
「現在地」から社会インフラへ――位置情報が変えるビジネスの現在地
スマートフォンの地図アプリやカーナビなど、私たちの身近なところで利用されている位置情報。GPSなどによって取得された位置情報は、単に現在地を確認するためだけではなく、地図・GIS、物流、マーケティング、防災、自動運転、観光、ゲームなど、幅広い分野で活用されています。さらにAIやロボットの進化によって、現実世界をデジタル空間に正確に再現する「空間情報」の重要性も高まっています。
こうした位置情報ビジネスを支える企業の中でも、長年にわたって地図データを蓄積してきたゼンリンと、高精度3次元地図を手掛けるダイナミックマッププラットフォームは、それぞれ異なるアプローチで市場を開拓しています。ゼンリンは住宅地図やデジタル地図、GIS、APIなどを通じて企業や自治体の業務を支える一方、ダイナミックマッププラットフォームは自動運転やADAS、フィジカルAIなどを見据えた高精度な3次元データを展開しています。
「どこにいるのか」を知るための技術だった位置情報は、いまや「人や車、建物、道路がどこにあり、どのように動いているのか」をデジタル上で把握するための基盤へと進化しています。本稿では、位置情報市場の現在地を確認しながら、関連する2社の事業と最新動向を見ていきます。
| 企業名 | コード | 市場 | 位置情報との関係 | 主な用途・サービス |
|---|---|---|---|---|
| ゼンリン | 9474 | 東証プライム | 非常に直接的 | デジタル地図、GIS、カーナビ、位置情報サービス |
| ダイナミックマッププラットフォーム | 336A | 東証グロース | 非常に直接的 | 高精度3次元地図、自動運転、位置情報基盤 |
| unerry | 5034 | 東証グロース | 非常に直接的 | 位置情報ビッグデータ、行動分析、マーケティング |
| アイサンテクノロジー | 4667 | 東証スタンダード | 非常に直接的 | 測量、高精度3次元地図、自動運転、都市空間DX |
| 昭文社ホールディングス | 9475 | 東証スタンダード | 直接的 | 地図、観光情報、地図データ、位置情報サービス |
| モバイルファクトリー | 3912 | 東証スタンダード | 活用型 | 「駅メモ!」など位置情報連動型ゲーム |
| コロプラ | 3668 | 東証プライム | 活用型 | 位置情報を利用したゲーム・サービス |
地図から自動運転、マーケティングまで――位置情報が広げる新たなビジネス
私たちが日常的に使っているスマートフォンの地図アプリ。その背景には、GPSなどによって取得される位置情報と、それを意味のあるデータへ変換する地図・GIS(地理情報システム)の技術があります。位置情報はもはや「現在地を知るための機能」にとどまらず、自動運転、物流、観光、店舗マーケティング、防災、ゲームなど、さまざまな産業を支えるインフラになりつつあります。
位置情報関連の上場企業としてまず挙げられるのが、ゼンリンです。同社は住宅地図やカーナビ向け地図などで知られていますが、現在はデジタル地図やGIS、地図APIなど、企業向けの地理空間情報サービスにも事業領域を広げています。2026年8月には「ゼンリン地図ナビ」を大幅にリニューアルし、住宅地図を利用したカーナビ対応や建物出入口表示を拡充しました。さらに、同年には住所マッチングや周辺道路検索、マップマッチングなど、位置情報を活用するAPIの機能拡充も進めています。地図は単に「見るもの」から、さまざまなサービスの基盤として利用するものへと変化しています。
位置情報の高度化という観点で注目されるのが、ダイナミックマッププラットフォームです。同社は高精度3次元地図データを手掛け、自動運転やADAS(先進運転支援システム)などに利用されるデータ基盤を提供しています。緯度・経度・高さという3次元の座標情報を持つ点群データや、そこから自動運転に必要な情報を抽出した高精度3次元地図データを扱っている点が特徴です。2026年9月には、同社の高精度3次元地図データが日産自動車の新型「エルグランド」に採用されたと発表。これにより採用実績は自動車メーカー6社、累計39車種となりました。位置情報は「自分がどこにいるか」を知るだけでなく、車両が道路上のどこを走っているのかを高精度に把握する技術へと進化しています。
位置情報のもう一つの大きな用途が、人流データの分析です。unerryは、スマートフォンの位置情報などを活用したリアル行動データプラットフォーム「Beacon Bank」を展開しています。2026年9月には、来館者数を計測するシステムとBeacon Bankを連携させ、来館者の属性、商圏、来訪頻度、館内回遊、競合施設との関係などを分析するサービスを開始しました。位置情報を活用すれば、「どこに人がいるか」だけでなく、「どのエリアから来たのか」「どの程度の頻度で訪れるのか」「周辺でどのように行動しているのか」といった情報を分析できます。小売、商業施設、観光、広告などへの応用余地は大きい分野です。
一方、位置情報はゲームにも活用されています。モバイルファクトリーは位置情報ゲームを主要な事業領域の一つとしており、実際の駅や地域を訪れることとゲーム内の体験を組み合わせることで、リアルとデジタルをつなぐサービスを展開しています。コロプラも位置情報を活用したゲームを展開しており、位置情報ゲームは「ゲームをするために実際に移動する」という独特の市場を形成してきました。観光や地域活性化との相性が良いことも特徴です。
また、アイサンテクノロジーも位置情報関連企業として注目できます。同社は測量・測地関連の技術を基盤とし、高精度測位や3次元地図、自動運転関連の技術へと領域を広げています。自動運転では、車両側のセンサーだけでなく、道路や周辺環境をデジタルデータとして把握することが重要になります。高精度な位置情報と3次元データを組み合わせることで、次世代モビリティを支える基盤が構築されます。
位置情報市場を考えるうえでは、「データを取得する技術」と「データを活用するサービス」の両方を見る必要があります。GPSやビーコン、車載センサー、スマートフォンなどから位置情報を取得し、それを地図データやAIなどと組み合わせることで、新しい価値が生まれます。
特に今後の成長分野として考えられるのが、自動運転とフィジカルAIです。ダイナミックマッププラットフォームは2026年の発表で、高精度3次元データを自動運転だけでなく、シミュレーション、インフラ管理、除雪支援などにも展開していると説明しています。同社は2026年度に創業10周年を迎える節目でもあり、国内外でデータ基盤を拡大しています。位置情報データの利用範囲が「カーナビ」から「現実世界をデジタル化する基盤」へ広がっていることが分かります。
さらに、災害対策も位置情報の重要な用途です。道路の通行実績、避難所の場所、被災地域の状況などを地図上で可視化できれば、自治体や企業の意思決定を支援できます。ゼンリンデータコムでも2026年に、ホンダのカープローブデータを活用した災害時の「通行実績情報マップ」を公開するなど、位置情報を防災に活用する取り組みが進んでいます。
ただし、位置情報の普及には課題もあります。スマートフォンなどから得られる位置情報は、人の行動を詳細に分析できる一方、プライバシーへの配慮が不可欠です。企業が位置情報を利用する場合には、利用目的やデータの取り扱い、匿名化などについて適切な対応が求められます。位置情報ビジネスが拡大するほど、「どれだけ多くのデータを集められるか」だけではなく、「どのように安全かつ適切に利用するか」も重要な競争力になります。
位置情報関連企業を見る際には、単純に「地図会社」として分類するのではなく、地図・GIS、高精度3次元地図、人流ビッグデータ、位置情報ゲーム、自動運転など、どの市場に強みを持っているかを確認することが重要です。ゼンリン、ダイナミックマッププラットフォーム、unerry、アイサンテクノロジー、モバイルファクトリーなど、それぞれ位置情報との関わり方は異なります。
スマートフォンで現在地を確認するという身近な技術から始まった位置情報は、いまや「人」「車」「建物」「道路」「街」をデジタル上で結び付ける基盤へと進化しています。自動運転やAI、スマートシティ、物流、防災などの普及が進めば、位置情報の重要性はさらに高まる可能性があります。位置情報関連株を調べる際には、地図そのものだけでなく、そのデータがどの産業で使われ、どのような収益モデルにつながっているのかを見ることが、企業を理解するポイントになりそうです。
ゼンリン――「地図会社」から位置情報・データビジネス企業へ、進化する地理空間情報の現在地
「ゼンリン」と聞くと、住宅地図やカーナビの地図を思い浮かべる人は多いでしょう。しかし、現在のゼンリンは、紙の地図を作る会社というだけではありません。デジタル地図、GIS、位置情報データ、API、自治体・企業向けDX、自動車関連など、地理空間情報を幅広い産業に提供する企業へと事業領域を広げています。位置情報がスマートフォン、自動運転、物流、防災、マーケティングなどで重要性を増すなか、ゼンリンが持つ「地図データ」はデジタル社会の基盤の一つになっています。
ゼンリンは1948年創業の地図情報会社で、現在は東証プライム市場に上場しています。証券コードは9474です。2026年3月31日時点の発行済み株式数は約5730万株で、東京証券取引所プライム市場と福岡証券取引所に上場しています。大株主にはトヨタ自動車やNTTなども名を連ねており、自動車・通信といった位置情報と親和性の高い業界とのつながりも確認できます。
同社の強みの一つが、長年蓄積してきた膨大な地図情報です。住宅地図では建物単位の情報を扱い、道路や施設だけでなく、建物やテナントなど、現実の街を細かくデータ化しています。こうした情報は、カーナビだけでなく、不動産、物流、インフラ、金融、自治体など、多様な業務に利用できます。
特に注目したいのが「ZENRIN Maps API」です。これはゼンリンの地図コンテンツや位置情報データを、企業が自社のシステムやWebサービスなどに組み込むためのAPIサービスです。地図表示、住所・地番検索、ルート検索、住所の緯度経度への変換、位置測位、ジオフェンスなど、さまざまな機能を提供しています。つまりゼンリンは、自社で地図を見るサービスを提供するだけでなく、他社が位置情報を使ったサービスを開発するための「裏側のインフラ」も担っているのです。
2026年は、このデジタル化をさらに進める動きが見られました。2026年5月には、企業や自治体向けのセミオーダー型業務支援クラウドサービス「ZENRIN Maps Studio」の提供を開始。ゼンリンが保有する地図情報を組み合わせ、顧客ごとの業務に合わせたアプリケーションを構築できるサービスです。初期費用0円から、最短5営業日で導入可能とし、企業や自治体のDXを支援するとしています。
このサービスが示しているのは、ゼンリンのビジネスモデルが「地図データを販売する」だけではなく、「地図データを使った業務システムを提供する」方向へ広がっていることです。人口減少や人手不足によって、企業や自治体では業務効率化が大きな課題になっています。そこに地図と位置情報を組み合わせれば、営業活動、設備管理、施設管理、不動産、物流など、さまざまな業務を効率化できます。
例えば不動産業では、土地や建物の情報を地図上で一元管理することで、営業担当者が外出先から情報を確認したり、社内で情報を共有したりできます。ゼンリンは2026年1月にも、不動産業務のDXに向け、用地情報を地図上で一元管理・可視化するプラットフォームを開発したと発表しています。クラウド上で地図情報を利用することで、従来のオンプレミス型システムに比べて、情報共有や更新をしやすくする狙いがあります。
自動車分野もゼンリンにとって重要な市場です。カーナビ向けの道路・施設情報はもちろん、近年は道路情報のデジタル化や位置情報技術の高度化が進んでいます。自動運転やADASの普及には、車両のセンサーだけでなく、道路や周辺環境を正確に把握したデータが必要です。地図データの精度や更新頻度は、今後のモビリティ社会を支える重要な要素となります。
2026年には「ZENRIN Maps API」でも、VICS情報関連機能、マルチモーダル検索、建物到着地点・建物出入口地点機能などが追加されています。目的地の住所だけでなく、「実際にどこから建物へ入るのか」という現実世界の情報まで扱うことで、地図データの実用性を高めています。
また、ゼンリンはカーナビ向け地図の更新も継続しています。2026年7月には「JAPAN MAP 26」を発売し、道路データや市街地図、施設情報などを収録。道路データについては2027年6月まで2カ月ごとの更新を提供するとしています。地図は一度作れば終わりではなく、新しく開通する道路、施設の開業・閉店、住所変更などを継続的に反映する必要があります。この「更新し続ける能力」そのものが、地図会社にとって重要な競争力になります。
一方で、ゼンリンを見る際には、紙の住宅地図市場だけを見て判断しないことが重要です。スマートフォンやクラウドの普及によって、地図情報の利用方法そのものが変わっています。企業の業務システムに組み込まれる地図、自治体のDXを支える地図、物流のルート最適化に使われる地図、位置情報を活用したマーケティングなど、地図データがさまざまなサービスの「部品」になる可能性があります。
ゼンリン自身も2026年3月期の決算説明で、プロダクトソリューション、公共ソリューション、マーケティングソリューション、インフラソリューション、モビリティソリューションといった複数の事業領域を説明しています。また、中長期経営計画「ZGP2030」の進捗についても説明しており、従来の地図事業から地理空間情報を活用したソリューションビジネスへ広げる方向性がうかがえます。
位置情報ビジネスが拡大する一方で、課題もあります。位置情報は人や車の移動を把握できる便利なデータである一方、プライバシーやデータ管理への配慮が欠かせません。また、地図情報は正確性が求められるため、データの更新や品質管理にも継続的なコストがかかります。地図を提供する企業にとっては、「どれだけ多くのデータを持っているか」だけでなく、「どれだけ正確に、早く、使いやすい形で提供できるか」が重要になります。
ゼンリンは、こうした地理空間情報を長年蓄積してきた点に特徴があります。今後、自動運転、物流DX、スマートシティ、防災、観光、不動産、マーケティングなどで位置情報の利用が進めば、地図データの価値も変化していく可能性があります。
「地図会社」というイメージだけでは捉えきれないのが、現在のゼンリンです。紙の住宅地図からデジタル地図へ、そして地図APIやクラウド、企業・自治体DXへ。2026年の動きを見ると、ゼンリンは地図そのものを売る企業から、地理空間情報を活用して企業や社会の課題を解決する企業へと事業の幅を広げています。位置情報がデジタル社会の重要なインフラとなるなか、同社が蓄積してきた地図データをどのように新しいサービスや産業へ結び付けていくのかが、今後の成長を考えるうえで重要なポイントになりそうです。
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ダイナミックマッププラットフォーム――自動運転からフィジカルAIへ、高精度3次元地図が拓く新市場
自動運転やAI、ロボットなど「現実世界で動くテクノロジー」が進化するなか、重要性を増しているのが、現実の道路や建物、地形などをデジタル空間に再現する技術です。その中心的な存在として注目されているのが、ダイナミックマッププラットフォームです。同社は高精度3次元データを提供する企業で、2025年3月に東京証券取引所グロース市場へ上場しました。証券コードは336Aです。日本発の企業として、自動車分野を中心に高精度な位置情報基盤を世界へ展開しています。
同社が手掛ける「高精度3次元地図」は、一般的なカーナビの地図とは役割が異なります。道路の形状や車線、標識、ガードレールなど、道路空間に存在するさまざまな情報を3次元データとして記録し、自動車が自分の位置を高精度に把握するための基盤として利用します。同社によると、HDマップはセンチメートル級の精度を持ち、主に3次元で位置情報を保有し、道路構造物などの情報を収録しています。
この技術が特に注目されているのが、自動運転・ADAS(先進運転支援システム)です。自動車が高速道路などを走行する際には、自車が道路上のどこにいるのかを正確に把握する必要があります。カメラやレーダーなどの車載センサーに加えて、高精度な3次元地図を利用することで、車両の位置や道路環境をより詳細に認識できます。
2026年9月には、同社の高精度3次元地図データが日産自動車の新型「エルグランド」に採用されたと発表されました。エルグランドの一部グレードに搭載される「ProPILOT 2.0」において、同社のデータが自車位置の高精度な推定を支える空間情報として活用されています。今回の採用により、同社の高精度3次元地図データは自動車メーカー6社、累計39車種に採用されたとしています。
2026年2月には、3代目となる新型「日産リーフ」への採用も発表されました。こちらも「ProPILOT 2.0」に同社の高精度3次元地図データが使われており、高速道路や自動車専用道路におけるハンズオフ走行を支援しています。こうした量産車への採用が積み重なることは、同社のデータ事業における重要なポイントです。
同社の事業を考えるうえで重要なのが、データの「蓄積」と「更新」です。道路は新設や改良、車線変更などによって常に変化します。そのため、高精度3次元地図は一度作って終わりではありません。道路環境の変化を反映しながら、継続的にデータを整備・更新する必要があります。
同社は2026年2月時点で、国内約3万3000km、北米約150万km、欧州約25万5000km、韓国約2万kmを整備し、26カ国以上を対象にデータを展開しています。自動車メーカーへの採用実績だけでなく、グローバルなデータカバレッジを構築している点も同社の特徴です。さらに2026年に入って存在感を高めているのが「フィジカルAI」です。生成AIが文章や画像などデジタル世界を扱うのに対して、フィジカルAIは自動車やロボットなど、現実世界で動く機械が周囲の環境を認識し、判断し、行動するためのAIです。その学習やシミュレーションには、現実世界を正確に表現したデータが必要になります。
ダイナミックマッププラットフォームは、この市場を新たな成長領域として位置付けています。2026年3月期にはAI用途の法人ライセンスを中心にライセンス型売上が拡大し、ライセンス型売上は約26億円、連結売上高は約57億円となりました。会社側は2027年3月期について、売上高70億円、ライセンス型売上30億円、調整後EBITDAの黒字化を見込んでいます。
2027年3月期第1四半期でも、AI用途向けを中心とした法人ライセンス案件の拡大により、ライセンス型売上高が前年同期を上回りました。また、AIネイティブデータセットの提供開始や、NVIDIA、MathWorksとの連携によるフィジカルAI向け学習・検証データ生成などにも取り組んでいます。一方で、プロジェクト型売上高は前年同期を下回り、連結売上高や調整後EBITDAも前年同期を下回ったとしています。成長市場に位置する一方、案件のタイミングなどによって業績が変動する点には注意が必要です。
同社のビジネスモデルは、大きく「プロジェクト型」と「ライセンス型」に分けられます。プロジェクト型は高精度3次元データの初期整備などが中心で、ライセンス型は量産車への搭載やAI用途など、継続的な利用から収益を得るモデルです。同社は現在、高収益のライセンス型ビジネスを拡大する方向に取り組んでいます。
また、自動車以外への用途拡大も進んでいます。同社の高精度3次元データは、社会インフラ、防災・減災、スマートシティ、物流、運送などへの利用が進められています。道路をデジタルデータとして再現できれば、道路管理や除雪、建設、物流など、さまざまな分野で現場の省人化や効率化に活用できる可能性があります。
2026年9月には、ゲーム・エンターテインメント領域への展開も発表しました。自動運転向けに整備してきた高精度3次元データをゲーム制作などに活用する可能性を探っており、東京ゲームショウ2026にも出展しています。さらに同社は、空港、建設、物流などでのガイダンス技術や、3D Gaussian Splatting(3DGS)など新たなデータ活用にも取り組んでいます。自動車だけに依存しないデータビジネスを構築できるかが、中長期的なテーマになりそうです。
一方で、事業上の課題もあります。高精度3次元データは整備・更新に大規模な投資が必要であり、プロジェクト型案件では売上計上時期がずれることもあります。実際に2026年3月期には、一部プロジェクト案件の実施時期が後ろ倒しとなったことが通期業績予想修正の要因になりました。また、フィジカルAIや自動運転市場の成長が、必ずしも同社の売上に直結するとは限りません。自動車メーカーやAI関連企業などとの取引拡大と、継続的なライセンス収益への移行が重要になります。
ダイナミックマッププラットフォームは、単なる「地図会社」ではありません。道路や周辺環境を高精度な3次元データとしてデジタル空間に再現し、それを自動車、AI、ロボット、インフラ、防災、物流、エンターテインメントなどへ展開しようとする企業です。
2025年の上場から2026年にかけては、自動車への採用拡大に加え、AI用途の法人ライセンスという新たな収益源も育ち始めています。自動運転の普及だけでなく、AIやロボットが現実世界で活動する「フィジカルAI」の時代が到来すれば、現実世界を正確にデジタル化したデータの価値はさらに高まる可能性があります。高精度3次元データをどこまで多様な産業へ展開し、プロジェクト型からライセンス型へ収益構造を転換できるか。証券コード336Aの同社を位置情報・自動運転関連株として見る際には、この点が今後の重要なチェックポイントとなりそうです。
まとめ:位置情報の進化が生み出す、新たなデータビジネス
位置情報は、スマートフォンの地図やカーナビを便利にするための技術から、さまざまな産業を支えるデータ基盤へと進化しています。地図・GISによる業務効率化、人流データを活用したマーケティング、自動運転を支える高精度3次元地図、防災や物流への活用など、その用途は着実に広がっています。さらにAIやロボットが現実世界で活動する「フィジカルAI」の普及によって、現実空間を正確にデジタル化する技術への需要も高まっています。
今回取り上げたゼンリンは、長年蓄積してきた地図情報をデジタル化し、APIやクラウドサービスなどを通じて企業や自治体のDXへ活用する方向に事業を広げています。一方、ダイナミックマッププラットフォームは、高精度3次元地図を自動車メーカーなどに提供し、自動運転・ADASに加えてAI用途などへの展開を進めています。
両社はともに「位置情報」を扱っていますが、事業領域や収益モデルは異なります。位置情報関連企業を見る際には、単に地図を提供しているかどうかだけではなく、どのようなデータを保有し、それを自動車、AI、物流、自治体など、どの産業の課題解決につなげているのかを見ることが重要です。今後、スマートシティ、自動運転、AI、ロボットなどの普及が進めば、位置情報や地理空間データの役割はさらに大きくなる可能性があります。身近な「現在地」から社会全体を動かすデータ基盤へ――位置情報市場の進化は、関連企業の事業にも新たな成長機会をもたらしそうです。




