日米スーパーは何が違う?ウォルマート・コストコ・クローガーから見る米国小売の特徴

アメリカのスーパー株に注目!「食」を制する巨大小売企業のビジネスモデル

毎日の生活に欠かせない食品を扱うスーパーは、景気の変動を受けにくい小売業の代表格です。特にアメリカでは、ウォルマートのような総合小売、コストコ・ホールセールのような会員制倉庫型、クローガーのような食品スーパーなど、企業によってビジネスモデルが大きく異なります。

日本のスーパーと比較すると、店舗の規模や買い物のスタイルだけでなく、物流、EC、プライベートブランド、会員制度、顧客データの活用などにも違いがあります。中でも興味深いのが、スーパーが単に食品を販売する場所ではなく、消費者の買い物習慣そのものを取り込むビジネスへ進化していることです。

ウォルマートは圧倒的な店舗網と低価格を武器にECや広告などへ事業を広げ、コストコは年会費と大容量商品の組み合わせによって独自の顧客基盤を築いています。そしてクローガーは、食品スーパーを軸にPB、薬局、デジタルサービスなどを組み合わせています。今回は、こうした米国小売大手の特徴を通じて、アメリカのスーパー株の魅力とビジネスモデルを探ります。

企業名ティッカー2025年米国小売売上高主な業態・特徴
ウォルマートWMT約5,760億ドルスーパーセンター、食品、総合小売
コストコ・ホールセールCOST約1,987億ドル会員制倉庫型スーパー
クローガーKR約1,547億ドル食品スーパー
アルバートソンズACI約818億ドル食品スーパー
Ahold DelhaizeAD.AS約598億ドル※食品スーパー
BJ’s Wholesale ClubBJ約211億ドル会員制倉庫型スーパー

※Ahold Delhaizeはオランダ企業で、米国ではFood Lion、Stop & Shopなどを展開。NRFの「Royal Ahold Delhaize USA」の2025年米国小売売上高は約598億ドルです。親会社の株式はアムステルダム市場に上場しています。

アメリカのスーパーと日本のスーパーは何が違う?「買い物の仕方」から見る日米小売の意外な差

アメリカのスーパーと日本のスーパー。どちらも食品や日用品を販売する身近な存在ですが、実際に店内を歩いてみると、その違いに驚かされます。日本のスーパーが「毎日の食卓を支える身近な店」だとすれば、アメリカのスーパーは「まとめ買いと生活全体を支える巨大なショッピング拠点」という側面が強いといえます。

まず目を引くのが店舗の大きさと買い物の単位です。アメリカでは広大な売り場を持つ大型店が珍しくありません。ウォルマートのような総合小売店では、食品だけでなく衣料品、家電、日用品などまで一つの店舗でそろいます。コストコのような会員制倉庫型店舗では、食品も大容量の商品が中心です。NRFによると、2025年の米国小売売上高はウォルマートが約5800億ドル、コストコが約1987億ドルで、食品小売においても両社の存在感は非常に大きくなっています。

一方、日本のスーパーは住宅地の中に立地し、徒歩や自転車で日常的に利用することを想定した店舗も多くあります。経済産業省の統計上も、スーパーは一定規模以上の売場を持つセルフサービス型店舗として分類されています。この違いは、単純に「アメリカの店が大きい」という話ではありません。買い物そのものの考え方が違うと考えると面白くなります。

日本では「今日の夕飯に何を作ろうか」と考えながらスーパーに立ち寄り、野菜、肉、魚、豆腐などを必要な分だけ購入するというスタイルがあります。特売日を狙ったり、仕事帰りに弁当を買ったりするなど、スーパーが日々の生活に組み込まれています。

対してアメリカでは、車でスーパーへ行き、一度の買い物で大量の商品を購入するスタイルが目立ちます。冷蔵庫や家庭の収納スペースが大きいことも、この違いを後押しします。特にコストコなどでは、「今日必要な分」ではなく「しばらく必要になる分」を購入するという発想が強くなります。NRFも、米国のクラブストアについて、まとめ買いなどを目的とした利用が特徴だと説明しています。

そして、もう一つ興味深いのが**「スーパーなのにスーパーではない」問題**です。

日本人がアメリカのスーパーをイメージすると、生鮮食品を中心に扱う食品スーパーを想像しがちです。しかしアメリカでは、ウォルマートのような巨大総合小売、コストコのような会員制倉庫型、クローガーのような食品スーパー、スプラウツのような健康志向型など、さまざまな業態が「食料品を買う場所」として競争しています。

実際、NRFの2026年版ランキングでは、食品小売のカテゴリーでクローガーが2025年米国売上高約1547億ドルと大きな規模を持つ一方、地域密着型スーパーも存在感を示しています。さらにコストコやBJ’sのようなクラブストアも、食品市場の重要なプレーヤーになっています。

ここから見えてくる面白いポイントが、「スーパーは食品を売る会社ではなく、消費者の買い物習慣を支配する会社」になっていることです。

例えばコストコは、商品そのものだけでなく「会員になる」という仕組みを提供しています。会費を払った消費者は、少しでも得をしようと店舗を訪れ、大容量の商品を購入します。これは通常のスーパーとは違うビジネスモデルです。

ウォルマートも単純な食品スーパーではありません。食品を買いに来た顧客が日用品や衣料品なども購入することで、1回の来店から得られる売上を増やせます。つまり、**「食品を入口にして、生活全体を囲い込む」**という戦略です。

日本でもこうした動きは進んでいます。ネットスーパー、ドラッグストアによる食品販売、コンビニの食品強化、スーパーのPB(プライベートブランド)拡充など、食品を巡る競争相手はスーパーだけではなくなっています。経済産業省も、スーパーなどが存在しない地域に移動販売車を走らせる取り組みなど、食品流通の新しい形を紹介しています。

さらに日米の違いとして面白いのが、「新鮮さ」の価値の見せ方です。

日本のスーパーでは、魚、肉、野菜、果物などについて、鮮度や見た目、産地、旬などを細かく訴求するケースが多くあります。刺身や寿司、惣菜など、日本の食文化に合わせた商品開発もスーパーの重要な差別化要素です。

アメリカでも健康志向や高品質食品への需要は強まっています。例えば米国では日本産の高品質なイチゴが高価格でも支持される事例があり、ニューヨーク周辺の高級スーパーなどで販売されています。

一方でアメリカの食品小売では、「価値=安さ」だけではなく、「健康」「オーガニック」「大容量」「便利さ」など、消費者の目的ごとに店を使い分ける傾向もあります。NRFは北米の食品小売について、スーパーからEC、ドライブスルー、クリック&コレクト、倉庫型・ディスカウント型店舗などへ食品支出が広がっていると指摘しています。

ここに投資という視点を加えると、さらに興味深くなります。

アメリカのスーパー株を見ると、ウォルマート、コストコ、クローガー、アルバートソンズなど、それぞれビジネスモデルが大きく異なります。単純に「食品を売っている会社」として比較するのではなく、どのように顧客を店舗へ呼び込み、何を一緒に買ってもらい、どれだけ頻繁に利用してもらうかを見ることが重要です。

特に面白いのは、スーパーの競争が「価格競争」から「生活習慣の争奪戦」へ変わっている点です。

毎週コストコに行く人、仕事帰りに近所のスーパーへ寄る人、ウォルマートで食品と日用品を一度に購入する人、スマートフォンでネットスーパーを注文する人。企業が競争しているのは、実は商品棚だけではありません。消費者の時間と買い物の習慣そのものを巡って競争しているのです。

日本のスーパーも今後、人口減少や人手不足、ネット通販、ドラッグストアなどとの競争が進む中で、単に「安く食品を売る場所」では生き残りにくくなる可能性があります。

そう考えると、アメリカと日本のスーパーの違いは、店舗の大きさや商品のサイズだけではありません。「スーパーとは何をする場所なのか」という発想そのものが違うのです。そして、この違いを知ることは、日米の小売企業の株式を比較するうえでも重要なヒントになります。

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ウォルマートはなぜ強い?世界最大級の小売企業を支える「安さ」だけではない戦略

アメリカのスーパー株を語るうえで、外すことのできない存在がウォルマート(Walmart)です。日本では「アメリカ版の大型スーパー」というイメージが強いかもしれませんが、実際のウォルマートは単なる食品スーパーではありません。食品、日用品、衣料品、家電などを扱う総合小売に加え、EC、広告、金融サービス、会員制事業まで展開する巨大な小売プラットフォームへと進化しています。

ウォルマートの規模を数字で見ると、その巨大さが分かります。2026年1月期の米国事業「Walmart U.S.」の売上高は4830億ドルに達し、連結売上高の68%を占めました。米国では4611店舗を展開し、50州すべてに加えてワシントンD.C.とプエルトリコにも店舗があります。海外事業も18カ国・地域で5743店舗を展開しており、米国だけの企業ではありません。

特に興味深いのは、ウォルマートの強さが「とにかく安い商品を売る」という一点だけで説明できないことです。同社は長年、低価格を競争力の中心に据えてきました。大量仕入れによって調達コストを抑え、巨大な店舗網と物流網を組み合わせることで、低価格の商品を大量に販売する。この規模の経済こそがウォルマートの基本戦略です。

しかし、現在のウォルマートを見ると、そこにデジタル戦略が加わっています。店舗を単なる「商品を買う場所」とするのではなく、ECの配送拠点や商品の受け取り拠点としても活用しているのです。2026年1月期には、米国のほぼすべての店舗で当日受け取りや配送に対応しているとしています。つまり、数千店舗という巨大な店舗網そのものが、オンラインビジネスを支えるインフラになっています。

この仕組みは、日本のスーパーを考えるうえでも非常に面白いポイントです。ネットスーパーでは、注文された商品を巨大な物流センターから発送する方法もあります。一方、ウォルマートは全国に張り巡らされた店舗を「小さな物流拠点」として利用できます。顧客に近い場所に商品があるため、店舗を持っていることがEC時代の弱点ではなく、むしろ強みに変わる可能性があります。

実際、2026年4月期にはウォルマートのEC売上高が前年同期比26%増加しました。会社側は、店舗やクラブを活用した配送が成長を押し上げたと説明しています。

さらに注目したいのが「Walmart+」です。これはウォルマートの会員制サービスで、ECを含む買い物の利便性を高める仕組みです。単に商品を販売して、その都度売上を得るのではなく、会員になってもらい、継続的に利用してもらうことで顧客との接点を増やしています。

ここにはコストコとの興味深い違いがあります。コストコも会員制を武器にしていますが、ウォルマートは巨大な総合小売網とECを組み合わせて会員サービスを拡大しています。食品を買うために訪れた顧客が日用品を買い、ネットでも注文し、さらに配送サービスを利用する。こうして顧客の日常生活に占めるウォルマートの存在感を高めていくのです。

そして、もう一つ見逃せないのが広告事業です。ウォルマートは「商品を売る場所」であると同時に、「メーカーが消費者に広告を届ける場所」にもなっています。店舗やECで大量の顧客接点を持つことから、ブランドやメーカーにとって魅力的な広告プラットフォームになり得ます。2026年1月期の年次報告書でも、ウォルマートはブランドやマーケットプレイス出店者向けの広告ソリューションを事業の一つとして挙げています。

ここが、昔のウォルマートとの大きな違いです。かつてのウォルマートは「安い商品を大量に販売する小売企業」というイメージでした。しかし現在は、店舗、EC、物流、会員サービス、広告、マーケットプレイスなどを組み合わせた巨大なエコシステムを形成しつつあります。

もちろん課題もあります。これほど巨大な企業になると、人件費、物流費、設備投資、IT投資などのコストも膨らみます。実際、ウォルマートは成長投資として賃金や新規店舗、テクノロジーなどへの投資を続けています。2026年4月期には売上高が前年同期比7.3%増加した一方、こうした成長投資も続いています。

また、海外事業には国ごとの消費習慣や競争環境、為替などの影響があります。2026年1月期の海外事業の売上高は1304億ドルで、連結売上高の19%を占めています。海外展開は成長機会である一方、各国市場への適応も求められる事業です。

投資対象としてウォルマートを見る場合、面白いのは「スーパー株」としてだけ考えないことです。食品小売は景気が悪くても生活に必要な商品を扱うため、消費者との接点が非常に多いビジネスです。そのうえウォルマートは、食品を入口として日用品、EC、会員サービス、広告などへ事業領域を広げています。

さらに、2026年7月末までの半年間を見ると、連結売上高は3656億8800万ドルで前年同期の3430億1100万ドルから増加しました。第2四半期には売上高が前年同期比で増加し、営業利益も前年同期比16.6%増となっています。

ウォルマートを理解するうえで最も面白い着眼点は、「店舗がECのライバルではなく、ECの武器になっている」という点でしょう。巨大な店舗網を持つことは、オンライン時代には古いビジネスモデルの象徴にも見えます。しかしウォルマートは、その店舗網を配送・受け取り・顧客接点として再利用しています。

つまり、ウォルマートが売っているものは、実は食品や日用品だけではありません。低価格、利便性、配送、会員サービス、広告などを組み合わせて、「消費者の買い物習慣」そのものを取り込もうとしているのです。

アメリカのスーパー株を比較する際には、売上高の大きさだけでなく、「店舗網をどう活用しているか」「ECと店舗をどう融合しているか」「会員や広告など商品販売以外の収益源を持っているか」に注目すると、ウォルマートという企業の強さがより立体的に見えてきます。スーパーから始まった企業が、テクノロジーと物流を取り込んで巨大な小売プラットフォームへ変貌している――。ウォルマートは、現代の小売業がどこへ向かっているのかを考えるうえで、非常に象徴的な企業といえるでしょう。

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コストコはなぜ「つい買いすぎる」のか?会員制スーパーを超えた独自のビジネスモデル

アメリカのスーパー株を語るうえで、ウォルマートと並んで注目されるのがコストコ・ホールセールです。日本でもすっかりおなじみとなったコストコですが、そのビジネスモデルは一般的なスーパーとは大きく異なります。特徴は、巨大な倉庫型店舗、大容量商品、低価格、そして「年会費を払って買い物をする」という会員制です。実は、この会員制こそがコストコの強さを理解する重要なポイントです。

コストコは、会員制倉庫型小売という独特の業態を展開しています。同社自身も、限定された品ぞろえの商品を低価格で販売し、大量仕入れや効率的な物流、簡素な店舗運営によって高い販売数量と在庫回転を実現することを基本モデルとして説明しています。つまり、商品の種類を無限に増やすのではなく、「売れる商品を大量に、できるだけ安く提供する」ことに徹底的に集中しているのです。

2025年8月期の売上高は約2699億ドル、純利益は約81億ドルでした。そして2026年8月期には、年間売上高が約2973億ドルまで拡大しています。2026年8月期の売上高は前期比10.2%増となり、コストコの成長力が続いていることが分かります。

店舗数も着実に増えています。2026年7月時点では世界で933倉庫を展開し、そのうち米国・プエルトリコが641店舗、カナダ115店舗、日本37店舗などとなっています。日本は米国、カナダ、メキシコに次ぐ主要市場の一つです。

ここで面白いのが、コストコでは「商品を買う前に、まずお金を払う」という仕組みです。米国の一般会員であるGold Star Membershipの年会費は65ドル。つまり、コストコは商品を販売する前に、顧客から会費を受け取っています。

一般的なスーパーなら、顧客が商品を買わなければ売上は発生しません。しかしコストコでは、会員になった時点で一定の収入が生まれます。さらに会員になった人は、「せっかく年会費を払ったのだから、コストコで買おう」という心理が働きやすくなります。

ここがコストコの非常に面白いところです。

コストコは「商品を売って会員を増やす」のではなく、会員を増やすことで商品が売れやすくなる仕組みを持っています。

2026年5月までの第3四半期累計では、会費収入は約40.6億ドルに達し、前年同期の約36.0億ドルから増加しました。一方、商品販売による売上高は約2034億ドルです。会費は売上高全体から見ると小さな存在ですが、コストコの収益構造を考えるうえで非常に重要な収入源になっています。

さらに、コストコにはもう一つ独特な特徴があります。それが品ぞろえを絞っていることです。

普通のスーパーでは、同じカテゴリーの商品について、複数のメーカー、価格帯、容量などを選べるようにするのが一般的です。しかしコストコは、売れ筋商品を中心に取り扱い、商品の選択肢をある程度限定しています。

一見すると「品ぞろえが少ない」という弱点にも見えます。しかし、これがコストコの強みにもなっています。大量に仕入れられる商品を絞り込むことで、仕入れ量を増やし、物流や店舗運営を効率化できます。消費者側からすれば、「どの商品を買えばいいのか迷う」という選択コストも小さくなります。

そして、コストコを語る際に外せないのがプライベートブランド「Kirkland Signature」です。食品、飲料、日用品、衣料品など幅広い商品を展開し、コストコのブランド力そのものを支える存在になっています。

一般的なスーパーでは、メーカーの商品を並べることが競争力になります。しかしコストコでは、自社の店舗でしか買えない商品を増やすことで、「コストコに行く理由」を作ることができます。

ここにも会員制との相性の良さがあります。

「この商品を買いたいからコストコに行く」という目的が生まれれば、他店との単純な価格比較をされにくくなります。コストコに行ったついでに食品を買い、日用品を買い、衣料品を買う。そして予定していなかった商品まで購入する。これがコストコの店舗体験の特徴です。

実際、2026年8月期の既存店売上高は全世界で8.4%増、米国では8.2%増でした。さらにデジタル関連の売上も強く、2026年5月までの第3四半期ではデジタル対応売上が前年同期比21.5%増、同9か月では21.6%増となっています。

つまり、「倉庫型店舗だからネット通販には弱い」という単純な構図にはなっていません。コストコもECを展開し、2026年7月時点では米国、カナダ、英国、メキシコ、韓国、台湾、日本、オーストラリア、中国などでECサイトを運営しています。

日本でもコストコの人気は高まっています。2026年時点で日本国内には37店舗があり、米国以外ではカナダ、メキシコに次ぐ大きな店舗網を持っています。

日本のスーパーとの違いを考えると、コストコの特徴がより鮮明になります。日本のスーパーでは「今日必要なものを買う」という利用が多いのに対し、コストコでは「コストコに行くこと自体がイベント」になりやすいのです。巨大なカートを押しながら店内を回り、大容量の商品や限定商品を探す。買い物そのものがレジャーに近い体験になります。

ここに投資家にとっての面白い着眼点があります。

コストコが売っているのは、商品だけではありません。「コストコで買う」という体験そのものを売っているのです。

そのため、投資対象としてコストコを見る場合、単純な売上高だけでなく、会員数や会費収入、既存店売上高、会員の継続率、ECの成長などを見ることが重要になります。2026年8月期も年間売上高は約2973億ドルまで伸びており、今後も店舗拡大と既存店の成長をどこまで両立できるかが注目点となります。

一方で、コストコにも課題はあります。大容量商品を中心とするビジネスモデルは、世帯人数の減少や消費者の節約志向、物流費や人件費の上昇などの影響を受ける可能性があります。また、店舗を拡大し続ければ、出店余地の大きい地域を探すことも徐々に難しくなります。

それでもコストコがユニークなのは、単なる「安売りスーパー」ではない点です。会員制、限定された品ぞろえ、大量仕入れ、プライベートブランド、倉庫型店舗、ECを組み合わせることで、独自の経済圏を構築しています。

コストコの株式を見るとき、最も面白いのは「なぜ人は年会費を払ってまで、コストコに行きたくなるのか」という視点かもしれません。

安いから会員になる。会員になったからコストコで買う。買い物をするからさらに会費の価値を感じる。この循環が続けば、顧客と企業の関係は一般的なスーパーよりも強固になります。

コストコは、商品を売る会社であると同時に、会員という顧客基盤を育てる会社でもある。

この独特のビジネスモデルこそが、ウォルマートなどとは異なるコストコの魅力を生み出しているといえるでしょう。

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クローガーはなぜ強い?「食品スーパー」を超えて進化する米国小売大手の実力

アメリカのスーパー株を語るうえで、ウォルマートやコストコと並んで押さえておきたいのがクローガー(The Kroger Co.)です。日本ではコストコやウォルマートほど知名度が高くないかもしれませんが、クローガーは米国を代表する食品小売企業の一つです。特徴的なのは、巨大な総合小売企業とは少し異なり、「食」を中心にした店舗網とデジタルサービス、プライベートブランド、薬局などを組み合わせている点にあります。

クローガーの歴史は1883年までさかのぼります。バーナード・クローガーがオハイオ州シンシナティで創業したことから始まり、140年以上にわたって米国の消費者に食品を提供してきました。現在では、Kroger、Ralphs、Fred Meyer、King Soopers、Smith’sなど多数のブランドを展開しています。2026年1月31日終了の2025年度には、約2,800店舗を運営し、そのうち約2,400店舗が薬局を併設しているとしています。

2025年度の売上高は約1,476億ドルでした。食品スーパーというカテゴリーだけでこれほど巨大な売上規模を持つ企業は、米国でも限られます。クローガーの強みを考える際には、単純な「スーパーの店舗数」ではなく、食料品を中心にした生活インフラを広範囲に築いていることに注目する必要があります。

クローガーの店舗を特徴づけているのが、食品と薬局を組み合わせたビジネスモデルです。買い物のためにスーパーへ行き、同じ場所で処方薬を受け取る。消費者にとっては非常に便利な仕組みです。食品は日常的に購入するものなので、店舗への来店頻度を高める効果も期待できます。

ここにクローガーの面白さがあります。

ウォルマートは「食品を入口に生活全体を取り込む」総合小売型ですが、クローガーは**「食を中心に生活に入り込む」食品小売型**と考えることができます。

そのため、クローガーの競争力を判断するときには、食品価格だけを比較するのでは十分ではありません。どれだけ頻繁に顧客が来店するのか、どの程度の商品を一度に購入するのか、そして食品以外のサービスをどれだけ利用してもらえるかが重要になります。

もう一つ重要なのが、プライベートブランドです。クローガーは「Our Brands」という自社ブランド群を展開しており、価格帯や品質の異なる商品を幅広く取りそろえています。ナショナルブランドの商品だけを販売するのではなく、自社ブランドを通じて価格競争力と独自性を高めています。

スーパーにとってPB商品の重要性は年々高まっています。消費者が物価高の中で節約を意識するようになれば、低価格の商品への需要が高まります。しかし、単純にメーカー品の価格を下げ続ければ、利益率への圧力が強まります。

そこで自社ブランドを充実させることで、「安いけれど、他店では同じ商品を買えない」という状態を作ることができます。これはスーパーにとって重要な差別化戦略です。

そして現在のクローガーを考えるうえで欠かせないのがデジタルです。2025年度のデジタル売上高は約18%増加し、オンラインでの注文や配送、店舗での受け取りなど、デジタルを活用した買い物体験を強化しています。

ここでも、スーパーの「店舗」という資産が重要になります。

ECが普及すると、実店舗を大量に持つ企業は一見すると不利に思えます。しかし食品の場合、顧客の近くに商品があること自体が大きな価値になります。店舗を注文商品の受け取り場所や配送拠点として利用できれば、実店舗とECを組み合わせることができます。

これはウォルマートやコストコにも共通するテーマですが、クローガーの場合は食品に特化しているからこその強みがあります。生鮮食品を含め、日常的に購入する商品が多いため、デジタルと店舗の融合による顧客接点を作りやすいのです。

一方、クローガーには大きな経営課題もあります。その一つが、アルバートソンズとの大型買収計画です。クローガーは2022年、競合する食品スーパー大手アルバートソンズ・カンパニーズを約246億ドルで買収する計画を発表しました。しかし、米連邦取引委員会(FTC)などが競争上の問題を指摘し、2024年12月にクローガー側が買収を断念しました。両社は2024年12月に合併契約を終了しています。

この一件は、米国の食品小売業界の競争環境を考えるうえでも興味深い出来事です。巨大企業同士が規模を拡大すれば、仕入れや物流で効率化できる可能性があります。一方で、地域によってはスーパーの選択肢が減ることにつながるため、競争政策上の問題になります。

投資家から見ると、これはクローガーが置かれている環境の難しさを示す事例でもあります。米国の食品小売市場では、ウォルマート、コストコ、Amazon、アルバートソンズ、地域スーパー、ディスカウントストアなど、さまざまな業態が競争しています。

特に面白いのは、**「スーパーの最大のライバルは、別のスーパーとは限らない」**という点です。

消費者が食品を買う場所は、スーパーだけではありません。ウォルマートのような総合小売店、コストコのような会員制倉庫型店舗、AmazonなどのEC、さらにはドラッグストアやコンビニも食品を扱っています。クローガーは「食品スーパー」という枠の中だけで競争しているわけではないのです。

そのため、クローガーを見るときには売上高だけでなく、既存店売上高、デジタル売上、PB商品の成長、薬局事業、顧客数などを見ることが重要になります。2025年度は調整後既存店売上高が2.9%増加し、売上の基盤となる店舗の競争力も確認されています。

さらに、クローガーは顧客データを活用したマーケティングにも力を入れています。スーパーは消費者が何を、いつ、どれくらいの頻度で購入するのかという情報が大量に蓄積される業態です。このデータをメーカー向け広告や販促などに活用できれば、商品販売以外の収益源を育てることもできます。

ここが、現代のスーパー株を見るうえで非常に面白い着眼点です。

スーパーは「商品を売る場所」から、「消費者データが集まる場所」へ変わりつつある。

クローガーはその典型例の一つです。食品という毎日の生活に欠かせない商品を扱い、店舗、薬局、PB、EC、配送、データ活用などを組み合わせることで、顧客との接点を増やしています。

アメリカのスーパー株を比較する際、ウォルマートが「総合小売」、コストコが「会員制」、クローガーが「食品スーパー」という違いを押さえると、それぞれのビジネスモデルが見えやすくなります。

クローガーの魅力は、派手なテクノロジー企業ではないにもかかわらず、食品という極めて日常的な商品を武器に、巨大な顧客基盤と店舗網を構築していることです。景気や流行に左右されにくい食品小売だからこそ、価格、店舗、PB、デジタル、薬局、データという複数の武器をどう組み合わせるかが、今後の企業価値を考えるうえで重要なポイントになるでしょう。

まとめ:スーパー株を見るなら「何を売るか」より「どう囲い込むか」に注目

アメリカのスーパー企業を比較すると、同じ食品小売でも収益を生み出す仕組みが大きく異なることが分かります。ウォルマートは店舗網と低価格、コストコは会員制度と大容量販売、クローガーは食品を中心とした店舗網やPB、薬局、デジタル戦略を強みにしています。

そして現在のスーパー業界で重要なのは、「食品をいくら売ったか」だけではありません。どれだけ頻繁に顧客に利用してもらえるか、店舗とECをどう組み合わせるか、PBや会員制度によってどれだけ独自の顧客基盤を築けるかが競争力を左右します。

一見すると昔ながらのスーパーに見えても、その裏側では物流網、EC、データ、広告、会員サービスなどを組み合わせた巨大な小売プラットフォームへの変化が進んでいます。日本のスーパーとの違いを知ることは、米国小売企業の特徴を理解するだけでなく、これからの小売業そのものがどこへ向かうのかを考える材料にもなります。

投資家にとっては、身近な「食品」という商品を入口に、企業がどのように顧客との関係を築き、売上や利益につなげているのかを見ることが、スーパー株を理解するポイントになりそうです。

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