
【完全版】株の損益通算のすべて|確定申告のやり方から扶養外れの落とし穴まで解説
「投資で利益が出たら税金がかかる」というのは、多くの投資家が知っている常識です。しかし、「投資で損失が出たときに税金を減らせる仕組みがある」ということは、意外と見落とされがちです。
それが、今回詳しく解説する「損益通算(そんえきつうさん)」です。
株取引をはじめとする投資の世界では、常に勝ち続けることは不可能です。時には大きな損失を出してしまうこともあるでしょう。そんなとき、この「損益通算」という制度を知っているかいないかで、手元に残るお金(最終的な投資パフォーマンス)に数十万円、時には数百万円もの差がつくことがあります。
本記事では、株の損益通算について、初心者の方でも直感的に理解できるよう、具体的な計算例やイラスト感覚で読める図解を交えながら体系的に解説します。
監修者:市川雄一郎
GFS校長。CFP®。1級ファイナンシャル・プランニング技能士(資産設計提案業務)。日本FP協会会員。日本FP学会会員。 グロービス経営大学院修了(MBA/経営学修士)。
日本のFPの先駆者として資産運用の啓蒙に従事。ソフトバンクグループが創設した私立サイバー大学で教鞭を執るほか、講演依頼、メディア出演も多数。著書に「投資で利益を出している人たちが大事にしている 45の教え」(日本経済新聞出版)
公式X アカウント 市川雄一郎@お金の学校 校長
第1章:損益通算の「概要」と基本ルールを学ぶ
まずは「損益通算とは何か」という全体像と、なぜこの制度が存在するのかという基本から学んでいきましょう。
1. 損益通算とは?(超・基本概念)
損益通算とは、一言で言えば「同じ年の投資の『利益(儲け)』と『損失(赤字)』を相殺(チャラに)すること」です。
日本の税制において、株の売買益や配当金には、原則として20.315%(所得税15.315% + 住民税5%)の税金がかかります。
【例】
A証券会社で株を売り、100万円の利益が出たとします。
このとき、かかる税金は以下の通りです。
1,000,000円 × 20.315% = 203,150円つまり、手元に残る純利益は 796,850円 になります。
しかし、もしあなたがB証券会社で別の株を取引しており、そこで40万円の損失を出していたとしたらどうでしょうか?
何も手続きをしなければ、A証券会社で得た100万円に対して丸々20万3,150円の税金が徴収されたままになります。あなたの年間トータルの投資成績は「100万円 − 40万円 = 60万円のプラス」であるにもかかわらず、100万円分の税金を払わされている状態です。
ここで登場するのが損益通算です。
A証券のプラス100万円と、B証券のマイナス40万円を合算(相殺)することで、あなたの課税対象となる利益を60万円に減らすことができます。
通算前の税金: 203,150円(利益100万円に対して課税)
通算後の税金:
600,000円 × 20.315% = 121,890円節税効果:
203,150円 – 121,890円 = 81,260円
このように、損益通算を行うことで81,260円もの税金が手元に戻ってくる(または徴収されずに済む)のです。
2. なぜ損益通算が必要なのか?(投資家保護と担税力)
税金の世界には「担税力(たんぜいりょく)に応じた課税」という大原則があります。これは、「実際に税金を負担できる力がある人から、その力に見合った分だけ税金を徴収する」という考え方です。
100万円の利益を出したとしても、裏で120万円の損失を出していれば、その投資家は実質的に「20万円の赤字」です。税金を支払う経済的余裕(担税力)はありません。それにもかかわらず、100万円の利益だけに課税するのは不公平です。
国は投資を活性化させたい一方で、過度な税負担によって投資家が市場から退場してしまうのを防ぐ必要があります。そのため、「同じグループ内の投資であれば、利益と損失を合算して『本当に増えた分』にだけ課税しますよ」という救済措置(=損益通算)を設けているのです。
3. 損益通算ができる「グループ」の範囲
ここで非常に重要なルールがあります。それは、「何とでも損益通算できるわけではない」という点です。
例えば、「株で損したから、自分の給料(給与所得)と相殺して所得税を減らそう!」ということは絶対にできません。また、「ビットコイン(暗号資産)で損したから、株の利益と相殺しよう」ということも不可能です。
税法上、所得は10のグループに分類されており、損益通算ができる組み合わせは厳格に決められています。株取引に関する損益通算は、以下の「金融商品」の範囲内で行うことになります。
〇 損益通算ができる組み合わせ(同じグループ)
以下のグループ内であれば、お互いに利益と損失を相殺することができます。
| グループ(上場株式等) | 対象となる具体的な商品 |
| 株式等の譲渡所得・配当所得等 | * 上場企業などの株式の売却損益
* 投資信託(公募株式投資信託)の売却損益・分配金
* ETF(上場投資信託)、REIT(不動産投資信託)の損益
* 国債、地方債、社債などの利子・売却損益 |
POINT
現在の日本の税制では、「上場株式等の売却損(譲渡損)」と「上場株式等の配当金や投資信託の分配金(配当所得)」の損益通算が認められています。
つまり、「値下がりで損した分」を「毎月もらっている配当金」と相殺して、配当金にかかっていた税金を取り戻すことができるのです。
✕ 損益通算が「できない」組み合わせ
以下のものは、上場株式等のグループとは異なるため、損益通算の対象外となります。
一般株式等(未公開株など)との通算
上場していないスタートアップ企業の株(未公開株)などの損失は、上場株式の利益と相殺することはできません(逆も同様)。
デリバティブ取引・先物取引等との通算
FX(外国為替証拠金取引)、日経225先物、オプション取引、CFD(差金決済取引)などは「先物取引等に係る雑所得等」という別のグループになります。そのため、「株の損失」と「FXの利益」を相殺することはできません。
暗号資産(仮想通貨)との通算
ビットコインなどの暗号資産は原則として「雑所得(その他)」に分類されます。株の利益と暗号資産の損失(またはその逆)を相殺することはできません。
他の所得(給与、事業、不動産など)との通算
前述の通り、サラリーマンの給料や個人の事業収入と、株の損失を相殺することはできません。
4. 2つの口座区分:「特定口座(源泉あり/なし)」と「一般口座」
損益通算を実務として行う上で、避けて通れないのが「口座の種類」です。あなたが証券会社で口座を開設した際、以下の3つのうちどれかを選んでいるはずです。
【証券口座の種類】
├── 特定口座(源泉徴収あり) ★最も自動化されている
├── 特定口座(源泉徴収なし)
└── 一般口座
それぞれの特徴と、損益通算における挙動を整理しておきましょう。
① 特定口座(源泉徴収あり)
特徴: 証券会社があなたの代わりに1年間の損益をすべて計算し、税金の徴収(源泉徴収)から還付(戻し入れ)までをすべて自動で行ってくれます。
損益通算: 同じ証券口座内であれば、確定申告をしなくても自動的に損益通算が行われます。(例:同じ口座内で株を売って損をし、同じ口座内で配当金を受け取った場合、年末に自動で税金が還付されます)。
注意点: 「A証券」と「B証券」など、複数の証券会社にまたがる損益通算は自動で行われません。これを行うには、後述する「確定申告」が必要です。
② 特定口座(源泉徴収なし)
特徴: 証券会社が1年間の損益を計算した「特定口座年間取引報告書」を作ってくれますが、税金の引き落としは行われません。
損益通算: 損益通算を行うためには、証券会社から送られてくる年間取引報告書を使って、自分で確定申告を行う必要があります。
③ 一般口座
特徴: 証券会社は何も計算してくれません。自分で買い値と売り値を記録し、1年間の損益をすべて自分で計算する必要があります。
損益通算: 当然、自動では行われません。非常に煩雑な計算を行った上で、確定申告が必須となります。
・投資で収入を得たい、資産を増やしたい YES or NO
・リスクはできるだけ抑えたい YES or NO
・投資先の見極め方を知りたい YES or NO
・成功している投資家と接点が欲しい YES or NO
・物価上昇への対策には投資が必要と考えている YES or NO
第2章:損益通算の「仕組み」を具体例で徹底図解
損益通算の基本ルールが頭に入ったところで、この章では「実際にどのようなプロセスで計算され、いくら手元に戻るのか」を、よくある3つのシチュエーションを挙げて数字で具体的にシミュレーションしていきます。
税率は一律で、計算がわかりやすいように復興特別所得税を含めた 20.315% とします。
シナリオ1:【同一証券会社内】株の売却損 × 配当金の受け取り
まずは最もシンプルで、実践する人が多いケースです。
【状況】
あなたは「SBI証券」の特定口座(源泉徴収あり)を利用しています。
取引A: あるIT企業の株を売却し、30万円の損失(マイナス)が出た。
取引B: 保有している高配当株から、年間で10万円の配当金(プラス)を受け取った。
1. 損益通算をしない場合(もし別々の口座だったら)
配当金10万円には、支払われる時点で20.315%の税金が天引きされています。
天引きされる税金 = 100,000円 × 20.315% = 20,315円売却損30万円に対しては、利益が出ていないため税金はかかりません(0円)。
支払った税金の合計: 20,315円
2. 損益通算(自動)が行われた場合
同じ口座内(源泉徴収あり)であれば、証券会社が自動で以下のように処理します。
年間のトータル成績を計算します。
損益合計 = +100,000円(配当) – 300,000円(売却損) = -200,000円トータルが「マイナス(赤字)」になったため、今年の課税対象額は 0円 になります。
その結果、配当金を受け取った時にすでに天引きされていた20,315円が、翌年の1月中旬頃に証券口座へ全額キャッシュバック(還付)されます。
★初心者が覚えるべきポイント:
特定口座(源泉徴収あり)を使っていれば、「株の損」と「配当金」の相殺は、寝ていても証券会社が勝手にやってくれます。 確定申告も不要です。
シナリオ2:【複数証券会社】A証券のプラス × B証券のマイナス
次に、複数の証券会社に口座を持って使い分けているケースです。これが最も「確定申告のメリット」が活きる場面です。
【状況】
楽天証券(特定口座・源泉あり): > 株の売却で50万円の利益が出た。口座から自動的に税金が引かれている。
引かれた税金 = 500,000円 × 20.315% = 101,575円マネックス証券(特定口座・源泉あり): > 株の売却で30万円の損失が出た。
1. 確定申告をしない場合
それぞれの証券口座は独立しているため、お互いの情報を知り得ません。
楽天証券:101,575円の税金を納税して終了。
マネックス証券:損失30万円のままで終了。
手元に残る合計利益:
(500,000円 – 101,575円) – 300,000円 = 98,425円
2. 確定申告をして「損益通算」した場合
翌年の2月〜3月に、自分で確定申告書を作成し、両方の証券会社の年間取引報告書を提出します。
税務署が全体の損益を再計算します。
実際の年間利益 = +500,000円(楽天) – 300,000円(マネックス) = 200,000円この20万円に対する正しい税金を計算します。
正しい税金 = 200,000円 × 20.315% = 40,630円すでに楽天証券で「101,575円」払っているため、払いすぎた分が戻ってきます。
還付される金額 = 101,575円 – 40,630円 = 60,945円
確定申告という一手間を加えるだけで、60,945円があなたの銀行口座に振り込まれます。
シナリオ3:【3年間の繰越控除】引ききれなかった損失を翌年以降へ
もし、利益よりも損失の方が圧倒的に大きかった場合はどうなるでしょうか。
【状況】
2026年: 投資が大失敗し、100万円の損失を出した(利益はゼロ)。
2027年: 投資がうまくいき、40万円の利益が出た。
2028年: さらに順調で、50万円の利益が出た。
2026年は損失100万円に対して相殺できる利益がありません。このとき活躍するのが「繰越控除(くりこしこうじょ)」という制度です。
確定申告をすることで、「引ききれなかった損失を最長3年間、翌年以降に持ち越す」ことができます。
繰越控除を使ったシミュレーション
【2026年】
損失:▲100万円
★確定申告で「100万円の損失」を国に登録する。
⇒ 税金は当然 0円。翌年へ100万円のマイナス枠を持ち越し。
【2027年】
利益:+40万円
繰越枠:▲100万円 から 40万円を相殺(損益通算)
⇒ 課税される利益は 0円(税金0円!)。
⇒ 残った繰越枠:▲60万円を翌年へ持ち越し。
【2028年】
利益:+50万円
繰越枠:▲60万円 から 50万円を相殺(損益通算)
⇒ 課税される利益は 0円(税金0円!)。
⇒ 残った繰越枠:▲10万円を翌年(2029年)へ持ち越し。
もし、この繰越控除の制度を使っていなかったらどうなっていたでしょうか?
2027年: 40万円の利益に対して約8万円の税金が発生。
2028年: 50万円の利益に対して約10万円の税金が発生。
つまり、3年間で合計約18万円もの税金を、払う必要がないのに払う羽目になっていたのです。3年間の繰越控除を適切に申告するだけで、これらの税金がすべて手元に残ります。
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第3章:損益通算の実践ステップ(初心者向けナビ)
「損益通算がお得なのはわかったけれど、手続きが難しそう……」と不安になる必要はありません。ここでは、初心者の方が迷わず実践できるよう、ステップ・バイ・ステップで手順を解説します。
ステップ1:自分の取引口座のタイプを確認する
まず、自分が使っている証券会社のマイページにログインし、口座設定を確認してください。
「特定口座(源泉徴収あり)」かつ「1つの証券会社しか使っていない」場合:
⇒ あなたは何もしなくてOKです。 年末に証券会社が自動で損益通算を完了させ、税金を口座に戻してくれます。
「特定口座(源泉徴収なし)」または「一般口座」を使っている場合、あるいは「複数の証券会社を使っている」場合:
⇒ 確定申告をする必要があります。 ステップ2へ進みましょう。
ステップ2:必要書類を準備する(毎年1月〜2月頃)
確定申告に必要な書類を集めます。インターネット証券(SBI証券、楽天証券など)の場合、ほとんどの書類はマイページからPDFでダウンロードできます。
特定口座年間取引報告書
証券会社が1月頃に発行する書類です。その口座での1年間の「売却額」「買い値」「配当金」「源泉徴収された税金」がすべて1枚にまとまっています。複数の証券会社を使っている場合は、すべての証券会社分を用意します。
マイナンバーカード
確定申告書の作成・提出に必須です(お持ちでない場合は、通知カード+運転免許証などの本人確認書類)。
還付金を受け取る銀行口座の情報
通帳やキャッシュカードなど。
ステップ3:国税庁の「確定申告書等作成コーナー」で入力する
現在の確定申告は、スマホやパソコンから驚くほど簡単にできます。税務署に行く必要はありません。
【オンライン確定申告の大まかな流れ】
国税庁「確定申告書等作成コーナー」にアクセス
│
├── マイナンバーカードでログイン(e-Taxがおすすめ)
│
├── 「所得税の確定申告書」の作成を選択
│
├── 「譲渡所得(株式等)」の欄を選択
│
├── 手元の「特定口座年間取引報告書」の数値を画面の指示通りに入力
│ (※現在はマイナポータル連携で、証券会社データを自動取得することも可能です!)
│
└── 完了!「還付される税金」が画面に自動表示される
国税庁のシステムは非常に優秀で、画面の指示通りに「年間取引報告書」に書かれている数字(「譲渡対価の額」「取得費」など)を入力していくだけで、自動的に損益通算の計算を行ってくれます。
ステップ4:送信(提出)して還付を待つ
データが完成したら、そのままインターネット上(e-Tax)で送信して提出完了です。
確定申告期間(通常2月16日〜3月15日)に提出した場合、およそ2週間〜1ヶ月程度で、指定した銀行口座に「クニゼイカンブキ」などの名義で税金が振り込まれます。この瞬間が、損益通算の手間報われる最も嬉しい瞬間です。
第4章:絶対にやってはいけない!損益通算の「注意点」と落とし穴
損益通算は非常に強力な節税ツールですが、ルールを正しく理解していないと、「せっかく税金を取り戻したのに、それ以上に大きなお金を失ってしまった」「配偶者の扶養から外れてしまった」という致命的な失敗に繋がることがあります。
この章では、投資家が最も陥りやすい落とし穴を厳選して解説します。
落とし穴1:【超重要】扶養家族から外れてしまうリスク(健康保険・配偶者控除)
サラリーマンの夫に扶養されている妻や、親に扶養されている学生・子どもが、自分の口座で確定申告をして損益通算を行う場合、最大の警戒が必要です。
通常、特定口座(源泉徴収あり)で取引している場合、どれだけ利益が出ても、その利益は「住民税や所得税の計算上の所得」にはカウントされません。そのため、夫や親の扶養から外れることはありません。
しかし、損益通算や繰越控除をするために「確定申告」をした瞬間、その株の利益があなたの正式な「所得」として表に出てしまいます。
【最悪のケーススタディ】
夫の扶養に入っている妻(専業主婦)の例:
A証券で150万円の利益(源泉徴収あり)
B証券で50万円の損失
損益通算をして、払いすぎた約10万円の税金を取り戻そうと「確定申告」をした。
結果:
税金は10万円戻ってきましたが、妻の所得が「100万円(150万 – 50万)」とみなされ、配偶者控除の対象外(または控除額が減少)になり、さらに国民健康保険への加入義務が生じて、夫の健康保険の扶養から外れてしまいました。
その結果、健康保険料と夫の税金負担が年間20万円以上増え、取り戻した10万円を遥かに超える大赤字になってしまいました。
回避策:
扶養に入っている家族が確定申告を行う場合は、「取り戻せる税金額」と「扶養から外れることによる負担増(社会保険料、税控除の喪失)」のどちらが大きいかを事前に緻密に計算してください。
一般的に、取り戻せる税金が数千円〜数万円程度であれば、確定申告をせず、特定口座(源泉あり)のまま課税を完結させた方が安全です。
落とし穴2:国民健康保険料(住民税ベース)が上がってしまうリスク
これは扶養に入っていない自営業者やフリーランス、リタイア世代(年金生活者)の方に共通する落とし穴です。
確定申告をして株の利益を申告すると、それはあなたの「総所得」に加算されます。
国民健康保険料や後期高齢者医療制度の保険料は、前年の「総所得」をベースに計算されるため、翌年の保険料が跳ね上がることがあります。
対策:
所得税と住民税で異なる課税方式を選択できる制度(※税制改正により現在は制限されていますが、基本ルールとして所得に算入される点に注意)や、そもそも保険料への影響を考慮した上での申告判断が必要です。基本的には、「特定口座(源泉徴収あり)で、確定申告をしない」を選択していれば、保険料に一切影響しません。
落とし穴3:繰越控除中は「毎年連続で確定申告」が必要
前述の通り、損失は3年間繰り越すことができますが、これには厳しい条件があります。
それは、「損失を出した翌年以降、取引があってもなくても、毎年連続で確定申告をしなければならない」というルールです。
【失敗例】
2026年に100万円の損を出して確定申告をした。
2027年は一切取引をしなかったので、「申告しなくていいや」と放置した。
2028年に50万円の利益が出たので、2026年の損と相殺しようとした。
結果:
2027年に申告を怠った(=バトンを落とした)ため、2026年の損失データは消滅しており、2028年の利益50万円には丸々税金がかかってしまいます。
どれだけ面倒でも、繰り越している期間中は毎年、税務署に「まだ損失が残っています」という申告書を提出し続けなければなりません。
落とし穴4:NISA(少額投資非課税制度)は対象外
現在、日本で最も普及している投資口座である「NISA(ニーサ)」。
NISA口座内で得た利益はすべて非課税になる素晴らしい制度ですが、「非課税口座」ゆえのデメリットがあります。
それは、「NISA口座内で発生した損失は、存在しないものとみなされる」という点です。
NISA口座で株が値下がりし、50万円の損失で売却したとしても、それは税法上「0円の損失」となります。
したがって、特定口座(課税口座)で出た利益と、NISA口座で出た損失を損益通算することは絶対にできません。
「NISAだから安心」ではなく、「NISAでの損失は、税制上の救済措置が一切受けられない」というリスクは頭に入れておく必要があります。
第5章:【重要】なぜこの知識が投資家の「生死」を分けるのか?
ここまで、損益通算の具体的な仕組み、計算、手続き、そして罠について詳しく解説してきました。最後に、なぜこうした「税金と制度の知識」を身につけることが、単なる節税テクニックを超えて、投資家としての生死を分けるほど重要なのかをお伝えします。
多くの初心者は、投資を始めるときに「どの株が上がるか」「どうやって利益を増やすか」という「攻め(リターン)」の手法ばかりを勉強します。チャートを分析し、企業の業績を調べ、SNSで話題の銘柄を追いかけます。
しかし、投資の世界で長期的に生き残り、資産を築くために本当に重要なのは、「守り(コスト管理とリスクコントロール)」です。
そして、投資における最大の確実なコストこそが「税金」なのです。
1. 確実性100%の「利回り向上策」である
株価が明日上がるか下がるかは、プロのファンドマネージャーでも予測できません。あなたが必死に分析した銘柄が、明日から暴落する確率は常に存在します。つまり、リターンを増やす努力には「不確実性」が伴います。
一方で、「適切に損益通算をして、払いすぎた税金を取り戻す」という行為は、成功確率100%の利益確定です。
確定申告書を正しく書いて提出すれば、国から確実に現金が振り込まれます。これほど安全で、確実な「利回りの向上策」が他にあるでしょうか。
年間5万円の税金を取り戻すことは、配当利回り5%の株を100万円分保有しているのと全く同じ価値があります。
知識を学び、数時間の作業をするだけで、ノーリスクで数万円〜数十万円の「キャッシュ」を生み出せるのです。
2. 「負け戦」のダメージを最小限に抑える
投資の格言に「利大損小(利益は大きく、損失は小さく)」という言葉があります。
しかし、人間は心理的に「損」を受け入れるのが苦手な生き物です(プロスペクト理論)。損を抱えた株をダラダラと持ち続け、塩漬けにしてしまい、最終的に致命的な大損をして市場から退場していく初心者が後を絶ちません。
もし、あなたが「損益通算」と「繰越控除」の知識を持っていれば、損切り(ロスカット)に対する心理的ハードルを下げることができます。
「今、この株を損切りして30万円の赤字を確定させるのは痛い。でも、今年は別の株で50万円の利益が出ているから、損益通算すれば約6万円の税金が戻ってくるな。実質的な損失は24万円で済むし、傷が浅いうちに次の優良銘柄に資金を移動させよう」
このように、税金制度を味方につけることで、ロジカルで冷静な投資判断(損切り)ができるようになります。 知識があなたの投資マインドを強固にし、致命傷を避ける防具になるのです。
3. 情報格差がそのまま「資産格差」になる現実
厳しい現実ですが、日本の税制は「知っている人だけが得をし、知らない人は静かに搾取され続ける」ようにできています。
国や税務署は、あなたが複数の口座で損をして税金を払いすぎていたとしても、「税金を払いすぎていますよ、損益通算の手続きをしてください」とは絶対に教えてくれません。確定申告の案内が自宅に届くこともありません。
あなたが知識を持ち、自ら行動を起こして初めて、あなたのお金は守られます。
投資を学ぶということは、単に銘柄を選ぶことではありません。「取引が発生するルール(市場環境、法制度、税制)」を網羅的に理解することです。制度を味方につけた投資家と、ただ盲目的に売買を繰り返す投資家では、10年後、20年後に手元に残る資産の額に数百万〜数千万円の格差が生まれるのは必然なのです。
まとめ:今日から始める「賢い投資家」への一歩
本記事で解説した「株の損益通算」の要点を、最後にもう一度整理しましょう。
損益通算とは、同じ年の「利益」と「損失」を合算して、税金を最小限に抑える仕組み。
上場株式の売却損は、同じグループの「配当金」や「投資信託の分配金」とも相殺できる。
特定口座(源泉あり)なら1つの口座内での通算は完全自動。複数口座にまたがる場合は「確定申告」が必要。
引ききれなかった損失は、確定申告を維持することで「最長3年間」翌年以降に繰り越せる。
ただし、扶養家族や自営業者は「健康保険料や扶養控除への影響」という落とし穴に細心の注意を払うこと。
投資における本当の勝者は、目先の1勝に一喜一憂する人ではなく、税金を含めたトータルの仕組みをハックし、手元に残る純資産を最大化し続けた人です。
この記事を読んだあなたは、すでに多くの一般投資家が一歩目で躓く「税制の壁」をクリアする知識を手に入れました。ぜひ、ご自身の取引口座や年間の投資状況を一度見直し、次の確定申告シーズンには、知識という武器を使って大切な資産を守り抜いてください。
賢い投資家として、あなたが市場で長く生き残り、豊かな未来を築かれることを心から応援しています。
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【重要】免責事項
投資判断の最終責任: 本記事で紹介している銘柄やセクター、分析内容は、情報提供および学習の啓発のみを目的としており、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資に関する最終決定は、必ずご自身の判断と責任で行ってください。
成果の非保証: 過去のデータや予測は、将来の投資成果を保証するものではありません。市場環境の変化により、資産が減少するリスクがあります。
情報の正確性: 2026年時点の情報に基づき作成されていますが、その正確性や完全性を保証するものではありません。最新の業績やニュースは、必ず各企業のIRサイトや一次資料でご確認ください。
損失の補償: 本記事の内容に基づいて被ったいかなる損害(直接的・間接的を問わず)についても、筆者は一切の責任を負いません。




