
ネット銀行の現在地――便利さの一方で知っておきたい「強み」と「弱み」
スマートフォンから口座開設や振込、残高確認まで完結できるネット銀行は、いまや日常の金融サービスとして定着しつつある。店舗を持たない、あるいは店舗への依存度を抑えることで、時間や場所に縛られず銀行を利用できることが大きな特徴だ。楽天銀行はネット銀行として、24時間365日の取引やスマートフォンを活用したサービスを提供し、SBI新生銀行もアプリによる口座開設やスマホATMなど、デジタルを活用した利便性を高めている。
今回取り上げる楽天銀行、SBI新生銀行、セブン銀行は、いずれもデジタルを活用した金融サービスを展開しているものの、そのビジネスモデルは同じではない。楽天銀行は楽天証券や楽天カードなど「楽天経済圏」との連携が特徴で、銀行口座を決済や資産運用につなげている。SBI新生銀行はSBI証券との連携を強化し、銀行と証券を一体的に利用できる環境を整えている。セブン銀行はセブン-イレブンなどに広がるATM網を強みとし、ATMを金融サービスの接点として活用している。つまり、同じ「ネット・デジタル金融」というテーマでも、楽天銀行は経済圏、SBI新生銀行は資産運用、セブン銀行はATMインフラという、それぞれ異なる強みを持っている。
ネット銀行のメリットとしてまず挙げられるのが、利便性だ。店舗に足を運ばなくても、スマートフォンやパソコンから残高確認や振込などを行える。さらに、ATM手数料や他行宛振込手数料について、一定の条件のもとで無料回数を設けている銀行も多い。SBI新生銀行では提携コンビニATMやネット振込について無料枠を設定しており、楽天銀行も優遇プログラムによってATM・振込手数料の無料回数を増やせる。
一方で、ネット銀行にはデメリットもある。店舗型銀行のように、複雑な金融相談を窓口で担当者に直接相談することが難しい場合がある。また、ATMの無料回数や振込手数料の優遇には、預金残高や取引内容などの条件が付くケースがある。金利や手数料だけを見て選ぶのではなく、自分が実際に利用するサービスと条件が合っているかを確認することが重要だ。
さらに、デジタルサービスならではのセキュリティーやシステム障害への備えも欠かせない。スマートフォンやインターネットを介して金融取引を行う以上、フィッシング詐欺や不正アクセスなどへの対策は利用者側にも求められる。実際、楽天銀行も2026年9月にスマートフォンへの不正アプリのインストールを誘導する手口について注意喚起している。
| 銀行名 | 上場 | 主な特徴 | 親会社・グループ |
|---|---|---|---|
| 楽天銀行 | ○ | 国内最大級のネット銀行。楽天経済圏との連携 | 楽天グループ |
| PayPay銀行 | × | PayPayとの連携、スマホ決済との親和性 | PayPay・ソフトバンク系 |
| ドコモSMTBネット銀行 | × | 旧住信SBIネット銀行。2026年にドコモとの新体制へ | NTTドコモ・三井住友信託銀行 |
| auじぶん銀行 | × | au・KDDIの金融サービスと連携 | au・三菱UFJ銀行 |
| ソニー銀行 | × | 外貨・投資・住宅ローンなどに強み | ソニーグループ |
| GMOあおぞらネット銀行 | × | 法人口座・法人向けサービスに強い | GMOインターネットグループ・あおぞら銀行 |
| みんなの銀行 | × | スマホ完結型。若年層を意識したサービス | ふくおかフィナンシャルグループ |
| UI銀行 | × | 東京きらぼしフィナンシャルグループのデジタル銀行 | 東京きらぼしFG |
| イオン銀行 | × | イオングループとの連携、店舗・ATM網も活用 | イオン |
| セブン銀行 | ○ | セブン-イレブンを中心とするATMネットワーク | セブン&アイHD |
| ローソン銀行 | × | ローソン店舗のATM網を活用 | 三菱UFJ銀行など |
| 大和ネクスト銀行 | × | 大和証券との連携、資産運用層向け | 大和証券グループ |
| SBI新生銀行 | ○ | SBIグループの銀行。ネット金融にも注力 | SBIグループ |
| オリックス銀行 | × | 住宅ローン・投資用不動産ローン、預金商品など | オリックス |
| 01銀行 | × | 2026年にサービスを開始したデジタル銀行 | 北國銀行系 |
ネット銀行のメリット・デメリットを徹底比較!便利さの裏側にある注意点とは
スマートフォンの普及やキャッシュレス決済の拡大によって、銀行の使い方は大きく変わった。かつて銀行といえば、駅前や住宅街に店舗を構え、窓口で預金や振込、各種手続きを行うのが一般的だった。しかし現在は、店舗を持たず、スマートフォンやパソコンを通じてサービスを提供する「ネット銀行」が存在感を高めている。
ネット銀行の大きな特徴は、店舗や紙の通帳といった従来型銀行のコストを抑え、その分を金利や手数料、利便性などに反映しやすい点にある。口座開設から振込、残高確認までスマートフォンで完結する銀行も多く、忙しい現役世代やデジタルサービスに慣れた利用者を中心に利用が広がっている。
一方で、ネット銀行ならではの弱点もある。対面相談を受けにくいことや、システム障害、通信環境、スマートフォンの紛失など、デジタルサービス特有のリスクを考慮する必要がある。さらに、ATMの利用条件や振込手数料、無料回数などは銀行ごとに大きく異なるため、「ネット銀行ならどこでもお得」と考えるのは禁物だ。
ネット銀行のメリットとしてまず挙げられるのが、店舗に行かなくても多くの銀行サービスを利用できることだ。残高確認や振込、定期預金の申し込みなどをスマートフォンから行えるため、営業時間を気にする必要がない。仕事や家事などで銀行の窓口に行く時間を取りにくい人にとって、この利便性は大きな魅力になる。
また、手数料の安さも重要なポイントだ。ネット銀行では、一定の条件を満たすことでATM手数料や振込手数料が無料になるサービスが用意されているケースが多い。例えば、給与受取口座として利用する、一定額以上の預金を保有する、関連するクレジットカードや証券サービスを利用するといった条件によって、無料回数が増える場合がある。銀行を日常的に利用するほど、こうした手数料の差が積み重なってくる。
預金金利も比較ポイントになる。ネット銀行は店舗網を中心とする銀行に比べて運営コストを抑えやすく、その一部を預金金利などの条件に反映させるケースがある。特に普通預金や定期預金では、特定の条件を満たすことで金利が上乗せされる商品も存在する。低金利環境が長く続いてきた日本では、わずかな金利差でも預金残高が大きくなれば無視できない。
さらに、証券会社やクレジットカード、キャッシュレス決済などとの連携もネット銀行の強みだ。銀行口座と証券口座を連携して資金移動を自動化したり、カード決済の引き落としやポイントサービスと組み合わせたりすることで、資産運用や日常の決済を効率化できる。楽天銀行と楽天証券、SBI新生銀行とSBI証券など、金融グループ内のサービスを組み合わせた金融サービスは、ネット銀行の特徴を象徴している。
その一方で、ネット銀行にはデメリットもある。代表的なのが、対面サービスの弱さだ。住宅ローンや相続、資産運用など、複雑な相談をしたい場合には、店舗を持つ銀行のほうが相談しやすいケースがある。ネット銀行でも電話やチャットによるサポートは提供されているが、「担当者と直接話しながら相談したい」というニーズには必ずしも応えられない。
ATMの使い勝手にも注意が必要だ。ネット銀行は自前の店舗やATMをほとんど持たないため、コンビニATMなどを利用することになる。そのため、銀行によって無料回数や手数料体系が異なる。無料条件を満たさなければ、一般的な銀行よりもATM利用コストが高くなる可能性もある。自分が普段利用するATMが対象になっているかを、口座開設前に確認しておきたい。
セキュリティーも重要な論点だ。ネット銀行ではログインIDやパスワード、認証アプリ、ワンタイムパスワードなどを利用して本人確認を行う。便利な半面、フィッシング詐欺や不正アクセスなどへの対策が欠かせない。スマートフォンを紛失した場合や、不審なメールやSMSから偽サイトへ誘導された場合などには、慎重な対応が求められる。
また、システム障害が発生した場合にサービスを利用しにくくなる可能性もある。ネット銀行では、基本的にインターネットやアプリを通じて取引するため、通信環境やシステムの状況に左右される。障害が発生した際に備えて、生活費をすべて一つのネット銀行に集中させるのではなく、複数の金融機関を使い分ける方法も考えられる。
では、従来型の銀行とネット銀行はどちらが便利なのだろうか。実際には、利用目的によって答えが変わる。日常的な振込や残高確認、預金、ネットショッピングなどを中心に使うなら、ネット銀行の利便性は高い。一方、現金を頻繁に引き出す人や、窓口で相談したい人、相続など複雑な手続きを予定している人は、店舗型銀行の存在も重要になる。
特に注目されるのが、ネット銀行と証券会社の連携だ。例えば、銀行と証券会社の口座を連携させることで、預金から投資資金への移動を効率化できる場合がある。銀行を「お金を置いておく場所」としてだけでなく、「決済・貯蓄・投資をつなぐ金融プラットフォーム」として利用する考え方が広がっている。
投資の観点から見ると、ネット銀行を運営する上場企業にも注目できる。銀行本体が上場している代表例としては楽天銀行があり、ネット銀行というビジネスモデルそのものの成長性を考える材料になる。一方、SBI新生銀行はデジタル金融を強化する銀行として位置付けられ、ネット銀行とは異なるビジネスモデルを持つ。両社を比較する場合も、「ネット銀行だから同じ」と考えるのではなく、収益構造や顧客基盤、金融グループとの連携などを見る必要がある。
ネット銀行は、店舗を減らしてデジタルに置き換えただけの銀行ではない。銀行、証券、クレジットカード、決済、ポイントなどをオンライン上で結びつけ、利用者の金融行動そのものを効率化する存在へと変化している。その一方で、手数料無料の条件や金利優遇、ATM利用条件などは銀行ごとに異なるため、数字を比較せずに選ぶとメリットを十分に享受できない可能性がある。
ネット銀行を選ぶ際には、①普通預金・定期預金の金利、②ATM手数料、③振込手数料、④無料回数の条件、⑤スマートフォンアプリの使いやすさ、⑥セキュリティー、⑦証券・カード・決済サービスとの連携、⑧問い合わせや相談の方法、という複数の項目を確認したい。
ネット銀行の最大の魅力は、銀行を「いつでも、どこでも使える」サービスに変えたことだ。一方で、その便利さを支えているのはデジタル環境であり、そこにはセキュリティーやシステム障害という別のリスクも存在する。店舗型銀行とネット銀行は単純な優劣ではなく、それぞれの特徴を理解したうえで使い分けることが重要だ。今後、キャッシュレス化やオンライン金融サービスがさらに進めば、ネット銀行は単なる預金口座ではなく、個人のお金の管理や資産運用をまとめる「金融プラットフォーム」としての役割を一段と強めていきそうだ。
セブン銀行、ATMから金融プラットフォームへ――身近な銀行の現在地と成長戦略
コンビニエンスストアのATMと聞いて、多くの人が思い浮かべるのがセブン銀行だろう。セブン-イレブンを中心に全国へ広がるATMは、現金の引き出しや預け入れだけでなく、キャッシュレス決済へのチャージ、各種金融サービス、本人確認など、日常生活のさまざまな場面で利用されている。セブン銀行は、一般的な銀行とは異なり、店舗で預金を集めて融資を行うことを中心としたビジネスモデルではなく、ATMを社会インフラとして提供することで収益を生み出してきた点が特徴だ。
セブン銀行は2001年にアイワイバンク銀行として設立され、2005年に現在の社名へ変更。2008年には東京証券取引所に上場した。現在も証券コード8410で上場している。
最大の特徴は、圧倒的なATMネットワークである。2025年度末時点で国内ATMは28,536台、年間総利用件数は11億2,200万件に達し、利用件数は過去最多となった。提携金融機関等は696先に達しており、単純に「セブン銀行の口座を持っている人が使うATM」ではなく、多数の金融機関の利用者がアクセスする共通インフラとして機能している。
ここにセブン銀行のビジネスモデルの面白さがある。利用者から見ると、コンビニに設置されたATMは便利な設備の一つに見える。しかしセブン銀行にとっては、全国に張り巡らされたATMそのものが収益を生み出すプラットフォームだ。提携金融機関のキャッシュカードによる取引などを通じて手数料収入を得るほか、近年はATMを単なる現金の出し入れの装置から、さまざまなサービスを提供する「金融の窓口」へと進化させようとしている。
その象徴が「+Connect(プラスコネクト)」だ。2023年に始まったこのサービスは、金融機関や事業会社などがセブン銀行ATMを利用して顧客との接点を構築できる仕組みで、2026年3月時点で51社に採用されている。ATMを使って口座開設や各種手続き、本人確認などを行うことで、従来は銀行窓口やスマートフォンなどで行っていた手続きを、身近なATMへ広げることを狙っている。
これは「ATM=現金」という従来のイメージを変える動きでもある。キャッシュレス化が進めば、現金を引き出す回数が減る可能性がある。一般的に考えれば、キャッシュレス化はATM事業にとって逆風にもなり得る。しかしセブン銀行は、ATMを現金取引だけの装置にせず、電子マネーやコード決済へのチャージ、本人確認、各種手続きなどにも活用することで、新しい需要を取り込もうとしている。
実際、セブン銀行のATMでは各種コード決済への現金チャージなどにも対応している。会社側も、キャッシュレス化が進むなかでATMを「リアルとバーチャルの貴重な接点」と位置付けている。
また、ATMを活用した法人向け事業も成長分野だ。セブン銀行では、企業からの送金をATMで受け取れる「ATM受取」、企業の集金をATMで行うサービス、銀行事務や不正検知、オンライン本人認証など、金融機関や事業会社向けのサービスを展開している。個人がATMを使うという従来型の発想から、企業や自治体などもATMプラットフォームを利用するビジネスへと領域を広げている。
さらに注目されるのが、ファミリーマートへのATM設置だ。2026年6月から全国のファミリーマートへの設置が順次始まっており、4年間で約16,000台を導入する予定だ。既存の28,000台超と合わせると、国内ATMプラットフォームは将来的に約44,000台規模へ拡大する計画となっている。
この動きは、セブン銀行の成長戦略を考えるうえで重要だ。これまでセブン銀行のATMネットワークはセブン-イレブンとの強い結び付きが最大の特徴だった。しかしファミリーマートへの展開によって、コンビニ業界全体におけるATMインフラとしての存在感を高める可能性がある。ATMの台数が増えれば、利用者にとっての利便性が高まるだけでなく、金融機関や企業にとってもサービスを提供するプラットフォームとしての価値が高まる。
一方、課題もある。セブン銀行自身も、リテール事業や海外事業の収益拡大には時間を要していると説明している。特に「金利ある世界」の到来によって銀行間の預金獲得競争が激しくなり、口座獲得では期待した成果に届かなかったとしている。クレジットカード事業についても競争環境は厳しく、ATM事業以外の収益源をどこまで育てられるかが今後のポイントになる。
海外展開も成長戦略の一つだ。セブン銀行は米国、インドネシア、フィリピン、マレーシアの4カ国でATMサービスを展開している。2025年度には4カ国すべてで黒字を確保したと会社側は説明しており、国内ATMで培った運営ノウハウを海外へ展開している。
特に興味深いのは、海外でも「ATMのその先」を目指している点だ。セブン銀行は「Beyond ATM(ATMのその先に)」という成長戦略を掲げ、ATMと小売を組み合わせた金融サービスへの発展を目指している。単にATM台数を増やすのではなく、ATM利用者のデータや小売サービスとの接点を活用し、新たな金融サービスにつなげる構想だ。
2026年5月に発表した2026~2028年度の3カ年見通しでは、2028年度に連結経常収益2,800億円、経常利益400億円、ROE8%以上を目標としている。収益の柱である国内ATM事業では、「+Connect」の拡大などを通じて金融機関だけでなく、行政や事業法人にも顧客基盤を広げる方針だ。
投資対象としてセブン銀行を見る場合、一般的な銀行株とは少し違った視点が必要になる。銀行預金を集めて融資し、金利差で利益を得る伝統的な銀行とはビジネスモデルが異なり、ATM利用件数、設置台数、提携先、手数料収入、法人向けサービス、海外事業などが重要なポイントになるからだ。
もちろん、キャッシュレス化によって現金取引が減少することは、中長期的なリスクの一つといえる。しかしセブン銀行は、その変化を単純な逆風として受け止めるのではなく、ATMを決済、本人確認、行政手続き、企業サービスなどの接点へ広げようとしている。ATMの利用件数が過去最多となっていることも、現時点では「現金離れ=ATM需要の消滅」という単純な構図ではないことを示している。
セブン銀行の現在地を一言で表すなら、「ATMを運営する銀行」から「ATMを核とした金融プラットフォーム」への転換期にある企業といえるだろう。セブン-イレブンという強力な生活インフラとの接点に加え、ファミリーマートへの展開、+Connect、法人向けサービス、海外事業などを組み合わせることで、ATMそのものの価値を高めようとしている。今後の焦点は、国内で拡大するATMネットワークをどこまで新たな収益につなげられるか、そして「Beyond ATM」という構想をどこまで具体的な金融サービスへ育てられるかにある。
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楽天銀行、口座数1800万突破!ネット銀行の成長をけん引する金融プラットフォーム
スマートフォンを使って銀行口座を開設し、残高確認や振込までオンラインで完結する――。こうした「ネット銀行」の利用が定着するなか、その代表格として存在感を高めているのが楽天銀行だ。2001年にデジタルバンクとして開業した同社は、店舗網を持たない強みを生かしながら、楽天グループのサービスと銀行機能を組み合わせ、顧客基盤を拡大してきた。2026年3月には、インターネット銀行として初めて預金口座数が1,800万口座を突破。さらに2026年8月末には1,869万4,000口座、預金残高13兆7,276億円まで拡大している。
楽天銀行の最大の特徴は、単なる「ネット上の銀行」にとどまらず、楽天グループの巨大な経済圏と一体になっていることだ。楽天市場、楽天カード、楽天証券、楽天ペイなど、日常生活のさまざまな場面で利用されるサービスと銀行口座を組み合わせることで、利用者が銀行を使う機会そのものを増やしている。
従来の銀行では、給与を受け取る、預金する、ATMから現金を引き出す、住宅ローンを利用する、といった銀行単体の取引が中心だった。楽天銀行はそこから一歩進み、ネットショッピング、クレジットカード、証券投資、スマートフォン決済などを一つの経済圏のなかでつなぐ。銀行口座を楽天経済圏への入口として機能させることで、顧客との接点を増やしている。
その成果が、1,800万口座という数字にも表れている。楽天銀行によれば、2026年3月末の口座数は1,807万7,000口座。2025年3月末の1,683万3,000口座から1年間で約124万口座増加した。預金残高も2025年3月末の11兆4,763億円から2026年3月末には12兆9,644億円へ増加している。さらに2026年8月末には13兆7,276億円となっており、口座数だけでなく預金基盤も拡大している。
ここで重要なのが、「口座数の多さ」だけではない。楽天銀行は、口座を日常的に利用するメイン口座へと育てることを重視している。2026年3月末時点では、給与・賞与の受け取りや口座振替に利用されているメイン口座が約650万口座に達している。単にキャンペーンなどをきっかけに口座を開設してもらうだけでなく、生活の中心となる銀行口座として定着させることが、安定した預金基盤や取引収益につながる。
楽天証券との連携も楽天銀行を語るうえで欠かせない。代表的なサービスが「マネーブリッジ」だ。楽天銀行と楽天証券の口座を連携させることで、銀行と証券の資金移動を効率化できる。2026年3月時点でマネーブリッジの取扱口座数は650万口座に達し、前年同月比14%増となっている。銀行を預金だけに使うのではなく、投資資金の管理にも利用してもらうことで、金融サービス全体の利用頻度を高める戦略だ。
楽天ペイとの連携も今後の重要なポイントになる。キャッシュレス決済が広がるなか、銀行口座、決済、カード、証券を一体的に利用できる環境を整えることで、顧客との接点を日常生活の中に増やせる。楽天銀行自身も、楽天ペイとの連携深化によって個人口座のメイン口座化や顧客の利用頻度向上を目指している。
一方、楽天銀行は個人向けサービスだけを成長の柱としているわけではない。法人や個人事業主向けのサービスも拡大している。ネット銀行ならではのデータやテクノロジーを活用し、預金、融資、為替などのサービスをオンラインで提供することで、中小企業や個人事業主などの金融ニーズを取り込むことを目指している。個人顧客だけに依存しない収益構造を構築できるかは、今後の成長を考えるうえで重要なポイントだ。
また、楽天銀行は住宅ローンやカードローン、外貨預金など、銀行としての基本的な金融商品も幅広く提供している。ネット銀行は店舗運営コストを抑えやすいことから、オンラインを活用した低コスト運営が強みとなる。楽天銀行もテクノロジーを活用したサービスと効率的なオペレーションを成長戦略の柱として掲げている。
もちろん、課題もある。ネット銀行市場では、PayPay銀行、auじぶん銀行、ソニー銀行、住信SBIネット銀行など、多くの金融機関がサービスを展開している。メガバンクや地方銀行もデジタル化を進めており、スマートフォンを中心とした銀行サービスの競争は激しくなっている。
さらに、金利環境の変化も銀行経営に影響する。金利がある世界では、預金を集めることが単純なメリットになるとは限らず、預金金利や貸出金利の動向によって収益構造も変化する。顧客に魅力的な金利を提示しながら、貸出や運用、手数料などでどのように収益を確保するかが重要になる。
ネット銀行ならではのシステムリスクやサイバーセキュリティーへの対応も不可欠だ。店舗型銀行と比較すると、顧客との接点がスマートフォンやウェブサイトに集中するため、システムの安定稼働や不正アクセスへの対策が事業の信頼性を左右する。楽天銀行も中長期戦略のなかで、事業規模の拡大に合わせてコンプライアンス、リスク管理、システムの安定性などを強化する必要性を掲げている。
投資対象として見た場合、楽天銀行には「ネット銀行」という成長テーマと、「楽天経済圏」という独自の顧客基盤という二つの側面がある。銀行単体の預金や融資だけを見るのではなく、楽天カード、楽天証券、楽天ペイなどとの連携によって、一人の顧客からどれだけ多くの取引機会を生み出せるかを見ることが重要になる。
同社が目指しているのは、単純に口座数を増やすことだけではない。中長期ビジョンでは、顧客基盤の拡充、収益力の強化、FinTech領域の成長取り込みを三つの柱として掲げている。銀行口座を起点として決済や証券などのサービスを組み合わせ、顧客との接点を増やすことで、金融サービス全体の利用を拡大する考え方だ。
2026年は楽天銀行にとって開業25周年という節目でもある。1,800万口座を突破した現在、次の焦点は「口座数の拡大」から「一つ一つの口座をどれだけ活発に使ってもらえるか」へ移りつつある。預金、決済、カード、証券、ローンなどを組み合わせれば、銀行口座は単なるお金の保管場所ではなく、金融サービス全体への入口になる。
ネット銀行業界では、銀行そのものの機能だけを比較する時代から、どの経済圏とつながっているのか、どれだけ生活に入り込んでいるのかを比較する時代へと変化している。楽天銀行はその代表例の一つだ。1,800万を超える口座基盤と13兆円を超える預金を持つまでに成長した同社が、今後どこまで楽天グループの金融サービスを結び付け、顧客一人当たりの取引を拡大できるか。ネット銀行から総合的なデジタル金融プラットフォームへ進化できるかが、今後の成長を左右するポイントになりそうだ。
SBI新生銀行、デジタル金融で再成長へ――SBIグループとの連携が生む新たな銀行像
銀行業界のデジタル化が進むなか、独自のポジションを築こうとしているのがSBI新生銀行だ。旧・新生銀行を前身とする同行は、2021年にSBIグループ入りし、2023年には非上場化。その後、SBIグループとの連携を深めながら事業基盤を再構築し、2025年12月には東京証券取引所プライム市場へ再上場を果たした。かつての「新生銀行」から、SBIグループの総合金融戦略を担う銀行へと大きく姿を変えている。
SBI新生銀行の大きな特徴は、いわゆるネット専業銀行とは異なることだ。楽天銀行やPayPay銀行のようにインターネットを中心に銀行サービスを提供する一方、SBI新生銀行は従来型の銀行として培ってきた法人・個人向け金融サービスを持ち、その上にデジタル技術やSBIグループの顧客基盤を組み合わせている。つまり「ネット銀行」というよりも、「伝統的な銀行機能をデジタル化し、SBIグループの金融サービスと融合させている銀行」と捉えると、その特徴が分かりやすい。
SBI新生銀行は2023年9月にいったん東証で上場廃止となったが、2025年12月17日にプライム市場へ再上場した。東京証券取引所の資料でも、証券コード8303としてプライム市場に上場していることが確認できる。再上場は単なる株式市場への復帰ではなく、SBIグループの傘下で事業基盤を再構築したうえで、成長戦略を新たな段階へ進める節目ともいえる。
SBI新生銀行を理解するうえで欠かせないのが、SBIグループとの関係だ。SBIグループは証券、銀行、保険、投資など幅広い金融事業を展開しており、SBI新生銀行はその銀行機能を担う重要な存在となっている。SBI証券などとの連携を通じて、銀行口座を単独で利用してもらうのではなく、証券・投資サービスと組み合わせて金融取引全体を取り込むことが成長のポイントになる。
ネット銀行との比較でも、この違いは重要だ。楽天銀行の場合は楽天市場や楽天カード、楽天証券などとの「楽天経済圏」が強みとなっている。PayPay銀行ならPayPayを中心とした決済サービスとの連携が特徴だ。それに対してSBI新生銀行は、SBI証券をはじめとするSBIグループの金融サービスとの連携が大きな武器になる。銀行を起点に証券や投資へ顧客を誘導するだけでなく、証券を利用する顧客に銀行サービスを利用してもらうという相互送客も期待できる。
こうした戦略を支えるのが、銀行としての幅広い商品群だ。個人向けでは普通預金や定期預金、住宅ローン、カードローン、外貨預金などを展開し、法人向けでは融資や資金調達、決済、金融市場関連サービスなどを提供している。ネット専業銀行と比較すると、事業領域が広く、銀行本来の金融機能をベースにしている点が特徴となる。
また、SBI新生銀行にとって大きな環境変化となっているのが、日本の「金利ある世界」だ。長く続いた低金利環境から転換し、預金金利や貸出金利が動くようになれば、銀行にとっては収益機会が変化する。一般的には貸出金利の上昇によって利ざやの改善が期待される一方、預金金利の引き上げ競争が激しくなれば調達コストも増える。銀行にとって金利上昇は単純な追い風ではなく、資産と負債をどのように管理するかがより重要になる局面でもある。
SBI新生銀行の2026年3月期決算では、連結の税金等調整前利益は1,221億円となった。2027年3月期については1,320億円を予想しており、中期経営計画では税金等調整前利益を経営成果や収益性を測る主要な財務指標としている。さらに2026年3月期の配当は1株当たり42円、2027年3月期も42円を予想している。
銀行の収益力を考える際には、預金残高や貸出金だけでなく、手数料収入などの非金利収益にも注目したい。金利環境が変化すると、銀行の利益は市場金利の影響を受けやすくなる。そのため、決済、資産運用、法人金融、カードなど複数の収益源を持つことが、安定性を高める要素になる。
SBIグループとの連携では、個人の資産形成も重要なテーマになる。新NISAの普及などによって投資への関心が高まるなか、銀行と証券の境界は以前より曖昧になっている。給与を銀行で受け取り、余剰資金を証券口座へ移し、投資信託や株式などを購入するという流れを一つの金融グループ内で完結できれば、顧客との接点を長期的に維持しやすい。
一方で、競争環境は厳しい。楽天銀行、住信SBIネット銀行の後継となるドコモSMTBネット銀行、PayPay銀行、auじぶん銀行、ソニー銀行など、ネットを中心とした金融サービスは多数存在する。さらにメガバンクや地方銀行もアプリやオンラインサービスを強化しており、「スマートフォンで銀行を使える」こと自体は差別化要因になりにくくなっている。
そのため、SBI新生銀行にとっては、単純なデジタル化ではなく「SBIグループだからこそ利用したい」と思われる金融サービスをどこまで作れるかが重要になる。SBI証券などとの連携に加え、法人金融や資産運用、住宅ローンなど既存事業との組み合わせによって、総合的な金融プラットフォームとしての価値を高めることが求められる。
また、再上場に伴う株主構成も注目点だ。SBI新生銀行はプライム市場への再上場時点で、流通株式比率が同市場の基準を下回る見込みとなり、2031年3月末を目途に基準への適合を目指す計画を公表している。東京証券取引所の資料では、上場時点の流通株式比率は24.79%とされ、プライム市場の基準である35%への対応が課題となっている。
投資対象として見る場合、SBI新生銀行には「ネット銀行」というテーマだけでは捉えきれない魅力がある。SBIグループの金融サービスをつなぐ銀行機能に加え、金利環境の変化による銀行収益の変化、法人金融や個人向け金融の拡大、デジタル化による業務効率化など、複数の要素を考える必要がある。
特に今後は、SBI証券などグループ各社とのクロスセルがどこまで進むのかが重要だろう。銀行口座を持つ顧客が証券を利用し、証券顧客が銀行を利用するという循環が強まれば、SBIグループ全体の金融サービスを利用する顧客が増える可能性がある。一方で、ネット銀行各社との預金獲得競争や、金利上昇に伴う調達コストの増加などは継続的に見ていく必要がある。
SBI新生銀行は、かつての新生銀行から大きく姿を変えた。現在は、長年培ってきた銀行としての基盤にSBIグループの証券・投資・金融サービスを組み合わせ、デジタル時代に対応した総合金融機関への転換を進めている。2025年の再上場を経て、今後の焦点は「SBIグループ入りによって何が変わったのか」を、顧客基盤や収益力という具体的な数字でどこまで示せるかに移る。ネット銀行が急速に成長するなか、SBI新生銀行が伝統的な銀行とデジタル金融をどのように融合させていくのか。その動向は、日本の銀行業界の変化を考えるうえでも注目される存在といえるだろう。
ネット銀行の進化と3社の違い
ネット銀行の競争は、単に「手数料が安い」「金利が高い」という比較だけでは捉えにくくなっている。銀行口座を起点に、証券、カード、決済、ポイントなどをどれだけ結び付けられるかが重要になっているからだ。
楽天銀行は楽天グループのサービスとの連携、SBI新生銀行はSBI証券を中心とする資産運用との連携、セブン銀行はATMを軸としたリアルな生活インフラとの接点という違いがある。SBI新生銀行では2026年からスマホATMも開始し、キャッシュカードなしでセブン銀行ATMやローソン銀行ATMを利用できるようにするなど、従来型の銀行機能もデジタル化している。
ネット銀行は「店舗がない銀行」から、スマートフォンやATM、証券、決済サービスなどをつなぐ「金融プラットフォーム」へと役割を広げている。便利さや手数料面で魅力がある一方、サービス条件やセキュリティーを自分で確認する必要もある。3社を比較すると、ネット銀行には一つの正解があるのではなく、自分が何を重視するかによって選ぶポイントが変わることが分かる。今後はキャッシュレス化や資産形成の普及が進むなかで、銀行口座そのものよりも、その口座を通じてどれだけ多くの金融サービスを便利につなげられるかが、ネット銀行の競争力を左右することになりそうだ。




