
監修者:市川雄一郎
GFS校長。CFP®。1級ファイナンシャル・プランニング技能士(資産設計提案業務)。日本FP協会会員。日本FP学会会員。 グロービス経営大学院修了(MBA/経営学修士)。
日本のFPの先駆者として資産運用の啓蒙に従事。ソフトバンクグループが創設した私立サイバー大学で教鞭を執るほか、講演依頼、メディア出演も多数。著書に「投資で利益を出している人たちが大事にしている 45の教え」(日本経済新聞出版)
公式X アカウント 市川雄一郎@お金の学校 校長
先に結論を言うと、今のカフェ市場は
「需要はあるのに、やり方を間違えると簡単に苦しくなる市場」
です。
帝国データバンクによると、2024年度の「喫茶店」の倒産は2025年2月までで66件に達し、年度累計で過去最多を更新する可能性があるとされました。背景には、コーヒー豆・人件費・テナント料の高騰、価格転嫁の難しさ、そして大型チェーンやコンビニとの競争激化があります。つまり、カフェ市場は“需要が戻ったから安泰”ではなく、回復と淘汰が同時進行している市場です。
その中でサンマルクカフェは、一度は最盛期407店舗まで広げながら、2026年5月時点で290店舗まで縮小しました。Yahoo!ファイナンス上の東洋経済オンライン記事では、同社社長が「不採算のスクラップを終え、再び成長期に突入している」と述べ、2029年3月期に370店舗まで回復させる方針を示しています。つまりサンマルクは、いま「縮小均衡」ではなく、大量閉店を経て、改めて勝てる店だけで伸ばし直す局面に入っています。
投資家として重要なのは、この動きを
「失敗した会社の後始末」
と見るのではなく、
「カフェ市場の勝ち方が変わり、その変化に会社が追いつこうとしている」
と読むことです。
そして同じカフェ市場の中でも、スターバックスはブランドと体験価値、コメダはFCと郊外滞在型、ドトールや星乃珈琲は立地と多ブランド運営、タリーズは商品開発と店舗品質というように、勝ち方がかなり分かれています。だから今のカフェ株を見るときは、「市場が良いか悪いか」より、各社がどんな勝ち筋を持っているかを見たほうが正確です。
以下、
サンマルク大量閉店の本当の意味
カフェ市場の現状
競合比較
倒産が増える中でどこが強いのか
投資家は何を見るべきか
を順番に整理していきます。
カフェ市場の勝ち方が変わったことを示す象徴的な出来事
サンマルクカフェの大量閉店を単なる「コロナで苦しかった」話として片づけると、本質を見誤ります。
Yahoo!ファイナンス上の東洋経済オンライン記事では、同社は最盛期の407店舗から2026年5月時点で290店舗まで縮小した一方、今後は2029年3月期に370店舗まで回復を目指すとしています。ここで重要なのは、会社側がこの縮小を「失敗の継続」ではなく、不採算のスクラップを終えた上での再成長フェーズ入りと位置づけている点です。
サンマルクHDの2026年3月期決算説明資料でも、喫茶事業は売上284億円、利益30億円で、全社利益の40%を担っており、サンマルクカフェ単体では289店舗を運営していると示されています。さらに同資料では、サンマルクカフェを中心とする喫茶事業が、駅前、駅ビル、オフィスビル、商店街、ショッピングセンターなどに展開していることが説明されています。つまり、店舗数を大きく減らしたとはいえ、喫茶事業はなお会社の重要利益源です。
さらに数字を見ると、サンマルクHD全体の2026年3月期売上高は884億円、営業利益は51億円で、前年からそれぞれ24.7%増、41.3%増でした。喫茶事業の売上は284億円、利益は30億円で、全社の中でも収益性の高い柱の一つです。つまり、店舗を減らした結果として、単に規模が小さくなったのではなく、利益を出しやすい形に体質改善しながら再拡大を狙っていると読むのが自然です。
この文脈で、東洋経済記事タイトルにある「目先の数字を追い求めた」という表現は非常に示唆的です。
カフェ業態は、一見すると出店しやすく見えます。
小箱でも出せる。
回転率も高めやすい。
ブランドが当たれば増やしやすい。
しかし、そのぶん立地の質、客層、客単価、原価率、人件費吸収力を見誤ると、店舗数を増やしただけでは利益が残りにくい業態でもあります。
サンマルクの大量閉店は、まさに「数を増やせば勝てる時代」の終わりを象徴しています。
そもそも今のカフェ市場はどうなっているのか
需要回復と倒産増加が同時に起きる、かなり厳しい市場
カフェ市場を語るとき、まず押さえるべきなのは、需要はあるのに、利益は出しにくいという矛盾です。
帝国データバンクは2025年3月、「喫茶店」の倒産動向として、2024年度の倒産が2025年2月までで66件に達し、年度累計で過去最多を更新する可能性があると発表しました。背景として、需要回復は見られる一方、コーヒー豆・人件費・テナント料の高騰、価格転嫁の難しさ、コンビニや大型チェーンとの競争、消費者の節約志向を挙げています。つまり、人はカフェに戻ってきているが、だからといって全ての店が儲かるわけではないのです。
この状況は、投資家目線ではかなり重要です。
なぜなら、カフェ市場は一見すると“回復産業”に見えやすいからです。
人流は戻り、インバウンドも増え、テイクアウトや軽食需要もある。
実際、コメダの2026年2月期決算短信でも、外食需要には緩やかな回復が見られ、インバウンド需要も引き続き好調だったと説明されています。
しかし同時に、同社は原材料価格やエネルギーコスト、人件費の上昇、消費意欲の低下、価値観の変化をリスクとして挙げています。つまり、大手優良チェーンですら「追い風だけの市場」とは見ていません。
ドトール・日レスの決算資料でも同様です。
日本レストランシステムグループの説明では、売上は伸びている一方で、人件費、仕入原価、光熱費などの増加に対して、運営管理を徹底しているとしています。売上高は増えても、セグメント利益は前年を下回る場面があり、売上回復と利益確保が別問題であることがよくわかります。
つまり今のカフェ市場は、
「需要回復で誰でも伸びる市場」ではなく、差別化・価格設定・立地戦略・オペレーション力で勝ち負けがはっきり分かれる市場
です。
倒産が増える一方で、大手や強いブランドは伸びる。
この二極化が、いまの市場の本質です。
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サンマルクカフェはなぜ苦しくなり、いま何を変えようとしているのか
サンマルクカフェのケースを掘ると、今のカフェ市場で何が難しいのかがよくわかります。
東洋経済記事では、最盛期から約3割の店舗を閉じた背景について、単にコロナのせいではなく、大量出店の反動や出店判断の歪みがあったことを示唆しています。タイトルにもあるように、「目先の数字を追い求めた」という反省は、外食やカフェ業態にありがちな罠です。店舗数や売上規模を優先すると、立地の質や収益性が後回しになりやすいからです。
一方で、サンマルクHDの足元は思ったより悪くありません。
2026年3月期は全社売上高884億円、営業利益51億円で増収増益でした。
既存店売上も年間を通して、概ね対前年比100%超で推移しています。
さらに2027年3月期見通しも、売上高930億円、営業利益53億円と、引き続き増収増益を計画しています。
つまりサンマルクは、過去の拡大路線の反省をしつつも、現時点では業績面で立て直しにかなり成功しています。
この会社の見どころは、スクラップを終えたあとに、どういう店を再び増やすのかです。
290店舗から370店舗へ戻す計画は、単に昔の規模へ戻るという話ではなく、勝てる店だけで規模を取り戻せるかのテストでもあります。
過去と同じやり方で増やせば、また同じことが起きる可能性があります。
逆に、商品戦略、立地選定、ブランド設計、業態磨き込みが噛み合えば、サンマルクは“失敗から学んだ再成長企業”として再評価されやすいです。
投資家としてのポイントは、サンマルクカフェを「負け組だった会社」と決めつけないことです。
今はむしろ、閉店で一度軽くなったあと、改めてどこまで勝てるかを試す会社として見るべきです。
ただし、これは再成長ストーリーであって、まだ完成形ではありません。
だから今後の出店精度や既存店売上の質が非常に重要になります。
競合他社はどう戦っているのか
カフェ市場の“勝ち方”は一社ごとにかなり違う
カフェ市場の面白いところは、同じ「コーヒーを出す店」に見えても、実際には各社の勝ち方がかなり違うことです。
投資家としては、この差を見ないといけません。
1. スターバックス
圧倒的ブランドと店舗網で勝つ会社
スターバックス コーヒー ジャパンは、2025年3月末時点で日本国内2,011店舗を展開しています。
これは規模だけ見ても圧倒的です。
スタバの強さは、単にコーヒーを売ることではなく、ブランド体験そのものを売っていることです。
立地の強さ、商品開発力、季節限定商品の話題性、アプリ・リワード施策、居心地、そして“スタバで過ごすこと自体の価値”が大きい。
このため、単純な価格競争に巻き込まれにくいです。
スターバックスの日本事業の細かな収益は公開されていませんが、少なくとも店舗網とブランド力という意味では、カフェ市場で最も強い土台を持つ企業の一つです。
投資家視点では、スタバは日本の上場株として直接買う対象ではありませんが、市場全体を見るベンチマークとして極めて重要です。
「ブランド体験で価格を受け入れてもらえるか」
という点で、スタバは他社の比較対象になります。
2. コメダ
FCと郊外型“長居前提”で勝つ会社
コメダは、今の日本のカフェ市場で最も投資家に人気が出やすい企業の一つです。
2026年2月期の売上収益は572.25億円、営業利益は94.24億円、親会社帰属利益は64.61億円でした。
さらに期末店舗数は1,150店舗に達しています。
コメダの強みは、スタバのような都心ブランド戦略とは違い、郊外ロードサイド型、長居前提、食事込みの高客単価、FCモデルによる資本効率の良さにあります。
同社はコスト高の中でも増収増益を維持しており、これはかなり強いです。
もちろん原材料高の影響は受けていますが、価格改定を進めながらも、需要を大きく損なわずに利益を確保できています。
投資家視点で見ると、コメダの魅力は、
単価を取りやすい
滞在価値が高い
FCで店舗拡大できる
という三点です。
カフェ市場の中でも、かなり「経営として強い」モデルです。
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3. ドトール・日レス
立地と多ブランド運営で勝つ会社
ドトール・日レスホールディングスは、純粋なカフェ単一企業ではなく、ドトールコーヒーグループと日本レストランシステムグループを持つ多ブランド企業です。
2026年2月期第2四半期では、日本レストランシステムグループの売上高は283.45億円、セグメント利益は22.56億円でした。
第3四半期でも売上高は421.15億円と増えていますが、セグメント利益は前年同期比でやや減っています。
つまり、売上は伸ばせてもコスト負担が重く、利益の出し方に工夫が必要な状況です。
ただし、ドトール・日レスの強みは、
駅前・ビジネス立地
ドトール、エクセルシオール、星乃珈琲など多ブランド
価格帯と顧客層の幅
にあります。
とくに星乃珈琲は、ドトールとは違う滞在型・高付加価値型の位置づけで、市場の変化に合わせた“二面待ち”ができるのが強いです。
投資家視点では、ドトール・日レスは「一つのブランド頼みではない強さ」がありますが、そのぶんブランドごとの磨き込みとコスト管理が常に問われます。
4. タリーズ
商品開発力と店舗品質で勝つ会社
タリーズは伊藤園グループに属しており、2025年10月末時点で829店舗を展開しています。
伊藤園の資料では、タリーズは2025年上期、既存店で客数・客単価とも前年を上回り、高品質な原料調達と商品開発が牽引していると説明されています。
さらに売上高と店舗数の推移グラフも示されており、単に店舗数だけでなく、高品質商品で既存店を伸ばす戦い方が見えます。
タリーズの強みは、スタバほど巨大ではなく、コメダほどFC色が強いわけでもない中で、“ちょっと上質”のバランス感を保てていることです。
また伊藤園グループという調達・飲料開発面の強みもあり、店舗と飲料ブランドのシナジーも活かしやすいです。
投資家目線では、上場本体が伊藤園であるため純粋カフェ株ではありませんが、カフェ市場の中で「品質と商品力」で勝つ例として非常に参考になります。
では、倒産する企業が多い中で、どこがどう強いのか
ここからが投資家目線の核心です。
「どこが強いのか」を、単純な売上規模ではなく、勝ち方の質で見る必要があります。
スターバックスの強さ
スターバックスの強さは、圧倒的ブランドと体験設計です。
価格が多少高くても、商品と空間とブランドで納得させられる。
これは、原価高局面でも強いです。
投資家目線で言えば、価格を上げても顧客が離れにくい企業は強い。
スタバはその代表格です。
コメダの強さ
コメダの強さは、郊外型・長居型・食事込み・FC型です。
一杯のコーヒー勝負ではなく、モーニングや食事、滞在価値込みで単価を取る。
さらに本体はFCモデルで効率よく拡大しやすい。
このモデルは、今のコスト高局面でもかなり強いです。
実際、2026年2月期は増収増益で、店舗数も伸びています。
ドトール・日レスの強さ
ドトール・日レスの強さは、多ブランドと立地対応力です。
駅前、ビジネス街、郊外、喫茶、軽食まで、複数の戦い方ができる。
これは市場が変わったときに非常に強いです。
ただし、ブランド数が多いぶん、オペレーションと利益管理は難しくなります。
だから「売上はあるが、利益は工夫次第」という会社でもあります。
タリーズの強さ
タリーズの強さは、商品品質と店舗品質の両立です。
派手に店舗を増やすというより、品質で既存店を伸ばす戦い方をしている。
大きすぎないぶん、ブランドの輪郭が崩れにくいのも利点です。
伊藤園との連携も含め、ブランドの一貫性を保ちやすいのは強みです。
サンマルクの強さと課題
サンマルクの強さは、一度失敗したからこそ、何を削るべきかを学んだことです。
一方で課題は、これからの再拡大が本当に質を伴うのかです。
既存店は堅調で、喫茶事業は利益を出しています。
ただ、再び出店を増やす局面で、昔のような“数合わせ”にならないかは、今後の最大の見どころです。
投資家はサンマルクをどう見るべきか
投資家目線でサンマルクを見ると、今はかなり面白い位置にいます。
なぜなら、
大量閉店の反省が明確
既存店は回復している
喫茶事業は利益を出している
会社全体も増収増益
という、再成長の条件が揃いつつあるからです。
ただし、同時にリスクもあります。
カフェ市場全体はコスト高と競争激化でかなり厳しい。
帝国データバンクが示すように、需要回復があっても倒産は増えています。
つまり、再成長ストーリーを語るだけで勝てる市場ではないのです。
サンマルクが今後評価されるには、370店舗という目標の達成そのものより、
どの立地で、どの業態設計で、どの収益性を持って増やすのか
が重要です。
私は、現時点のサンマルクは、
“過去の失敗を反転材料にできるかを試される再成長株”
として見るのが自然だと思います。
すでに完成された最強企業ではありません。
しかし、過去の大量閉店があったからこそ、「勝てる店舗だけで伸ばす」方向へ変わるなら、再評価の余地は十分あります。
結局、カフェ市場でこれから強いのはどんな会社か
最後に、カフェ市場全体の勝ち筋を整理します。
今後強いのは、単にコーヒーを売る会社ではありません。
私は、次の三つを持つ会社が強いと思います。
1. 価格を上げても納得される会社
ブランド、空間、商品力、体験。
これがある会社は強いです。
スターバックスが典型です。
安さだけでは、原価高時代は戦いにくいです。
2. 客単価を一杯以上で取れる会社
コーヒー1杯だけでなく、食事、デザート、滞在時間、モーニング、物販まで含めて収益化できる会社は強いです。
コメダがわかりやすいです。
サンマルクもここを強められるかが重要になります。
3. 店舗を増やすより、既存店を強くできる会社
今の市場では、闇雲な多店舗展開より、既存店売上と利益率の改善が大事です。
タリーズやコメダ、そして今後のサンマルクも、ここが評価ポイントになります。
おわりに
サンマルクの大量閉店は、一見すると「失敗の歴史」に見えます。
しかし投資家目線で見ると、それはむしろ、カフェ市場の勝ち方が変わったことを最もわかりやすく示した事例です。
店舗数を増やせば勝てる時代ではなくなり、今は
ブランド
立地
客単価
滞在価値
既存店の強さ
がすべて問われています。
その中で、スターバックスはブランド体験で、コメダは郊外FCモデルで、ドトール・日レスは多ブランドで、タリーズは品質で、それぞれ強さを見せています。
そしてサンマルクは、大量閉店を経て、いまようやく「量ではなく質で伸ばす」会社へ変わろうとしています。
今回の結論を一言でまとめると、
今のカフェ市場は需要回復の追い風があっても、原価高と競争激化で簡単に倒れる厳しい市場であり、その中で強いのは「安くたくさん売る会社」ではなく、「価格を受け入れてもらえるブランド」と「一杯以上の価値を売れる会社」である。サンマルクは大量閉店でその教訓を学び、いま再成長を試されている局面にある
ということです。
【重要】免責事項
投資判断の最終責任: 本記事で紹介している銘柄やセクター、分析内容は、情報提供および学習の啓発のみを目的としており、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資に関する最終決定は、必ずご自身の判断と責任で行ってください。
成果の非保証: 過去のデータや予測は、将来の投資成果を保証するものではありません。市場環境の変化により、資産が減少するリスクがあります。
情報の正確性: 2026年時点の情報に基づき作成されていますが、その正確性や完全性を保証するものではありません。最新の業績やニュースは、必ず各企業のIRサイトや一次資料でご確認ください。
損失の補償: 本記事の内容に基づいて被ったいかなる損害(直接的・間接的を問わず)についても、筆者は一切の責任を負いません。
監修者:市川雄一郎
GFS校長。CFP®。1級ファイナンシャル・プランニング技能士(資産設計提案業務)。日本FP協会会員。日本FP学会会員。 グロービス経営大学院修了(MBA/経営学修士)。
日本のFPの先駆者として資産運用の啓蒙に従事。ソフトバンクグループが創設した私立サイバー大学で教鞭を執るほか、講演依頼、メディア出演も多数。著書に「投資で利益を出している人たちが大事にしている 45の教え」(日本経済新聞出版)
公式X アカウント 市川雄一郎@お金の学校 校長




