展開し、自社EC「オリジナルプリント.jp」に加えて、企業向けのシステム、エンターテインメントグッズのフルフィルメント、プリント関連のハードウェア・ソフトウェアまで事業領域を広げている。2026年現在、単なる「Tシャツの印刷会社」ではなく、オリジナルグッズを生み出すためのデジタル基盤と製造インフラを提供する企業へと変化している点が注目される。
イメージ・マジックの事業を理解するうえで重要なのが「オンデマンド」という考え方だ。従来のグッズ製造では、あらかじめ大量の商品を作って在庫を保有し、販売するという流れが一般的だった。しかし、オリジナルグッズの場合、どの商品がどれだけ売れるのかを事前に予測することは難しい。特にアイドル、アニメ、漫画、ゲーム、VTuberなどでは、作品やキャラクターごとに需要が異なり、人気の変動も大きい。そこで注文を受けてからプリント・加工するオンデマンド方式を採用すれば、少量の商品でも販売しやすくなる。
同社が運営する「オリジナルプリント.jp」は、その仕組みをECとして提供するサービスだ。現在はアパレルや雑貨など約1,900種類のアイテムを扱い、Web上でデザインを作成して注文できる。自分でデザインしたTシャツを1枚だけ作るといった個人利用から、イベントやブランドの商品をまとめて製造するといった用途まで、幅広い需要に対応できることが特徴だ。
このビジネスモデルと相性が良いのが、近年拡大している「推し活」市場である。アイドル、アニメ、ゲーム、VTuberなどのファンにとって、グッズは単なる物品ではなく、作品や人物を応援していることを表現する手段にもなる。Tシャツ、アクリルスタンド、バッグ、スマホケースなど、さまざまな商品に好きなデザインを組み合わせられることは、こうした多様なファン需要を取り込むうえで重要だ。
さらに2026年には、イメージ・マジックの技術が大手コンテンツ企業の公式グッズにも採用されている。2026年8月17日に講談社の「ヤンマガCLUB」で開始された「ヤンチャグッズ」では、同社のデザインシミュレーター連携ソリューション「maker town DTAPI」が採用された。ヤングマガジンの公式イラストを使い、ユーザー自身がグッズをデザインできる仕組みで、イメージ・マジックはデザインシステムだけでなく、製造、梱包、出荷、配送までを支援している。
ここには同社の事業が単なる「印刷受託」から、より上流・下流まで広がっていることが表れている。コンテンツ企業がオリジナルグッズを販売したい場合、デザイン画面を用意するだけでは事業は成立しない。注文を受け、データを処理し、適切な工場で生産し、検品し、梱包して購入者へ届ける必要がある。イメージ・マジックはこれらを一連の仕組みとして提供できる点に強みがある。
2026年8月時点で同社は、自社の最新ファクトリーと全国の提携工場を合わせた国内67拠点の「プリントネットワーク」を構築している。注文内容に応じて製造拠点へデータを自動的に振り分け、1日30万点、Tシャツ換算の生産キャパシティを掲げている。さらに、14種類の自社保有加工技術を活用し、多品種の商品を1点から生産できる体制を整えている。
この「多品種・小ロット」という市場環境は、ECの発展とも非常に相性が良い。SNSや動画配信サービスによって、個人クリエイターや小規模なブランドでもファンを獲得できるようになった一方、大量生産を前提としたビジネスでは在庫リスクが問題になる。オンデマンド生産なら、売れるか分からない商品を大量に作る必要がなく、需要に合わせて生産量を調整できる。これはグッズ販売を始めたい小規模事業者にとっても重要なメリットとなる。
イメージ・マジックは、こうした仕組みを自社ECだけにとどめていない。「maker town」は、デザインシミュレーターを備えたクラウド型のオンデマンドECサイトとして、プリント・名入れ・ユニフォーム事業者などがECを立ち上げるためのプラットフォームを提供している。2026年8月には、出張サービスなどを提供する「くらしのマーケット」の出店者向けユニフォーム作成にも同サービスが採用された。
また、エンターテインメント分野では「エンコマ」を展開する。これはエンターテインメントとコマースを組み合わせたフルフィルメントサービスで、グッズの企画から製造、出荷、カスタマーサポートまでを支援するものだ。ファン向け商品の企画・販売では、作品やアーティストごとに商品構成が異なるため、製造だけでなく受注や物流まで含めた運営体制が求められる。同社はこうしたバックヤードを支えることで、コンテンツ企業との接点を広げている。
さらに同社は、製造設備そのものにも事業領域を広げている。2026年8月には、治具を使わずUVプリントを自動化するAIカメラ搭載の「IM-V7 PRO MAX」を発表した。自社工場で培ったプリント技術や自動化ノウハウを、外部の事業者がグッズを製造するためのハードウェア・ソリューションにも展開している。
このように見ると、イメージ・マジックのビジネスは「オリジナルプリント.jpで商品を売る」という一つのECサービスだけではない。①消費者が利用するEC、②企業やブランドが利用するオンデマンドEC基盤、③エンタメ企業向けのグッズ製造・物流、④プリント工場、⑤製造機器・自動化技術という複数の領域が組み合わさっている。
同社が掲げる「必要なものを必要な分だけ作る」という考え方は、在庫を大量に持たないECとの親和性が高い。実際、同社は創業以来この考え方をオンデマンドプリントの中心に据え、環境負荷の少ないモノづくりにもつながる仕組みとして位置付けている。
もちろん、オリジナルグッズ市場の拡大がそのまま企業業績の拡大を保証するわけではない。印刷・物流コスト、人件費、設備投資、競争環境などは継続的に見ていく必要がある。また、オンデマンド生産では多品種の商品を効率よく製造するための自動化や品質管理が重要になる。だからこそ、今後の同社を見るうえでは、ECの利用者数だけでなく、製造自動化、法人向けシステム、エンタメ領域などがどのように収益につながっていくのかがポイントになる。
2026年現在のイメージ・マジックは、オリジナルTシャツを作る会社というイメージから一歩進み、「デザインする→注文する→作る→届ける」というオリジナルグッズのサプライチェーン全体をデジタル化・自動化する企業へと事業を広げている。講談社の公式グッズサービスへのシステム採用に象徴されるように、コンテンツ企業やEC事業者にとって、少量・多品種の商品を効率よく販売できる仕組みへの需要は今後も重要になりそうだ。個人の「1枚だけ作りたい」という需要から、大手企業の公式グッズまでをつなぐオンデマンド生産。そのインフラを支える上場企業として、イメージ・マジックはオリジナルグッズ市場を見るうえで注目される存在となっている。
≫ 無料講座:お金のプロが教える「初心者が毎月収入を得る投資の始め方」
トランザクション――オリジナルグッズ市場を支える「モノづくり」企業の現在地
オリジナルグッズ市場が広がるなか、企業やショップ、アーティスト、アイドル、ゲーム、アニメなどのコンテンツ事業者にとって、「どのようにグッズを作り、販売するか」は重要なテーマになっている。こうした市場で存在感を高めている上場企業の一つが、東京証券取引所プライム市場に上場するトランザクションだ。証券コードは7818で、同社は「モノづくり」を中心に、企画、製造、印刷、加工、物流、販売までをグループで幅広く手掛けている。
トランザクションの特徴は、単純にオリジナルグッズを販売する会社ではない点にある。グループには、オーダーメイドアイテムを企画・製造・販売するトランス、イージーオーダーや自社ブランドを担当するトレードワークス、印刷・加工・検品・物流を担うクラフトワーク、デザインや製品開発を手掛けるT3デザインなどがあり、グループ内でモノづくりの工程を幅広くカバーしている。2026年3月にはサウザンドを子会社化し、フィギュアの原型制作や開発、生産、ODMなどの領域もグループに加わった。
同社をオリジナルグッズ企業として見るうえで、特に注目したいのがEC戦略だ。トランザクショングループは、顧客の用途に合わせて複数のECサイトを展開している。企業向けの「販促STYLE」、エンタメや推し活向けの「オリジナルグッズプレス」、企業・ショップ向けの「オリジナルグッズドットコム」など、ターゲットを明確に分けている。現在は自社ブランドのECなども含めて合計10のECサイトを運営しているという。
なかでも「オリジナルグッズプレス」は、同人グッズ、ライブグッズ、アーティストグッズなどの物販商品を簡単に製作できるECサイトとして展開されている。特徴的なのは、1個からフルカラー印刷に対応していることだ。従来、オリジナルグッズを作る場合には、ある程度まとまった数量を発注する必要があった。しかし、ECとデジタル印刷などを組み合わせることで、小ロットの商品にも対応しやすくなっている。
これは現在のエンターテインメント市場と非常に相性がいい。アイドルやアーティスト、VTuber、ゲーム、アニメなどでは、ファンの好みに合わせて多様なグッズが求められる。一方で、すべての商品を大量生産すれば、売れ残りという在庫リスクが発生する。そこで小ロットから生産できれば、新しいコンテンツやイベントでもグッズ展開を始めやすくなる。ファンの規模が大きくない段階でも、需要に合わせて商品を作れることは、コンテンツビジネスにとって重要な意味を持つ。
さらに、トランザクションは単なる「印刷会社」とも異なる。同社のオーダーメイド事業では、顧客から要望を聞き、マーケット分析、企画提案、アイテム・デザイン提案、製作、納品までを一貫してサポートする。販売用商品だけでなく、販促キャンペーンのノベルティなどにも対応しており、国内外の工場を使い分けながら顧客のニーズに応じた生産方法を提案している。
この「企画から納品まで」という機能は、オリジナルグッズ市場が拡大するほど重要になる。企業やコンテンツ事業者がグッズを作りたいと思っても、商品企画、デザイン、素材選定、工場の手配、印刷、検品、包装、物流まで自社で構築するのは簡単ではない。トランザクションは、こうした面倒な工程をまとめて請け負うことで、グッズを作りたい顧客と製造現場の間をつなぐ役割を果たしている。
同社が力を入れている「イージーオーダー事業」も特徴的だ。自社開発した「MARKLESS STYLE」の無地製品を国内に在庫し、そこへ顧客の希望する印刷加工を施して納品する。小ロット、低価格、短納期といったニーズに対応することを目的としており、企業のオリジナルノベルティや販売商品などに活用できる。
そして、このMARKLESS STYLEを軸とした商品供給力が、同社のEC戦略を支えている。自社で企画・開発した無地製品を海外で委託製造し、国内に在庫したうえで顧客のオリジナルプリントを施すという仕組みを構築している。つまり、ECサイトだけを用意するのではなく、その背後にある商品開発と生産、在庫、加工までを組み合わせている点がポイントだ。
さらに同社は、オリジナルグッズだけに事業を限定しているわけではない。自社オリジナルブランドとして「MOTTERU」「Calulu」「gowell」などを展開している。「MOTTERU」はエコバッグなどを中心としたエシカル雑貨、「Calulu」はペットウェア、「gowell」はトラベル関連製品を扱うブランドだ。消費者のライフスタイル変化やトレンドを捉えて自社商品を開発することで、受注型のグッズ事業とは異なる収益機会も作っている。
一方、現在のトランザクションを考えるうえで外せないのが「推し活」だ。同社自身も、缶バッジ、アクリルスタンド、Tシャツ、ぬいぐるみ、トートバッグなどを例に挙げ、推し活・オタ活を支えるグッズビジネスに注目している。エンタメ関連企業との取引比率も拡大しているとしており、従来型の企業ノベルティだけでなく、ファンが購入する物販商品が重要な市場になっている。
2022年には「オリジナルグッズプレス」を開設し、2024年には企業・ショップ向けの「オリジナルグッズドットコム」を開始した。こうした用途別ECを増やしてきたことからも、同社が顧客の目的に応じた販売チャネルの構築を重視していることが分かる。2026年には第5次中期経営計画のもと、ECを含む既存事業の成長に加え、サウザンドの子会社化によってフィギュアなど新しいモノづくり領域にも事業を広げている。
トランザクションの現在地を考えると、「オリジナルグッズをECで販売する企業」というより、「オリジナルグッズを作りたい企業やコンテンツ事業者のためのモノづくりプラットフォーム」に近づいていると見ることができる。ECサイトによって顧客を獲得し、商品企画やデザイン、生産、印刷・加工、検品、物流までをグループで支える。この一連の機能があることで、顧客側は自社で製造インフラを持たなくてもグッズ事業を展開しやすくなる。
もちろん、オリジナルグッズ市場の拡大がそのまま同社の業績を保証するわけではない。原材料費、物流費、人件費、為替、生産拠点の状況など、モノづくり企業ならではのコスト変動は存在する。また、グッズ市場は流行の変化が速く、消費者のニーズに合った商品を継続的に開発することも欠かせない。そのため、今後はECの利用拡大だけでなく、商品開発力、製造・物流の効率化、エンタメ領域の成長、新規事業の収益化などを合わせて見る必要がある。
2026年現在のトランザクションは、企業向けノベルティからライブ・アーティストグッズ、推し活、フィギュアまで、「モノを作りたい」という多様な需要を取り込もうとしている。複数のECサイトを使い分けながら、企画から製造、加工、物流までをグループでカバーするビジネスモデルは、少量多品種化が進む現在のグッズ市場とも親和性が高い。オリジナルグッズが「記念品」から「ファンと企業・コンテンツをつなぐ商品」へと役割を広げるなか、トランザクションはその裏側のモノづくりを支える上場企業として、今後の市場動向を考えるうえで注目される存在といえるだろう。
GMOペパボ――「SUZURI」で広がるオリジナルグッズECの現在地
オリジナルグッズをインターネット上で作り、そのまま販売できるサービスが広がっている。その代表例の一つが、GMOペパボが運営する「SUZURI」だ。Tシャツやトートバッグ、スマートフォンケース、マグカップ、ステッカーなどに自分で作成した画像を入れ、オリジナル商品として販売できる。しかも、クリエイター自身が在庫を抱えて商品を保管したり、注文ごとに発送したりする必要がない。デザインを登録するだけで商品を販売できる仕組みは、個人クリエイターやイラストレーター、アーティストなどがグッズビジネスを始めるハードルを下げている。
GMOペパボは、GMOインターネットグループの一員として、レンタルサーバー、ドメイン、ネットショップ、ハンドメイドマーケットなど、個人や小規模事業者のインターネット活用を支援してきた企業だ。2003年創業で、2014年に東京証券取引所JASDAQへ上場。現在は東証スタンダード市場に上場しており、証券コードは3633である。ブログやホームページ、ネットショップといった「個人がインターネット上で活動するためのサービス」を提供してきた同社にとって、SUZURIはその延長線上にあるサービスともいえる。
SUZURIの特徴は、オリジナルグッズを「作る」だけでなく、「売る」ところまで一つのサービスで完結できる点にある。利用者は自分の画像やイラストをアップロードし、商品を選んで販売価格を設定する。購入者から注文が入ると、SUZURI側が商品の製作や発送を行い、クリエイターは販売価格から原価などを差し引いた金額を「トリブン」として受け取る仕組みだ。つまり、工場を探したり、商品を大量に仕入れたり、発送作業を自分で行ったりしなくても、オリジナルグッズの販売を始められる。
この仕組みが特に力を発揮するのが、SNSを中心に活動するクリエイターだ。イラストレーターが自分の作品をTシャツにしたり、漫画やキャラクターをモチーフにした商品を作ったり、動画クリエイターが自身のロゴを使ったグッズを販売したりするなど、オンライン上で発信しているコンテンツをそのまま商品に変えられる。従来なら「作品を作る人」と「商品を製造・販売する会社」の間に複数の工程が必要だったところを、ECプラットフォームがつなぐ形になっている。
背景には、クリエイターエコノミーの拡大がある。SNS、動画配信、ライブ配信などの普及によって、個人でも特定のテーマに関心を持つファンを集められるようになった。必ずしも何十万人、何百万人という巨大なフォロワーを持つ必要はなく、少人数でも熱量の高いファンがいれば、グッズを販売するビジネスが成立する可能性がある。SUZURIのようなオンデマンド型サービスは、こうした「小さなファン市場」に対応しやすい。
近年の「推し活」市場も、こうしたサービスとの相性がいい。アイドル、VTuber、アニメ、ゲーム、スポーツなどでは、ファンが好きな人物やキャラクターを応援するためにグッズを購入することが一般的になっている。Tシャツ、バッグ、スマートフォンケース、ステッカーなどは、単なる実用品ではなく、ファン自身が「好き」を表現するアイテムにもなる。SNSでグッズの写真を投稿したり、イベントに持って行ったりすることで、商品そのものがコミュニケーションの道具になるケースもある。
また、SUZURIの重要な特徴として、受注生産型のビジネスモデルが挙げられる。通常の物販では、商品を先に製造して在庫を持つ必要がある。人気が出れば追加生産が必要になる一方、売れなければ在庫が残る。特に個人クリエイターにとって、この在庫リスクは大きな負担になる。SUZURIでは注文を受けてから商品を製造するため、クリエイター側が大量の商品を抱える必要がない。
これは、オリジナルグッズ市場の「多品種・小ロット化」という流れとも一致する。例えば、あるクリエイターが「このイラストのTシャツが10枚売れるかもしれない」と考えたとしても、100枚や1,000枚を先に作るのはリスクが高い。しかし、受注生産なら販売機会を作りながら、実際の需要に応じて商品を製造できる。人気作品については販売が拡大し、反対に需要の小さい作品については少量で終えることができる。
さらに、SUZURIはグッズの種類を増やすことで、クリエイターが同じデザインをさまざまな商品へ展開できるようにしている。Tシャツだけでなく、トートバッグ、マグカップ、スマホケース、ステッカー、アクリルグッズなど、日常的に使える商品からコレクション性の高い商品まで選択肢が広がる。これは「一つの作品から複数の商品を生み出す」というクリエイター側の収益機会にもつながる。
GMOペパボがSUZURIを展開する意味は、同社の既存事業との相乗効果にもある。同社は「minne」や「カラーミーショップ」、「ロリポップ!」など、個人や小規模事業者がインターネット上で活動するためのサービスを複数展開してきた。SUZURIは、その中でも「作品を商品に変えて販売する」という領域を担う。ホームページを作り、SNSで情報を発信し、ネットショップを運営し、オリジナルグッズを販売するという個人のデジタル活動を、複数のサービスで支援できる点が同社の特徴だ。
一方で、SUZURIをめぐる競争環境も見逃せない。オリジナルプリントサービスには国内外にさまざまな事業者が存在し、個人がグッズを作って販売するための選択肢は増えている。商品の種類、価格、デザインのしやすさ、納期、品質、販売手数料など、利用者が比較するポイントも多い。そのため、GMOペパボにとっては、単に商品数を増やすだけでなく、クリエイターが継続的に利用したくなるサービス体験を作れるかが重要になる。
また、オリジナルグッズはコンテンツの人気に左右されやすいという側面もある。SNS上で話題になった作品が急速に売れる一方、トレンドが変化すれば需要が落ちる可能性もある。そのため、プラットフォームを運営する企業には、多様なクリエイターを集め、個々のヒットに依存しすぎないエコシステムを形成することが求められる。
2026年現在のSUZURIを取り巻く環境を見ると、オリジナルグッズは「大企業が大量生産して販売するもの」から、「個人や小規模クリエイターでも自分の作品を商品化できるもの」へと裾野を広げている。SNSで作品を発表し、ファンを獲得し、そのファンに向けてグッズを販売する。さらに、売れた分だけ生産する。この循環をインターネット上で完結できることが、SUZURIの大きな特徴だ。
GMOペパボの事業を見る際には、SUZURI単体の売上だけでなく、こうしたクリエイターエコノミーや個人EC市場の拡大と合わせて考える必要がある。生成AIやSNS、動画配信などによって、個人がコンテンツを生み出し、発信し、ファンを集める環境は大きく変化している。その先にある「作品を商品に変える」という需要も、今後さらに多様化する可能性がある。
SUZURIは、クリエイターが工場を持たなくても、在庫を抱えなくても、自分の作品を商品として世の中に出せる仕組みを提供している。これは単なるオリジナルTシャツのECではなく、個人の創作活動と製造・物流をつなぐプラットフォームと見ることができる。GMOペパボが長年培ってきた「個人のインターネット活動を支援する」という事業領域の中で、SUZURIがどこまでクリエイターの収益化を支えられるのか。オリジナルグッズとクリエイターエコノミーが交差する市場を考えるうえで、今後も注目したいサービスの一つといえるだろう。
まとめ:オリジナルグッズは「モノ」から「ファンとつながる仕組み」へ
オリジナルグッズの需要は、企業の販促品やイベントの記念品だけにとどまらない。現在では、推し活、ライブ、アニメ、ゲーム、VTuber、スポーツ、個人クリエイターなど、多様な分野で購入機会が生まれている。特にSNSによって商品を購入するだけでなく、グッズを持って出掛けたり、写真を撮って投稿したりするなど、購入後の体験まで含めた消費が広がっている。
その一方で、グッズを提供する側にも変化が起きている。オンデマンド生産や小ロット対応が進んだことで、大量の商品を先に作って在庫を抱える必要性が低下した。イメージ・マジックのように製造・物流までをデジタル化する企業、トランザクションのように企画から製造、ECまで幅広く手掛ける企業、GMOペパボのようにクリエイターと製造・販売をつなぐプラットフォームを提供する企業など、さまざまな形で市場を支えている。
今後のオリジナルグッズ市場では、「何を作るか」だけでなく、「誰に、どのような場面で届けるか」がより重要になりそうだ。ファンの細かなニーズに合わせた少量多品種の商品や、SNSで共有したくなる商品、期間限定・イベント限定の商品など、デジタル時代ならではのグッズ展開も考えられる。
オリジナルグッズ市場の拡大は、単に商品の種類が増えるという話ではない。個人が作品を収益化し、企業がファンとの接点を作り、コンテンツの価値を商品として届けるためのインフラが整ってきたことを意味する。EC、SNS、推し活、クリエイターエコノミー、オンデマンド製造――これらが重なり合う市場として、オリジナルグッズを取り巻くビジネスは今後も変化していくことになりそうだ。




