
SNS時代に存在感を高めるインフルエンサーマーケティング企業
Instagram、TikTok、YouTubeなどのSNSが消費者の購買行動に大きな影響を与えるようになり、企業のマーケティング手法も大きく変化しています。なかでも注目されているのが、SNS上で影響力を持つインフルエンサーやクリエイターを活用する「インフルエンサーマーケティング」です。従来のテレビCMや広告とは異なり、特定の趣味やライフスタイルを持つコミュニティに直接アプローチできることが特徴です。
こうした市場で事業を展開する上場企業として、今回はトリドリ、AnyMind Group、サイバー・バズの3社を取り上げます。企業とインフルエンサーのマッチングを軸にするトリドリ、アジア市場を中心にマーケティングからEC・物流まで幅広く展開するAnyMind Group、SNS運用や広告、ショート動画などへ事業領域を広げるサイバー・バズ。それぞれ異なるアプローチで、SNS時代の企業マーケティングを支えています。
| 会社名 | 証券コード | 上場 | 主な事業 |
|---|---|---|---|
| 株式会社トリドリ | 9337 | 東証グロース | インフルエンサーマーケティング、PR、成果報酬型広告 |
| AnyMind Group | 5027 | 東証グロース | インフルエンサーマーケティング、デジタルマーケティング、EC・D2C支援 |
| サイバー・バズ | 7069 | 東証グロース | インフルエンサーマーケティング、SNS運用、SNS広告 |
| THECOO | 4255 | 東証グロース | インフルエンサーマーケティング、SNS広告、インフルエンサー支援 |
インフルエンサーマーケティングは、SNSの普及とともに企業の販売戦略に組み込まれるようになったマーケティング手法です。ここでは、従来の芸能プロダクションとの違いを整理しながら、2026年の最新動向まで含めて解説します。
インフルエンサーマーケティングってなに? 従来の芸能プロダクションとの違いは?
Instagram、YouTube、TikTokなどのSNSが生活の一部になった現在、企業の広告・宣伝手法も大きく変化しています。その代表例が「インフルエンサーマーケティング」です。テレビCMや新聞広告などのマスメディアを使って一度に大量の消費者へ情報を届けるのではなく、SNS上で一定の影響力を持つインフルエンサーを通じて、特定の興味や関心を持つ人々に商品やサービスを紹介する手法です。
消費者庁の資料では、インフルエンサーマーケティングは口コミマーケティングの一種として位置づけられています。企業などから依頼を受けた投稿者がSNSなどで商品やサービスを紹介することで、企業から直接発信する広告とは異なる形で情報を届けられることが特徴です。
例えば、化粧品会社が美容系インフルエンサーに新商品を提供し、実際に使用した感想や使い方をInstagramやTikTokで紹介してもらうケースがあります。旅行会社なら旅行系クリエイター、飲食店ならグルメ系インフルエンサー、ゲーム会社ならゲーム実況者というように、商品と親和性の高い人物を起用できる点が大きな特徴です。
従来型の広告との大きな違いは、「誰に届けるか」を細かく設計できることです。フォロワー数が数十万人、数百万人いる著名インフルエンサーだけでなく、数千人から数万人程度のフォロワーを持つ「マイクロインフルエンサー」も活用されています。特定の地域、趣味、年代、ライフスタイルなどに強いコミュニティを持つ人物を起用することで、広告を必要としている層に絞って情報を届けられます。
この仕組みは、従来の芸能プロダクションとはビジネスモデルにも違いがあります。芸能プロダクションは、俳優、タレント、モデル、歌手などを所属タレントとしてマネジメントし、テレビ、映画、舞台、イベント、雑誌、CMなど幅広い仕事を獲得する役割を担ってきました。タレントのスケジュール管理、出演交渉、育成、ブランディングなども重要な業務です。
一方、インフルエンサーマーケティングでは、必ずしも芸能事務所に所属する必要はありません。個人でSNSアカウントを運営し、一定のフォロワーやコミュニティを形成した人が企業案件を受けるケースも多くあります。インフルエンサー自身が企画や撮影、編集、投稿まで行うことも珍しくありません。
つまり、従来の芸能ビジネスでは「タレントをマネジメントして仕事につなげる」という考え方が中心だったのに対し、インフルエンサーマーケティングでは「SNS上に存在するコミュニティと企業をつなぐ」という側面が強いといえます。ただし現在では両者の境界は徐々に曖昧になっています。インフルエンサーが芸能活動を始めたり、芸能人がSNSで巨大なフォロワー基盤を築いたりするケースもあり、両方の領域をまたいで活動する人物も増えています。
そして2026年のインフルエンサーマーケティングでは、単純に「フォロワーが多い人を起用する」という考え方から変化が進んでいます。2026年に公表されたマーケティング担当者1,221人を対象とする調査では、インフルエンサー選定においてフォロワー数だけではなく、エンゲージメント率、フォロワーとの距離感、クリエイティブ力などを重視する傾向が示されています。また、施策の目的も認知拡大だけではなく、Webサイトへの流入、新規顧客の獲得、継続率向上など、事業への直接的な貢献を意識する方向へ変化しています。
媒体にも変化があります。従来はInstagramやXなどのSNSを使った写真・テキスト中心の投稿が目立ちましたが、現在はYouTubeやTikTokなど動画プラットフォームの重要性が高まっています。短尺動画を大量に制作したり、実際の生活者が投稿したような「UGC風」のコンテンツを活用したりする手法も増えています。
さらに注目されているのが、インフルエンサーを単発で起用するのではなく、長期的な関係を構築するマーケティングです。同調査では、長期契約やアンバサダー契約を重視する企業が増えており、固定報酬だけでなく成果報酬を組み合わせる方式への関心も高まっています。単発の「広告投稿」から、継続的にブランドを紹介する「ブランドパートナー」へと役割が変わりつつあるといえるでしょう。
この流れを象徴する企業の一つが、東証グロース市場に上場する株式会社トリドリです。トリドリは企業とインフルエンサーをつなぐプラットフォームを展開しており、「toridori marketing」では企業が募集ページを作成し、参加したいインフルエンサーとマッチングする仕組みを提供しています。2026年3月末時点で登録インフルエンサーは9万人超、案件実施数は110万件超と同社は公表しています。
トリドリのサービスからも、インフルエンサーマーケティングが「芸能人を起用した広告」だけではないことが分かります。同社はマイクロインフルエンサーを活用し、地域や年齢など商品に適した条件からインフルエンサーを選定できる仕組みを提供しています。企業側が一人ひとりと個別に交渉する負担を減らし、多数のインフルエンサーを活用できるプラットフォーム型のビジネスモデルです。
さらにトリドリは2025年からTikTok Shopを中心とするSNSコマースへの参入を表明しています。インフルエンサーの発信によって商品を認知してもらうだけでなく、そのまま購買につなげる「SNS×EC」の領域へ事業を広げる動きです。
2026年2月にはAIを活用したインフルエンサー広告サービス「Vooster」も開始しました。従来は担当者の経験や知識に依存しやすかったインフルエンサー選定などをAIで支援し、エンゲージメントに応じて報酬を決める仕組みを取り入れています。インフルエンサーマーケティングも、単なるキャスティング業務から、データやAIを活用して成果を追求する広告サービスへ進化していることが分かります。
もちろん、課題もあります。2026年の調査では、インフルエンサーマーケティングの課題として「効果測定が難しい」が最も多く挙げられました。さらにKPIの設定、計測環境、インフルエンサーとのコミュニケーション、コンプライアンス、ブランド毀損や炎上リスクなども課題となっています。
特に重要なのがステルスマーケティングへの対応です。企業から依頼を受けて投稿する場合、広告であることを消費者に分からない形で発信すると、景品表示法上の問題となる可能性があります。そのため、企業とインフルエンサーの双方が広告・PRであることを適切に表示することが重要です。トリドリも自社サービスにおいてPR投稿である旨を記載する仕組みを設けています。
今後のインフルエンサーマーケティングでは、「フォロワー数が多いか」だけでなく、「どのような人がフォローしているのか」「どれだけ反応しているのか」「実際の購買や来店につながっているのか」といった質的な評価がより重要になりそうです。
そして、芸能プロダクションとの境界もさらに変化していくと考えられます。芸能人がインフルエンサーとして活動し、インフルエンサーがタレントやブランドを立ち上げるなど、両者を明確に分けることが難しくなっているからです。
インフルエンサーマーケティングは、単にSNS上で商品を紹介してもらう広告手法ではありません。企業、クリエイター、SNSコミュニティ、ECをつなぎ、認知から購買までを一つの流れにするビジネスへと進化しています。特にTikTokやYouTubeなどの動画プラットフォーム、AIによるインフルエンサー選定、成果報酬型広告、SNSコマースの発展によって、その役割は今後さらに広がっていく可能性があります。
株式会社トリドリ――インフルエンサー市場を「広告」から「購買」へ広げる成長企業
SNSの普及によって、企業のマーケティング手法は大きく変化しています。Instagram、YouTube、TikTokなどで発信するインフルエンサーが消費者の購買行動に影響を与えるようになり、「インフルエンサーマーケティング」は企業にとって重要な広告手段の一つとなりました。こうした市場で存在感を高めているのが、東証グロース市場に上場する株式会社トリドリ(証券コード:9337)です。
トリドリは「『個の時代』の、担い手に。」を掲げ、企業とインフルエンサーをつなぐ「インフルエンス・プラットフォーマー」として事業を展開しています。単純な広告代理店ではなく、インフルエンサーのネットワークとプラットフォームを活用し、企業のPRから販売までを支援する点が特徴です。
同社の中核サービスの一つが「toridori marketing」です。企業がSNSで商品やサービスをPRしたい場合、プラットフォーム上で案件を募集し、登録しているインフルエンサーが応募する仕組みを採用しています。企業とインフルエンサーが個別に交渉する手間を減らし、比較的低コストでインフルエンサーマーケティングを利用できる環境を提供しています。
ここで重要なのが、フォロワー数の多い著名人だけを対象としているわけではないことです。数千人から数万人程度のフォロワーを持つマイクロインフルエンサーなども活用することで、地域、年齢、趣味、美容、グルメなど、それぞれのコミュニティに合わせたPRが可能になります。企業にとっては、テレビCMなどで幅広い層に広告を届ける方法とは異なり、自社の商品と親和性の高い消費者へ情報を届けやすいというメリットがあります。
トリドリはインフルエンサー側のプラットフォーム「toridori base」も展開しています。企業だけでなく、インフルエンサー側の活動も支援することで、企業とクリエイターの双方をネットワークに取り込む構造を構築しています。同社は2024年時点で、toridori marketingに登録するインフルエンサーが約6万4000人、PR実績が65万件を超えていたと公表しており、その後も実績を積み上げています。
さらに同社は、インフルエンサーマーケティングを広告だけで終わらせない事業展開を進めています。成果報酬型広告の「toridori ad」、Instagramアカウント運用代行の「toridori likes」、YouTubeコンサルティングの「toridori studio」、ブランド立ち上げを支援する「toridori made」など、SNSを中心とした複数のサービスを展開しています。
この事業領域の拡大を考えるうえで注目したいのが、SNSコマースへの進出です。トリドリは2025年、TikTok Shopを中心としたSNSコマース市場への本格参入を発表しました。インフルエンサーのネットワーク、広告、EC支援機能を組み合わせ、商品の認知から販売促進、効果分析までを一気通貫で支援する体制を目指しています。
これは同社のビジネスモデルを考えるうえで大きなポイントです。これまでインフルエンサーマーケティングは、「SNSで商品を紹介してもらい、認知度を高める」という広告的な側面が強いものでした。しかしSNS上で商品を直接購入できる環境が整えば、「紹介→興味→購入」という消費者行動をSNS内で完結させることも可能になります。
実際、トリドリグループでは2026年3月、ヘアケアブランド「yoin」をTikTok Shopで先行販売し、完売したと発表しました。その後、全国のロフトでも販売を開始しています。インフルエンサーの影響力を活用した商品開発・販売という、広告会社とは異なる領域へ進んでいることが分かります。
2026年には、さらにAIを活用した新サービス「Vooster(ブースター)」も開始しました。2026年2月に提供を始めたこのサービスでは、企業が商品やブランド、PR施策などを入力すると、AIが適したインフルエンサーを選定し、オファーまで自動化します。さらに、フォロワー数だけではなく「予測エンゲージメント」に基づいて報酬を決める仕組みを採用しています。
インフルエンサーの選定は、従来、人間の経験や勘に頼る部分が少なくありませんでした。商品のターゲット、過去の投稿内容、フォロワー属性、エンゲージメントなどを確認しながら、企業と相性の良い人物を探す必要があります。AIによってこの作業を効率化できれば、案件の増加に対応しやすくなるだけでなく、企業側にとってもインフルエンサー選定の負担軽減につながります。
同社が蓄積してきたPR実績をデータとして活用できることも重要です。トリドリは2026年2月のVooster発表時点でPR実績100万件超としており、これまでの施策データをAIによるレコメンドに活用するとしています。施策を実施するほどデータが蓄積され、マッチングの精度向上につながる構造を目指している点は、プラットフォーム型ビジネスとして注目されます。
また、2026年7月にはグループ会社GIVINがblendsを吸収合併しました。GIVINはインフルエンサーのブランド立ち上げや商品販売、自社D2Cブランドを展開しており、blendsはECにおける市場調査、商品企画、モール運用、広告運用などを手掛けていました。両社を統合することで、商品企画からブランド構築、EC販売までを一気通貫で支援する体制を強化しています。
こうした動きを見ると、トリドリは「インフルエンサーを企業の広告に起用する会社」から、「インフルエンサーを起点として商品・ブランド・ECまでをつなぐ会社」へと事業領域を広げようとしていることが分かります。
一方で、今後の成長を考えるうえでは課題もあります。インフルエンサーマーケティングは競争が激しい市場であり、SNSプラットフォームの仕様変更や流行の変化にも影響されます。また、インフルエンサーの投稿内容や広告表示をめぐるコンプライアンス対応も重要です。企業案件であることを適切に表示しなければ、ステルスマーケティングなどの問題につながる可能性があります。
さらに、インフルエンサーマーケティングの効果測定も課題です。フォロワー数や「いいね」の数だけで広告効果を判断することは難しく、実際の購入、来店、問い合わせなどにつながったかどうかを測定する必要があります。トリドリがAIや成果報酬型広告、SNSコマースへ力を入れている背景には、こうした広告効果をより具体的な成果に結び付けたいという狙いもあると考えられます。
トリドリにとって今後のポイントとなるのは、これまで蓄積してきたインフルエンサーのネットワークとPR実績を、どこまで広告、AI、EC、D2Cなどの新しい収益領域へ展開できるかです。特にSNS上で商品を知り、そのまま購入する消費行動が広がれば、企業にとってSNSは「広告を出す場所」から「商品を売る場所」へ変化します。
インフルエンサー市場の成長に加え、SNSコマース、AIマーケティング、D2Cといった複数のテーマを持つことが、現在のトリドリを理解するうえで重要です。東証グロース市場に上場する同社は、SNS時代の「個人の影響力」を企業のマーケティングや商品販売につなげるプラットフォーム企業として、事業領域を広げています。今後はインフルエンサーの数だけではなく、蓄積したデータを活用したマッチング精度、広告からECまでの収益化、そしてグループ全体の事業効率をどこまで高められるかが、企業価値を考えるうえで重要なポイントになりそうです。
≫ 無料講座:お金のプロが教える「初心者が毎月収入を得る投資の始め方」
AnyMind Group――インフルエンサーからECまで、アジア市場を狙うデジタル成長企業
SNSやECの普及によって、企業のマーケティングや商品の販売方法は大きく変化しています。特にInstagram、TikTok、YouTubeなどを活用したインフルエンサーマーケティングは、若年層を中心とした消費者への情報発信手段として存在感を高めています。こうした市場で事業を展開しているのが、東証グロース市場に上場するAnyMind Group(証券コード:5027)です。
AnyMind Groupは2016年にシンガポールで創業した企業で、現在はアジアを中心に15カ国・地域で事業を展開しています。同社の特徴は、単なるデジタル広告会社ではないことです。インフルエンサーマーケティング、デジタルマーケティング、ECサイト構築、D2C、物流、ライブコマースなどを幅広く手掛け、企業の商品・ブランドを「作る」「宣伝する」「販売する」「届ける」まで一気通貫で支援するビジネスモデルを構築しています。
同社が掲げるのが「BPaaS(Business Process as a Service)」という考え方です。テクノロジーだけを提供するのではなく、ソフトウエアと実際の業務オペレーションを組み合わせ、企業の事業成長そのものを支援します。例えば、企業が新しい商品を販売する場合、ECサイトを構築するだけでなく、マーケティング、インフルエンサーの起用、販売管理、物流までをまとめて支援できることが強みです。
インフルエンサーマーケティングでは「AnyTag」というプラットフォームを展開しています。2025年12月末時点で世界310万人以上のインフルエンサーデータを活用し、企業のキャンペーンに適したインフルエンサーを提案しています。データ追跡や分析機能を備えているほか、生成AIを活用した投稿画像の生成や、キャンペーン内容に応じた候補者のレコメンドなども進めています。
この点は、前述のトリドリと比較するうえでも興味深い部分です。トリドリがインフルエンサーと企業のマッチングを中心に事業を拡大しているのに対して、AnyMind Groupはインフルエンサー施策をマーケティング、EC、物流などの幅広いサービスにつなげています。つまり、インフルエンサーを「広告媒体」としてだけでなく、商品の販売やブランド構築を支える存在として捉えている点に特徴があります。
EC領域では「AnyX」というECマネジメントプラットフォームを提供しています。複数のECモールにおける販売活動を一元管理し、ブランド企業のEC運営を支援する仕組みです。さらにECサイトの構築、マーケティング、物流などを組み合わせることで、企業がオンライン販売を拡大するための環境を提供しています。
AnyMind Groupが特に重視しているのが、SNSとECを組み合わせた「ソーシャルコマース」です。SNS上でインフルエンサーやクリエイターが商品を紹介し、そのまま購入につなげる仕組みが普及すれば、マーケティングと販売の境界はさらに曖昧になります。同社はアジア各国に展開するクリエイターや企業のネットワークを活用し、この市場での事業拡大を目指しています。
同社の事業基盤を支えるのがアジア市場です。日本だけを対象にするのではなく、東南アジアを含む複数の国・地域でサービスを展開しているため、ある国で成功したマーケティング手法やECノウハウを他国へ展開できる可能性があります。企業にとっても、アジア各国で同時にブランドを展開する際に、一つのプラットフォームを利用できることはメリットになります。
同社は近年、M&Aにも積極的です。2026年1月には、縦型動画広告のクリエイティブ制作を手掛けるMISM、ライブ配信者のマネジメントを手掛けるBcode、化粧品・美容雑貨のブランド流通や自社ブランドを展開するサン・スマイルを子会社化しました。これらを組み合わせることで、動画、クリエイター、ブランド、ECといった事業の連携を強化しています。
M&Aを成長戦略の一つに位置付けていることは、AnyMind Groupを理解するうえで重要です。同社はオーガニックな事業成長だけでなく、各国の専門企業をグループに加えることでサービス領域と顧客基盤を広げてきました。アジア各国で異なる商習慣やSNS事情に対応するには、現地企業のネットワークやノウハウが重要になるため、M&Aは海外展開との相性が良い戦略ともいえます。
一方、AIの活用も進んでいます。2026年にはAI研究開発拠点「AnyAI Lab」での取り組みを進め、社内業務だけでなく、商品やサービスへのAI実装を加速させています。2026年7月には、D2C・EC事業における商品撮影費を約98%削減した事例も公表されており、AIを単なる研究テーマではなく、実際の業務効率化に結び付ける取り組みが進んでいます。
業績面でも成長が続いています。2025年12月期は売上収益が前期比13.0%増、売上総利益が16.9%増となり、営業利益は18億円でした。クリエイター支援事業を取り巻く環境変化などから営業利益は前年を下回ったものの、法人向けEC支援の拡大などが成長を支えました。
2026年12月期については、売上収益791億1,000万円、売上総利益303億5,000万円、営業利益30億6,000万円を計画しています。特に法人ブランド支援事業の売上総利益を59%増とする計画で、その内訳としてマーケティング事業27%増、D2C・EC事業116%増を見込んでいます。一方、クリエイター支援事業については戦略的な再編を進める方針で、短尺動画中心の支援から、ソーシャルコマースに強いクリエイターやライバーなどへ重点を移す計画です。
さらに同社は2027年12月期の中期目標として、売上収益1,050億円、営業利益63億円以上、営業利益率6%超を掲げています。既存事業の成長、M&A、生成AIによる業務効率化を組み合わせ、売上規模だけでなく収益性も高めることを目指しています。
もちろん、事業領域が広いことは成長機会である一方、管理の難しさにもつながります。インフルエンサーマーケティングではSNSの流行変化、ECでは競争激化、海外事業では為替や各国の規制など、事業ごとに異なるリスクがあります。また、M&Aによって事業規模を拡大する場合には、買収後の統合や各事業間のシナジーをどこまで実現できるかも重要になります。
AnyMind Groupの現在地を考えるうえで重要なのは、「インフルエンサーマーケティング会社」という一面的な見方だけでは捉えきれないことです。現在の同社は、インフルエンサー、企業、EC、物流、データ、AIをつなぐ総合的なデジタルコマース支援企業へと事業を広げています。
特にアジアではEC市場やSNS利用の拡大が続いており、国境を越えたブランド展開やソーシャルコマースには大きな事業機会があります。AnyMind Groupは15カ国・地域のネットワークを活用しながら、企業の商品を「認知させる」だけでなく、「売る」「届ける」までを支援する体制を強化しています。
今後の注目点は、法人ブランド支援事業の成長、EC・D2C領域の拡大、AIによる生産性向上、そしてM&Aによって取得した事業とのシナジーです。SNSとEC、AI、海外展開という複数の成長テーマを持つAnyMind Groupが、これらをどこまで一つのプラットフォームに融合できるか。アジア発のデジタル企業として、今後の事業展開が注目されます。
サイバー・バズ――インフルエンサーとSNSを武器に成長するマーケティング企業
InstagramやTikTok、YouTubeなどのSNSが消費者の生活に深く浸透するなか、企業のマーケティング手法も大きく変化しています。テレビCMや新聞広告などで一斉に情報を届ける従来型の広告だけでなく、インフルエンサーやクリエイターを通じて、特定の興味や関心を持つ消費者へ商品やサービスを届ける「ソーシャルメディアマーケティング」が存在感を高めています。
こうした市場で事業を展開しているのが、東証グロース市場に上場する株式会社サイバー・バズ(証券コード7069)です。同社は2006年に創業し、2019年に上場。2026年4月には創業20周年を迎えました。現在は「コミュニケーションを価値に変え、世の中を変える。」をミッションに掲げ、SNSを中心としたマーケティング支援を主力事業としています。
サイバー・バズの中核となるのが「ソーシャルメディアマーケティング事業」です。Instagram、X、TikTok、YouTube、LINEなどを対象に、インフルエンサーマーケティング、SNSアカウント運用、SNS広告、インターネット広告販売などを展開しています。単にインフルエンサーを企業へ紹介するだけではなく、広告商品の企画、キャスティング、コンテンツ制作、SNSアカウントの運用、効果測定まで幅広く対応できることが特徴です。
同社が保有するインフルエンサーネットワークも重要な資産です。トップインフルエンサーから一般ユーザーまで幅広いネットワークを構築し、企業の商品やサービスの認知拡大から購買促進まで、目的に応じた施策を設計しています。Instagramを中心とした「NINARY」や、X、Instagram、ブログなどを活用する「ripre」といったサービスを展開しており、ターゲットとなる消費者層に応じてインフルエンサーを使い分ける仕組みを整えています。
近年は、インフルエンサーそのもののマネジメントにも領域を広げています。「Be One Agent」はSNSに特化したタレント・クリエイター向けのエージェントサービスで、案件獲得やSNS運用を支援するだけでなく、企業とのタイアップやファンとのコミュニケーション、専売メニューの開発なども手掛けています。企業側に対しては、キャスティングだけでなく、ブランディング、クリエイティブ制作、SNSプロモーション、売上創出までを一貫して支援する体制を構築しています。
ここには、インフルエンサーマーケティング市場の変化が表れています。以前は「フォロワーの多い人物に商品を紹介してもらう」という広告手法が中心でした。しかし現在は、企業の公式SNSアカウントを育てたり、ショート動画を制作したり、インフルエンサーとブランドの関係を長期化させたりするなど、SNSそのものをマーケティングの基盤として活用する方向へ広がっています。
サイバー・バズは、この変化に対応してSNSアカウント運用にも力を入れています。企業のTikTok、Instagram、X、LINEなどのアカウントについて、企画からコンテンツ制作、投稿、効果検証までを支援。さらにSNS運用支援ツール「Owgi」も提供し、効果測定や画像収集、クリエイティブ制作、キャンペーン管理などを一元化しています。
そして現在、同社が注力しているテーマの一つが「縦型ショート動画」です。TikTokをはじめとする短尺動画市場では、コンテンツの拡散力や視聴者の反応を踏まえたクリエイティブ制作が重要になっています。サイバー・バズは「to buy」などのTikTok特化型メディアを運営しており、同メディアは累計再生回数10億回を突破し、100ブランド超のタイアップ実績があるとしています。
2026年9月には、講談社ViVi事業部と共同運営するSNSメディア「MYPE」が1周年を迎え、累計再生回数が2億回を突破したと発表しました。こうした自社メディアの育成は、広告主の商品を紹介するだけでなく、SNS上に独自のコンテンツ発信力を持つという意味でも重要です。
また、2026年5月には「Be One Agent」から新サービス「Re:One」の提供を開始しました。ブランドの思想や価値をSNS上で伝わる形へ再構築し、ナラティブ設計、キャスティング、クリエイティブ制作、SNSプロモーション、売上創出までを一気通貫で支援するサービスです。CM監督、番組ディレクター、デザイナー、イベント企画・制作などの専門家とも連携し、単なるインフルエンサー起用から、ブランド全体のコミュニケーション設計へと事業領域を広げています。
さらに2026年8月には、広告・投稿審査の知見をAIに活用した広告審査AIツール「MamoRis」の運用を開始しました。同社によると年間約10万件の広告・投稿審査で培った知見をAI化したもので、SNSマーケティングにおける広告表現やコンプライアンス対応の効率化を目指しています。インフルエンサーマーケティングでは広告表示や薬機法などへの対応も重要になるため、審査業務をテクノロジーで効率化する取り組みは、今後の事業展開を考えるうえでも注目されます。
サイバー・バズはインフルエンサー事業だけに依存しているわけではありません。子会社のWithLIVEでは、アーティストとファンが1対1でオンライン交流できるプラットフォームを運営しています。ライブ配信やオンラインコミュニケーションを通じて、企業広告とは異なる形で「人と人とのつながり」を収益化している点も特徴です。また、HR事業ではデジタルマーケティング人材に特化した転職支援やコーチングサービスを展開しています。
業績を見るうえでは、2026年9月期の動きがポイントになります。同社は2026年8月13日に第3四半期決算を発表しており、2026年9月期は現在の事業状況を確認するうえで重要な年度です。今後は、インフルエンサーマーケティングだけでなく、SNSアカウント運用、ショート動画、広告運用、自社メディアなど複数のサービスをどのように組み合わせて成長させるかが注目されます。
サイバー・バズを投資先として見る場合、SNS市場そのものの成長だけでなく、同社が持つインフルエンサーネットワークやSNS運用のノウハウをどのように収益へ結び付けるかを見ることが重要です。SNSは流行やアルゴリズムの変更が速く、TikTokやInstagramなどプラットフォーム側の仕様変更も事業環境に影響します。また、インフルエンサーによる広告表現やステルスマーケティングなど、コンプライアンスへの対応も欠かせません。
その一方で、SNSが単なる情報発信の場から、商品認知、口コミ、動画視聴、購買までをつなぐ場所へ変化していることは、同社にとって事業機会となります。特にショート動画やクリエイターエコノミーの拡大によって、企業がSNS上でブランドを構築する重要性は高まっています。
2026年に創業20周年を迎えたサイバー・バズは、インフルエンサー、SNS広告、公式アカウント運用、ショート動画、自社メディア、AI、ライブコミュニケーションなど、事業領域を広げています。従来の「インフルエンサーを企業広告に起用する会社」から、SNSを中心とした総合マーケティング企業へと進化を続けていることが、現在の同社を理解するうえで重要なポイントといえるでしょう。今後は、SNS上のコミュニケーションをどこまで企業の売上やブランド価値につなげられるか、そしてAIやショート動画を活用してサービスの生産性をどこまで高められるかが、同社の事業を見るうえで注目されます。
まとめ|「広告」から「購買」まで広がるSNSビジネス
今回取り上げたトリドリ、AnyMind Group、サイバー・バズの3社は、いずれもインフルエンサーやSNSを企業のマーケティングに活用する点で共通しています。一方で、トリドリは企業とインフルエンサーを結ぶプラットフォーム、AnyMind GroupはマーケティングからEC・D2C、物流までを含む総合支援、サイバー・バズはSNSマーケティングやショート動画、クリエイター支援など、それぞれ事業の広げ方に違いがあります。
SNS市場では、単に商品を紹介して認知を高めるだけでなく、動画による情報発信からECでの購入までを一連の流れとして設計する「ソーシャルコマース」も広がっています。さらにAIによるインフルエンサー選定や広告審査、コンテンツ制作など、テクノロジーとの融合も進んでいます。今後はフォロワー数だけでなく、実際の購買や売上、ブランド価値につながるマーケティングをどこまで実現できるかが重要になります。3社の今後の事業展開は、SNSと広告、ECが融合する市場の変化を映す存在として注目されます。




