47都道府県 上場企業図鑑【滋賀県編】

琵琶湖の歴史と世界を支える技術――滋賀県から生まれる挑戦

日本最大の湖・琵琶湖を抱える滋賀県は、豊かな自然と長い歴史を持つ地域である。古代から京都や東日本を結ぶ交通の要衝として発展し、戦国時代には織田信長が安土城を築いた舞台となるなど、日本の歴史に深く関わってきた。また、彦根城や比叡山延暦寺といった歴史的建造物、近江牛や湖魚料理などの独自の食文化、そして琵琶湖を一周する「ビワイチ」に代表される観光資源など、多彩な魅力を持つ県でもある。

一方で、滋賀県の魅力は歴史や観光だけにとどまらない。実は世界市場で高い競争力を持つ技術企業が数多く存在する「ものづくり県」でもある。琵琶湖の豊かな自然に囲まれた土地から、生命科学、通信インフラ、都市設備といった最先端分野で世界に挑戦する企業が生まれているのである。

その代表例が、タカラバイオ、湖北工業、フジテックである。タカラバイオは発酵技術をルーツに、遺伝子研究や再生医療など未来の医療を支えるバイオ企業へ成長した。湖北工業は、世界のインターネット通信を支える海底ケーブル関連部品など、目に見えない部分で情報社会を支える技術企業である。そしてフジテックは、エレベーター・エスカレーター専業メーカーとして、人々の移動を支える社会インフラ企業として世界で活躍している。

歴史ある地域文化と、未来を切り拓く先端技術が共存する滋賀県。琵琶湖が育んだ歴史や知られざるトリビア、観光の魅力に触れながら、滋賀発のグローバル企業3社の挑戦を通じて、この県が持つ新たな可能性を紹介していく。

企業名本社所在地証券コード面白いポイント
日本電気硝子大津市5214スマートフォンや半導体、ディスプレイに使われる特殊ガラスの世界的メーカー。ガラス技術でエレクトロニクスを支える存在。
タカラバイオ大津市4974キノコメーカー「宝ホールディングス」から誕生したバイオ企業。再生医療や遺伝子治療、PCR試薬など最先端分野で活躍。
フジテック彦根市6406エレベーター・エスカレーター専業メーカー。世界20以上の国・地域で事業展開するグローバル企業。
オプテックスグループ大津市6914自動ドアセンサーや防犯センサーで世界トップクラス。街中で見かける自動ドアの「目」を作る会社。
平和堂彦根市8276滋賀県民なら誰もが知るスーパー。「HOPカード」や地域密着経営で関西・北陸へ拡大。
湖北工業長浜市6524光海底ケーブル向け部品で世界トップクラスのシェア。インターネット通信を陰で支える企業。
オーケーエム野洲市6229船舶・プラント向けバルブメーカー。大型船や発電所など社会インフラを支えるニッチ企業。
アテクト東近江市4241半導体製造に欠かせない保護資材や電子材料を製造。実はヘルスケア製品も展開する異色企業。
滋賀銀行大津市8366「しがぎん」の愛称で親しまれる地方銀行。環境金融やESG融資に積極的で全国的にも先進的。
三東工業社栗東市1788滋賀県を代表する総合建設会社。公共インフラ工事を中心に地域の発展を支えている。

琵琶湖が育んだ歴史と産業――滋賀県の魅力を訪ねる

日本列島のほぼ中央に位置する滋賀県。その名を聞いて真っ先に思い浮かぶのは、日本最大の湖である琵琶湖だろう。県土のおよそ6分の1を占めるこの巨大な湖は、約400万年もの歴史を持つ世界でも有数の古代湖であり、滋賀県の自然、文化、経済を語る上で欠かせない存在である。琵琶湖は近畿地方約1,400万人の水源として「近畿の水がめ」と呼ばれ、人々の暮らしを支えるだけでなく、1000種類を超える動植物が生息する豊かな生態系を育んできた。その一方で、古くから交通や物流の要衝でもあり、日本の歴史を動かす重要な舞台にもなってきた。

滋賀県の歴史は古代にまでさかのぼる。奈良や京都に隣接する地理的条件から、古代の都と東日本を結ぶ交通の要衝として栄え、東海道や中山道といった主要街道が県内を通った。戦国時代には、日本史を代表する武将・織田信長が琵琶湖畔に安土城を築き、それまでの城の概念を覆す壮麗な天守を持つ城郭を完成させた。安土城は現在こそ天守を失っているものの、日本の城郭建築史を大きく変えた革新的な存在として知られている。また、天下分け目の戦いとも呼ばれる関ヶ原の戦いの前哨戦や、多くの戦国武将たちの攻防の舞台となるなど、滋賀県は日本史の節目にたびたび登場する土地でもある。

歴史だけではない。滋賀県には彦根城という国宝の名城が残されている。現存12天守の一つであり、江戸時代の姿を今に伝える貴重な城として国内外から観光客が訪れる。マスコットキャラクター「ひこにゃん」の人気によって全国的な知名度も高まり、歴史と現代文化が融合した観光地として親しまれている。さらに、延暦寺が建つ比叡山は世界文化遺産に登録され、日本仏教の母山とも呼ばれる霊峰である。最澄によって開かれたこの寺院では、千年以上続く「不滅の法灯」が今なお灯され、日本文化の精神的な支柱となっている。

滋賀県には意外なトリビアも多い。例えば、県名よりも「琵琶湖」の知名度のほうが高く、「琵琶湖は知っているが滋賀県の場所は分からない」という海外の人も少なくない。また、琵琶湖の面積は約670平方キロメートルにも及ぶが、実は県境は湖の中央ではなく全域が滋賀県に属している。湖岸の総延長は約235キロメートルあり、一周する「ビワイチ」はサイクリストの聖地として国内外から人気を集める。さらに、滋賀県は近江牛の産地としても知られ、日本三大和牛の一つに数えられるブランド牛を生み出している。琵琶湖でしか味わえないビワマスやホンモロコ、鮒ずしなどの湖魚文化も、この地域ならではの食文化と言える。

そして現代の滋賀県は、「ものづくり県」としても高い評価を受けている。京都や大阪に近い立地、高速道路や鉄道網が整備された交通利便性、豊富な工業用水などを背景に、多くの製造業が集積してきた。世界中のスマートフォンや半導体を支える特殊ガラスを製造する日本電気硝子、再生医療や遺伝子解析で世界最先端を走るタカラバイオ、世界各国の高層ビルを支えるエレベーターメーカーのフジテック、自動ドアや防犯センサーで高い世界シェアを誇るオプテックスグループ、さらには世界のインターネット通信を支える海底ケーブル部品メーカーの湖北工業など、世界市場で存在感を示す企業が数多く本社を構えている。「滋賀県発、世界へ」という言葉が決して大げさではないのである。

豊かな自然と長い歴史、そして世界を支える最先端技術。そのすべてが一つの県に共存しているのが滋賀県の大きな魅力である。観光地として訪れれば琵琶湖や名城、寺社仏閣に心を奪われ、産業に目を向ければ世界トップクラスの技術力を持つ企業群に驚かされる。本稿では、そんな滋賀県を代表する企業として、日本電気硝子、タカラバイオ、フジテックを取り上げ、それぞれがどのように世界で活躍し、地域とともに発展してきたのかを紹介していく。滋賀県という土地の魅力と企業の挑戦を知れば、この県を見る目はきっとこれまでとは違ったものになるだろう。

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キノコ研究から最先端バイオへ――タカラバイオが挑む生命科学の未来

滋賀県に本社を置く企業の中でも、ひときわ異彩を放つ存在がタカラバイオである。その名前から食品メーカーを連想する人もいるかもしれないが、現在の主力事業はバイオテクノロジー分野であり、遺伝子研究、再生医療、細胞医療、遺伝子治療など、生命科学の最前線を支える企業へと成長している。かつては「タカラ」のブランドで知られる酒類や調味料、健康食品などを手掛ける企業グループの一部であったが、時代の変化とともに研究開発型企業へと進化した歴史は、日本企業の事業転換の成功例としても注目されている。

タカラバイオのルーツは、1925年創業の宝酒造にまでさかのぼる。酒造りを基盤として発展してきた同社は、発酵技術や微生物研究に長年取り組んできた。実は日本の伝統産業である酒造りと、現代のバイオテクノロジーには深いつながりがある。日本酒の醸造では酵母や麹菌など微生物の働きを利用するが、こうした微生物を扱う技術や知見は、生命科学研究の基礎にも通じるものである。宝酒造が培ってきた発酵技術を発展させる形で誕生したのが、現在のタカラバイオにつながる研究開発部門であった。

タカラバイオが大きく飛躍するきっかけとなったのが、遺伝子工学分野への本格参入である。1990年代以降、生命科学研究ではDNA解析や遺伝子操作技術が急速に発展した。タカラバイオは研究用試薬や遺伝子工学関連製品の開発に力を入れ、大学や研究機関、製薬企業などに向けた研究支援ビジネスを拡大していった。現在では、DNAを増幅するPCR関連試薬や遺伝子解析技術など、研究現場に欠かせない製品を数多く展開している。

特に注目されたのが、新型コロナウイルス感染症の流行時におけるPCR検査関連事業である。感染拡大によって迅速かつ正確な検査技術の重要性が高まる中、タカラバイオは長年培った遺伝子解析技術を生かし、PCR検査関連製品を提供した。一般の人々が「PCR検査」という言葉を知るきっかけとなった社会的背景の中で、同社の技術力が広く認識されることとなったのである。

しかし、タカラバイオの本当の挑戦は、研究支援にとどまらない。現在、同社が成長分野として力を入れているのが、再生医療や遺伝子治療などの最先端医療領域である。これらの分野では、患者自身の細胞や遺伝子を利用して病気を治療するという、従来の医薬品とは異なるアプローチが求められている。タカラバイオは、細胞加工技術や遺伝子導入技術を活用し、難治性疾患に対する新しい治療法の実用化を目指している。

例えば、がん治療の分野では、患者の免疫細胞を改変してがん細胞への攻撃力を高める「CAR-T細胞療法」など、次世代型の治療技術が世界的に注目されている。タカラバイオはこうした細胞医療分野にも取り組み、日本発の革新的な治療技術の創出を目指している。これまで「病気になったら薬で抑える」という考え方が中心だった医療は、今後「患者自身の生命力を利用して治す」方向へ変化していく可能性があり、その中でバイオ企業の役割はますます大きくなっている。

また、タカラバイオの特徴は、研究用試薬の提供から臨床応用まで幅広い事業領域を持つ点にある。基礎研究を支える製品開発、研究成果を医療につなげる技術開発、さらに治療法の実用化まで、一貫したバイオ技術のプラットフォームを構築している。単なる製薬会社ではなく、「生命科学のインフラ企業」とも言える存在であり、世界中の研究者や医療現場を陰から支えている。

滋賀県という土地との関係も興味深い。滋賀県は琵琶湖を中心とした豊かな自然環境を持つ一方、古くから近江商人の精神に代表される「堅実な商い」の文化が根付いている。派手な消費財ではなく、社会を支える技術や産業を磨き続ける企業が多い地域でもある。タカラバイオはまさにその象徴であり、伝統的な発酵技術を出発点にしながら、世界最先端の生命科学へ挑戦している。

今後、世界では高齢化の進展や医療技術の高度化によって、バイオテクノロジーの重要性はさらに高まると考えられる。遺伝子解析、個別化医療、再生医療などは、未来の医療を大きく変える可能性を秘めている。タカラバイオは、長い歴史を持つ日本企業のDNAと、最先端科学を融合させながら、新たな生命科学産業の担い手として歩み続けている。

「キノコや発酵の研究から始まった技術が、未来の医療を変える」。タカラバイオの歩みは、地方企業でも世界を舞台に活躍できることを示す好例である。滋賀県発のバイオ企業が、これからどのような革新を生み出していくのか、その挑戦から目が離せない。

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世界の通信インフラを支える滋賀発の技術力――湖北工業が挑む「見えない産業」の未来

スマートフォンで動画を見る、海外とオンライン会議をする、クラウド上のデータにアクセスする。現代社会では、世界中の情報が瞬時につながることが当たり前になっている。しかし、その便利な生活を支える通信インフラの裏側には、数多くの高度な部品や技術が存在している。その中でも、滋賀県長浜市に本社を置く湖北工業は、世界規模の通信ネットワークを陰から支える企業として注目されている。特に同社が手掛ける光通信部品は、海底ケーブルなどの重要なインフラに使われており、世界のデジタル社会を支える「縁の下の力持ち」と言える存在である。

湖北工業の歴史は、1959年に滋賀県湖北地域で創業したことに始まる。創業当初から電子部品分野に取り組み、日本の高度経済成長とともに発展してきた。同社の事業の中心となったのは、アルミ電解コンデンサ用リード端子である。コンデンサは電子機器に欠かせない部品であり、電気を一時的に蓄えたり、電圧を安定させたりする役割を持つ。テレビや家電、自動車、産業機械など幅広い製品に使われており、現代の電子社会を支える基礎部品の一つである。

湖北工業は、こうした電子部品の中でも特に高い品質が求められる分野で技術力を磨いてきた。小さな部品であっても、製品の性能や寿命を左右するため、素材加工や精密製造における高度なノウハウが必要になる。同社は長年にわたって製造技術を蓄積し、世界市場で競争できる製品を生み出す企業へ成長した。

その中でも、現在の湖北工業を象徴する事業が光通信部品である。インターネット通信量が爆発的に増加する現代では、高速かつ大容量のデータ通信を可能にする光ファイバー網が不可欠となっている。その光ファイバーを世界規模でつなぐ重要な役割を果たしているのが海底ケーブルである。大陸間を結ぶ海底ケーブルは、国際通信の大動脈とも言える存在であり、世界中のインターネット通信の多くがこの巨大なインフラによって支えられている。

湖北工業は、この海底ケーブルに使用される光部品の分野で高い技術力を持つ。特に、光ファイバー同士を接続する際に使用される部品など、通信品質を左右する重要な製品を提供している。普段の生活では目にすることのない小さな部品であるが、わずかな性能差が通信速度や信頼性に大きく影響するため、世界中の通信事業者から高い評価を受けているのである。

この「目立たないけれど、なくてはならない技術」を磨く姿勢こそ、湖北工業の大きな特徴である。一般消費者向けの商品を販売する企業とは異なり、同社の製品が直接店頭に並ぶことはほとんどない。しかし、スマートフォン、データセンター、クラウドサービス、国際通信など、現代社会のあらゆる場面で同社の技術が活躍している。まさに「見えないところで世界を支える企業」なのである。

また、湖北工業の強みは、滋賀県という地域性とも深く関係している。滋賀県は古くから交通の要衝として栄え、近江商人に代表されるような「堅実な経営」「三方よし」の精神が根付いている。派手な規模拡大よりも、顧客や社会に長く必要とされる価値を提供する企業文化が育まれてきた。湖北工業もまた、長年培った技術力を大切にしながら、世界市場で存在感を高めてきた企業の一つである。

近年では、生成AIの普及やデータ利用量の急増によって、通信インフラへの需要はさらに高まっている。AIサービスや動画配信、IoT、自動運転など、今後のデジタル社会では膨大なデータを高速で処理する能力が求められる。その基盤となるのが光通信技術であり、湖北工業が活躍する市場は今後も成長が期待される分野である。

さらに、世界ではデータセンターの拡大や次世代通信規格の普及が進んでおり、高性能な通信部品への需要は増加している。単なる電子部品メーカーではなく、未来の情報社会を支えるインフラ企業として、湖北工業の役割はますます重要になっていくだろう。

地方に本社を置く企業が、世界の最先端産業で存在感を示す――湖北工業の歩みは、その象徴とも言える。滋賀県長浜市から生まれた小さな技術が、海を越えて世界中の人々の通信を支えている。普段は意識することのないインターネットの裏側には、多くの技術者たちの努力と、日本企業ならではの細やかなものづくりの精神が息づいているのである。

湖北工業は、これからも「見えない価値」を追求しながら、世界の通信インフラを支える存在として成長を続けていくだろう。その姿は、地方企業が持つ可能性と、日本の製造業の底力を示す一つのモデルケースとなっている。

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昇降機で世界をつなぐ滋賀発のグローバル企業――フジテックが切り拓く未来の移動

高層ビルや大型商業施設、駅、空港、マンションなど、現代の都市生活に欠かせない存在となっているエレベーターやエスカレーター。その安全で快適な移動を支えている企業の一つが、滋賀県彦根市に本社を置くフジテックである。エレベーター専業メーカーとして国内外で高い評価を受け、世界各地の建築物に製品を提供する同社は、「人の移動を支える技術」を追求してきた企業である。普段は意識されることの少ない昇降機という分野でありながら、都市化や高齢化、スマートシティ化が進む現代社会において、その役割はますます重要になっている。

フジテックの歴史は、1948年の創業に始まる。創業者である内山正太郎氏は、戦後の日本復興の中で、将来的に需要が高まるエレベーター産業に着目した。当時の日本では、都市化や建築技術の発展に伴い、ビルの高層化が進み始めていた。人や物を安全かつ効率的に上下へ運ぶ昇降機の需要は拡大しており、フジテックはその成長市場にいち早く参入したのである。

創業当初からフジテックが重視してきたのは、安全性と技術力である。エレベーターは単なる輸送機械ではなく、人命を預かる社会インフラである。そのため、製品には極めて高い信頼性が求められる。同社は設計から製造、据付、保守まで一貫した体制を構築し、長期間にわたり安心して利用できる昇降機づくりに取り組んできた。

フジテックの大きな特徴は、エレベーター・エスカレーター専業メーカーである点だ。総合電機メーカーが多くの事業領域の一つとして昇降機を手掛ける中、フジテックは一貫してこの分野に特化してきた。その結果、専門メーカーならではの高度な技術力と、顧客ニーズに柔軟に対応する開発力を磨き上げてきたのである。

同社を象徴する施設の一つが、滋賀県彦根市にある研究開発拠点「ビッグウィング」である。巨大な試験塔を備えたこの施設では、高速エレベーターの性能試験や新技術の開発が行われている。高層ビル向けのエレベーターでは、単に速く動けばよいわけではない。振動や騒音を抑え、利用者が快適に感じる乗り心地を実現する必要がある。そのため、細かな制御技術や安全システムの研究が欠かせない。フジテックはこうした研究開発を通じて、世界水準の製品を生み出している。

また、フジテックの成長を語る上で欠かせないのが海外展開である。日本国内だけでなく、アジア、北米、中東など世界各地で事業を展開しており、グローバル市場で存在感を高めている。特に都市化が急速に進むアジア地域では、高層マンションや商業施設、地下鉄駅などの建設が相次いでおり、エレベーター需要は拡大している。フジテックは各地域の建築事情や利用環境に合わせた製品・サービスを提供し、世界の都市づくりを支えている。

エレベーター産業は、単に新しい製品を販売するだけでは成り立たない。設置後の長期的な保守やメンテナンスが非常に重要である。建物が存在する限り、人々は安全に移動するために昇降機を必要とする。そのため、フジテックでは保守サービスにも力を入れ、稼働後の品質維持や安全管理にも取り組んでいる。この「販売から保守まで一貫して支えるビジネスモデル」は、安定した収益基盤にもつながっている。

近年、エレベーター業界では新たな変化が起きている。その一つが、デジタル技術の活用である。IoTセンサーやAI技術を活用することで、故障予兆の検知や効率的な保守管理が可能になりつつある。また、省エネルギー性能の向上やバリアフリー対応など、環境や社会課題への対応も求められている。高齢化が進む日本では、エレベーターやエスカレーターは単なる便利な設備ではなく、高齢者や障害者の移動を支える重要な社会基盤となっている。

さらに、都市の高層化が進む世界では、効率的な垂直移動の重要性が高まっている。限られた土地を有効活用するため、高層ビルや複合施設は今後も増加すると考えられる。その中で、安全性と快適性を両立した昇降機技術への需要はさらに高まっていくだろう。フジテックは、これまで培ってきた専門技術を生かしながら、未来の都市インフラづくりに挑戦している。

滋賀県という地域から世界へ羽ばたいたフジテックの歩みは、地方発の技術企業の可能性を示している。滋賀県には、琵琶湖を中心とした豊かな自然や歴史だけでなく、世界市場で戦う製造業が数多く存在する。フジテックもまた、その代表的な企業の一つであり、「人を運ぶ」という普遍的な価値を通じて世界中の人々の暮らしを支えている。

毎日何気なく利用しているエレベーターやエスカレーター。その背後には、安全性を追求し続ける技術者たちの努力と、長年積み重ねてきた企業の歴史がある。フジテックはこれからも、移動という社会の基本を支える存在として、より安全で快適な未来の都市づくりに貢献していくだろう。

まとめ:伝統と革新が融合する滋賀県――世界へ羽ばたく企業の力

滋賀県は、琵琶湖を中心とした自然、歴史的な街並み、戦国時代から続く文化遺産など、多くの魅力を持つ地域である。しかし、その本当の魅力は過去の歴史だけではなく、未来を創り出す産業力にもある。

タカラバイオは、伝統的な発酵技術を出発点として生命科学の最前線へ挑み、湖北工業は小さな部品から世界規模の通信ネットワークを支え、フジテックは人々の安全で快適な移動を実現している。これらの企業に共通するのは、派手な消費者向け商品ではなく、高度な技術力によって社会を根底から支えている点である。

近江商人の「三方よし」に代表されるように、滋賀県には長期的な価値を追求する文化が根付いている。その精神は、現代の企業経営にも受け継がれ、地域発の技術を世界へ届ける原動力となっている。

歴史ある土地でありながら、未来産業の可能性を秘めた滋賀県。琵琶湖が長い年月をかけて豊かな環境を育んできたように、滋賀の企業もまた、積み重ねた技術と挑戦によって世界に新たな価値を生み出しているのである。

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