
監修者:市川雄一郎
GFS校長。CFP®。1級ファイナンシャル・プランニング技能士(資産設計提案業務)。日本FP協会会員。日本FP学会会員。 グロービス経営大学院修了(MBA/経営学修士)。
日本のFPの先駆者として資産運用の啓蒙に従事。ソフトバンクグループが創設した私立サイバー大学で教鞭を執るほか、講演依頼、メディア出演も多数。著書に「投資で利益を出している人たちが大事にしている 45の教え」(日本経済新聞出版)
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35年変動ローンで、4,500万円のマンションか戸建てを購入する/した場合、どちらが苦しくなりやすい? 住宅費と資産形成を投資家目線で徹底解説
はじめに
「日銀が1%に利上げへ」という見出しを見ると、多くの人はまず住宅ローンを思い浮かべるはずです。
実際、2026年6月10日時点で日銀の政策金利にあたる無担保コール翌日物金利の誘導水準は0.75%で、ロイターは市場で6月会合で1.0%への引き上げが有力視されていると報じています。つまり、1%はまだ確定した事実ではなく、かなり強い市場予想です。
この「まだ決まっていないが、十分あり得る」という状況が、いちばん家計を不安にさせます。
なぜなら、利上げの影響は、株式市場や為替だけではなく、住宅ローン、預金、保険、教育費、生活防衛資金の持ち方まで、家計全体に波及するからです。特に日本では、変動型住宅ローンの利用比率が高く、日銀の利上げ観測が強まると、「うちはどれくらい増えるのか」が一気に現実味を帯びます。日銀自身も2025年12月に政策金利を0.75%へ引き上げた経緯を説明しており、2026年4月会合でも一部委員は1.0%を主張していました。
今回の記事では、Yahoo!ニュースの「日銀1%に利上げへ 家計への影響」というテーマを入り口にしつつ、単なるニュース解説では終わらせません。
4,500万円・35年変動ローンというかなり現実的な設定で、
マンション購入
と
一戸建て購入
を比較しながら、利上げが家計にどう効くのか、そして将来の資産形成にどう響くのかまで、投資家目線で整理します。
結論を先に言うと、日銀が1%へ利上げした場合に本当に問題になるのは、
「毎月のローン返済が少し増えること」だけではありません。
本当に重いのは、
ローン返済増
管理費・修繕積立金や固定資産税などの住居固定費
物価高による生活費上昇
が同時に家計を圧迫することです。
そしてマンションと戸建ての差は、単純なローン額ではなく、ローン以外の住居コストをどう抱えるかで大きく出ます。
第1章 まず、「日銀が1%へ利上げ」は確定なのか
ここは最初にきちんと整理しておくべきポイントです。
2026年6月10日時点で、日銀が正式に決めている誘導水準は0.75%です。日本銀行の4月28日公表の「Statement on Monetary Policy」では、無担保コール翌日物金利を0.75%程度に維持するとしています。日銀の公式サイト上の市場オペレーション欄でも、補完当座預金制度の金利が0.75%、次回の金融政策決定会合が6月15〜16日であることが確認できます。
一方で、ロイターは6月9日付の記事で、市場では6月会合で0.25%の追加利上げ、すなわち1.0%への引き上げが織り込まれていると伝えています。別の記事でも、6月会合で1%への利上げが「expected」と表現されています。つまり現時点では、1%は市場の有力シナリオであって、まだ正式決定ではありません。
この区別はとても大事です。
家計の対策を考えるときは、
「決まったから慌てる」
のではなく、
「決まるかもしれないから、今のうちに家計耐久力を点検する」
ことが大切だからです。
第2章 利上げが家計に効くのは、住宅ローンだけではない
利上げの話になると、どうしても変動ローン返済額ばかりに目が向きます。
もちろんそれは大きな論点です。
ただ、家計への影響はもっと広いです。
ロイターは、円安や中東情勢、輸入コスト高を背景に、日本の卸売物価上昇率が高まっていると伝えています。日銀が利上げを急ぐ背景にも、こうしたインフレ圧力への警戒があります。つまり、利上げ局面とは多くの場合、すでに生活費が上がっている局面でもあります。住宅ローンだけでなく、食費、光熱費、教育費、保険料、家賃相場や修繕費用の上昇など、家計全体の固定費・準固定費がじわじわ重くなりやすいのです。
特に住まいは、ローン返済額だけでは終わりません。
マンションなら、管理費と修繕積立金があり、戸建てでも、外壁・屋根・設備更新のための修繕原資を自分で積み立てる必要があります。国土交通省は2024年のガイドライン改定で、マンションの修繕積立金について、段階増額方式では将来大きく上がる例が多く、予定通り上げられないと修繕不足につながると指摘し、均等積立方式が望ましいと整理しました。つまり、マンションは「今の積立金」だけで安心していいわけではありません。
ここから先の話で大切なのは、利上げの影響を
ローン返済増
だけで見るのではなく、
家計の総住居費
で見ることです。
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第3章 4,500万円・35年変動ローンの参考試算
まずは「返済額そのもの」がどのくらい変わるか
ここでは、参考試算として
借入額4,500万円
返済期間35年
元利均等返済
で計算します。
まず、金利0.6%の毎月返済額は約11万8,813円です。
金利0.85%だと約12万3,907円、
金利1.1%だと約12万9,137円、
金利1.35%だと約13万4,500円になります。
つまり、金利が0.25%上がるごとに、月の返済額はざっくり5,000円前後ずつ増えるイメージです。
この数字だけ見ると、
「月5,000円くらいなら意外と大丈夫そう」
と思う人もいるかもしれません。
ここが落とし穴です。
たしかに、4,500万円・35年ローンで、金利が0.6%から0.85%になるだけなら、月の増加は約5,100円です。
ただし、日銀の利上げが1回で止まる保証はありませんし、銀行の店頭金利や優遇幅の見直し方は金融機関ごとに違います。
さらに問題は、この月5,000円増が単独で起きるのではなく、管理費、修繕積立金、固定資産税、教育費、生活費上昇と重なることです。そこまで含めると、家計の体感負担はかなり変わります。
第4章 マンションと戸建て、何が違うのか
4,500万円ローンでも「家計に効く場所」が違う
ここから、マンションと戸建てを比較します。
前提として、ローン返済額は同じです。
同じ4,500万円、同じ35年変動ローンなら、金融機関の条件が同じ限り、返済額自体は同じです。
違いが出るのは、ローン以外の住居固定費です。
参考例として、以下のように置いてみます。
マンションの参考前提
管理費+修繕積立金:月3.5万円
固定資産税・都市計画税等の月換算:月1.5万円
合計追加コスト:月5.0万円
戸建ての参考前提
自主管理の修繕積立相当:月1.0万円
固定資産税・都市計画税等の月換算:月1.2万円
合計追加コスト:月2.2万円
これはあくまで比較のための参考前提です。
物件立地、築年数、広さ、構造でかなり変わります。
ただ、考え方としてはかなり重要です。
たとえば、金利0.6%時点での毎月返済額は約11.9万円でした。
ここに上の追加コストを乗せると、
マンション総住居費
約11.9万円+5.0万円=約16.9万円
戸建て総住居費
約11.9万円+2.2万円=約14.1万円
になります。
同じ4,500万円借りても、月の住居費総額では約2.8万円差が出る計算です。
さらに金利が0.85%へ上がれば、ローン返済は約12.4万円になるので、
マンション総住居費 約17.4万円
戸建て総住居費 約14.6万円
です。
つまり、利上げ局面で家計が苦しくなるかどうかは、ローン返済の増分以上に、
マンションの管理費・修繕積立金を含めた総住居費がもともと重いか
で差が出ます。
第5章 マンションのほうが不利なのか
そう単純ではないが、「固定費の見えやすさ」は重い
ここで、「じゃあ戸建てのほうが絶対に得なのか」というと、そうでもありません。
マンションの良さは、
立地が良いことが多い
資産価値が比較的残りやすいエリアがある
管理を外部化できる
ことです。
一方、戸建ては、
管理費や修繕積立金がないように見える
かわりに、
自分で修繕原資を積み立てないと後で困る
という特徴があります。
つまり、マンションは毎月のコストが表に出やすく、戸建ては将来の修繕コストが後ろに隠れやすいのです。
この違いを理解しないと、戸建てのほうがいつでも楽だと誤解しやすいです。
とはいえ、家計管理の観点では、利上げ局面で先に苦しくなりやすいのはマンションのほうです。
なぜなら、
ローン返済増
に加えて、
管理費・修繕積立金増
が起こりやすいからです。
国土交通省が修繕積立金ガイドラインを見直したのも、将来必要な修繕費に対して積立が不足しやすいことが背景です。つまり、今の積立水準がそのまま続く保証はなく、特に高層・大規模・築年が進んだマンションでは、増額が家計を圧迫する可能性があります。
このため、利上げ局面でマンションを買うなら、
ローン返済額が大丈夫か
ではなく、
管理費・修繕積立金が上がっても住居費総額に耐えられるか
で考える必要があります。
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第6章 家計に本当に効くのは「金利」より「総住居費」
ここがこの記事の核心です。
日銀が1%へ利上げしたとしても、住宅ローンの返済額増だけなら、4,500万円・35年変動ローンでは月5,000円前後の増加にとどまるケースがあります。
もちろん借入額や優遇幅次第で違いますが、数字だけ見れば「それほど大きくない」と感じるかもしれません。
しかし家計で本当に怖いのは、
住居費総額が、時間とともに“静かに重くなること”
です。
具体的には、
金利上昇で月5,000円増える。
管理費・修繕積立金が数千円から1万円単位で上がる。
固定資産税が見直される。
教育費が増える。
食費と光熱費が上がる。
こうしたものが重なると、月2万円、3万円、4万円という増加になっていきます。
このとき、家計が最も痛むのは、
貯蓄や投資へ回す余力が削られること
です。
たとえば毎月5万円を新NISAで積み立てていた人が、住居費と生活費上昇でその積立を止めるようになると、短期の負担増以上に、長期の資産形成へ影響が出ます。
つまり利上げの本当の怖さは、目先の返済額増というより、
資産形成を止める力
にあります。
第7章 投資家視点で見ると、住宅購入で大切なのは何か
ここで、あえて投資家視点に引き寄せてみます。
住宅は投資商品ではありません。
でも、家計全体の中では“最大級の資本配分”です。
株式投資なら、
「この銘柄に全資産を突っ込むのは危険だ」
と多くの人がわかります。
ところが住宅になると、
「借りられるなら借りる」
「低金利だから大丈夫」
と判断しやすくなります。
でも本来、住宅購入も資本配分です。
家計のキャッシュフローを何十年も拘束する投資に近い。
だから投資家視点で本当に大切なのは、
期待リターン
より
下方リスクへの耐性
です。
都心マンションを買うことが悪いのではありません。
ただ、
フルローンで限界まで借りる
変動金利のまま余白を持たない
住居費総額を甘く見る
のは、投資で言えばレバレッジをかけすぎた状態に近いです。
投資家視点で健全なのは、
上がったらうれしいが、上がらなくても生活が壊れない
状態です。
住宅でも同じです。
都心マンションに資産性があっても、家計が苦しくなるなら、それは良い投資とは言いにくい。
第8章 将来のために、家計はどう備えるべきか
では、日銀の利上げが1%へ向かうかもしれない今、家計はどう考えるべきでしょうか。
まず大切なのは、
自分の住宅ローンが、金利何%までなら耐えられるか
を把握することです。
変動型を使っているなら、0.25%、0.5%、1.0%上がったときの返済額を試算しておく。
これだけでも、家計の見え方はかなり変わります。
次に、
マンションなら管理費・修繕積立金の将来増額を前提に置くこと
です。
国土交通省のガイドライン改定が示すように、将来不足する積立計画は珍しくありません。今の数字だけで安心しないことが大切です。
そして三つ目は、
住居費総額を、手取りに対して重すぎない水準に抑えること
です。
「銀行が貸してくれる金額」ではなく、
「教育費、老後資金、新NISA積立を維持してもなお払える金額」
で考える。
これはかなり重要です。
四つ目は、
生活防衛資金を厚めに持つこと
です。
利上げ局面は、単にローンだけでなく、景気や雇用、物価も揺れやすい局面です。
家計の余白は、投資のリターン以上に大事です。
まとめ
今回のテーマである「日銀が1%へ利上げしたら、家計はどう変わるのか」を整理すると、まず前提として、2026年6月10日時点では政策金利は0.75%で、1%は有力な市場予想です。まだ確定ではありません。
そのうえで、4,500万円・35年変動ローンの参考試算では、金利0.6%で毎月返済は約11.9万円、0.85%で約12.4万円です。
金利が0.25%上がるごとの増加は月5,000円前後に見えます。
ただし、本当に家計へ効くのはそこだけではありません。
マンションでは管理費・修繕積立金・固定資産税を含めた総住居費が重くなりやすく、戸建てでも自主管理の修繕原資は必要です。
特にマンションは、国土交通省も警戒する通り、修繕積立金の将来増額リスクを見落としやすいです。
今回の結論を一言でまとめると、
日銀が1%へ利上げしたときに家計へ本当に効くのは、住宅ローン返済額の微増そのものより、管理費・修繕積立金・物価高・教育費まで含めた“総住居費の重さ”であり、4,500万円・35年変動ローンでは、マンションのほうが固定費上昇の影響を受けやすい。一方で戸建ても修繕費を見落とせば同じで、投資家視点では「いくら借りられるか」ではなく「将来の変化に耐えながら資産形成を続けられるか」で判断すべき
ということです。
【重要】免責事項
投資判断の最終責任: 本記事で紹介している銘柄やセクター、分析内容は、情報提供および学習の啓発のみを目的としており、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資に関する最終決定は、必ずご自身の判断と責任で行ってください。
成果の非保証: 過去のデータや予測は、将来の投資成果を保証するものではありません。市場環境の変化により、資産が減少するリスクがあります。
情報の正確性: 2026年時点の情報に基づき作成されていますが、その正確性や完全性を保証するものではありません。最新の業績やニュースは、必ず各企業のIRサイトや一次資料でご確認ください。
損失の補償: 本記事の内容に基づいて被ったいかなる損害(直接的・間接的を問わず)についても、筆者は一切の責任を負いません。
監修者:市川雄一郎
GFS校長。CFP®。1級ファイナンシャル・プランニング技能士(資産設計提案業務)。日本FP協会会員。日本FP学会会員。 グロービス経営大学院修了(MBA/経営学修士)。
日本のFPの先駆者として資産運用の啓蒙に従事。ソフトバンクグループが創設した私立サイバー大学で教鞭を執るほか、講演依頼、メディア出演も多数。著書に「投資で利益を出している人たちが大事にしている 45の教え」(日本経済新聞出版)
公式X アカウント 市川雄一郎@お金の学校 校長




