銀行の資産運用商品として有名な定期預金。
銀行で普通預金口座を作成する際、「ご一緒に」と進められた経験がある方も多いのではないかと思います。
定期預金は資産運用の初心者にとってわかりやすい仕組みであり、かつ手軽に始められることからも「早速始めてみようか」と検討している人もいるかもしれません。
しかし一方で、定期預金について調べてみると、「意味がない」という趣旨のネガティブな情報も散見され、
・やめといた方がいいのか?
・どうして意味がないのだろう?
と不安を抱えてしまう要素もあると言えます。
そこで本記事では、「定期預金とはどういったものか」を改めて簡単に確認すると共に、「意味がない」という文脈で語られている理由や、始める際の注意点について解説していきます。ぜひ最後まで読み進めてみてください。
監修者:市川雄一郎
グローバルファイナンシャルスクール校長。CFP®。1級ファイナンシャル・プランニング技能士(資産設計提案業務)。日本FP協会会員。日本FP学会会員。 グロービス経営大学院修了(MBA/経営学修士)。
日本のFPの先駆者として資産運用の啓蒙に従事。ソフトバンクグループが創設した私立サイバー大学で教鞭を執るほか、講演依頼、メディア出演も多数。著書に「投資で利益を出している人たちが大事にしている 45の教え」(日本経済新聞出版)
公式X アカウント 市川雄一郎@お金の学校 校長
目次
1.定期預金とは
まずはじめに「定期預金とはどういうものか」について、簡単におさらいしておきましょう。
・指定した期間中、口座にお金を預けておく商品
定期預金とは預金商品の一つで「あらかじめ預入期間を決めておき、その期間中はお金を預けたままにする」というものです。
指定できる期間については金融機関ごとに違いはありますが、数週間程度の短い期間から数ヶ月・数年の長い期間まで、色々と設定することも可能です。
・普通預金との違いは「引き出しの自由」と「金利」
定期預金と普通預金の違いは「預けたお金の、引き出しの自由度」と「金利」の2点です。
普通預金の場合、預け入れたお金を、必要な時にいつでもATMから引き出し可能です。しかし、定期預金の場合は、指定した期間中は基本的に自由に引き出すことができません。
ここだけ切り抜くと、すでに「定期預金を持つ意味がないのでは?」と考えてしまうところですが、定期預金は自由度が少ない分、金利が高くなる傾向があるのです。
日本金融通信社のデータによると、2025年1月6日時点の普通預金の平均金利は「0.094%」となっている一方、例えば5年定期預金の平均金利を見てみると「0.209%」となっていることがわかります。また、金融機関によっては、1%程度の金利がつくところもあるなど、普通預金に比べて圧倒的にお得な金利設定となっているのです。
簡単に言えば、
普通預金→金利は低いが、お金を自由に引き出せる
- 定期預金→お金の引き出しはできないが、高い金利がつく
という理解になります。
2.定期預金が意味がないと言われる理由
前章で、定期預金について簡単に確認したところですが、この定期預金がなぜ「意味がない」と言われるのでしょうか。
それは定期預金に以下の3つの性質があることによります。
お金を大きく増やすことはできない
- 資金が拘束される
- インフレリスクに弱い
一つずつ説明していきます。
・お金を大きく増やすことはできない
「意味がない」と言われる理由の一つに「お金を大きく増やすことはできない」という点が挙げられます。
1章で確認した通り、定期預金は普通預金に比べると確かに金利が高めですが、それでも1%以下のところがほとんどです。
もし「今ある資産を2倍、3倍と、今後もっと増やしていきたい」と思っている場合、この金利水準では「お金が増えた」という実感を得ることは難しくなります。
故に「定期預金をやってもお金が増えないので、意味がない」という文脈になりやすいと言えるでしょう。
・資金が拘束されるストレスが大きい
「資金が拘束される」という部分も定期預金は意味がないとされる理由として挙げられる部分です。
こちらも1章にて確認した通りですが、定期預金はそもそも「一定期間、お金を預けっぱなしにしておく」ことが前提の商品です。つまりその間はお金を自由に使うことができなくなります。
仮に欲しいものがあっても「定期預金にお金を入れてしまって手元に余裕がない」となれば、我慢しなければならない状況もあるかもしれません。その我慢が報われればいいですが、得られるリターンは、前項で触れた通りあまり大きいものではありません。
上記の状況であれば、資金が拘束されるストレスの方が大きく感じる人が大半でしょう。そのため「やっていても意味がない」と言われる理由になるのだと言えます。
・インフレリスクに弱い
定期預金のインフレリスクに対する弱さも、意味がないと言われる理由の一つです。
インフレリスクとは「物価が上昇することによって、お金の価値が目減りするリスク」を指します。
定期預金にお金を預けた場合、「預け入れた金額自体が減ってしまう」ことは、基本的にはありません。100万円を預けたら、基本的に100万円を下回ることはない、ということです。
しかし、世の中の物価は常に変化します。政府で「毎年2%のインフレ」を目標に掲げていることもあり、昨今でも様々なものが値上がりしています。
ある品物が今は100万円で購入できるとしても、インフレが進むことでこの先で100万円以上の値段になってしまうことも十分考えられます。もし、実際に2%ずつインフレが進むのであれば、100万円のものは10年で120万円に、20年で150万円弱に値上がりするのです。
そんな時に、定期預金にお金を入れていたとしても、もらえる金利は、先述の通り高くて1%。毎年2%のインフレと比較すると、物価があがるスピードの方が早いと言えます。
つまり、実質的にお金が目減りしている状態になるのです。
「この先インフレが続いても資産を守れるように」という目的で資産運用を始める方も多くいると思いますが、定期預金の金利ではインフレから資産を守り抜くことができない、という文脈になってしまいます。
上記のことも「意味がない」との側面で語られる要因の一つです。
3.定期預金のメリット
前章にて「定期預金は意味がない」と言われる理由について解説しました。内容を聞けば頷ける部分が多かったと感じた方もいるでしょう。
では、定期預金には全くいいところがないのでしょうか?
答えはNO。
定期預金の性質も、視点を変えればメリットと言える部分ももちろんあります。
どのようなメリットなのか、以下、解説していきます。
・元本割れの心配がない
一つ目は「元本が保証される」という部分です。
定期預金もあくまで「預金口座」であり、普段使っている普通預金と同じように、持っているだけでお金の数字が減ってしまうということはありません。
また、普通預金と同じく「預金保険制度」の対象であるので、銀行が破綻した際に1000万円までの資産は保護されることになります。
さらに、例えば定期預金を途中で解約した場合でも、受け取る利息は少なくなってしまいますが、元本割れにはならず、預けたお金自体を安全に管理することが可能なのです。
こうした安全性の高さは、定期預金の大きなメリットのひとつといえます。
・普通に貯金するよりは金利が高い
普段使うお金を普通預金口座に入れて管理するのは当然ですが、その延長で、そのまま普通預金口座で貯金をしている、という人も多いのではないでしょうか。
これまででも述べてきたように、そもそも定期預金は「普通預金よりも高い金利がつく」預金商品です。
貯金している「いますぐ使わないお金」を、そのままなんとなく普通預金口座に置いておくよりも、定期預金に移した方が金利によってもらえる金額は多くなります。
また「普通預金にそのまま貯金している」人が重要視しているのは、おそらく前項でも述べた「安全性」でしょう。
つまり運用においてあまりリスクを取りたくない、という考えを持っているのではないかと思います。
上記の考えを持っている人にとって、「普通預金と同じく元本保証がありながらも、普通預金よりも高い金利で運用することができる」という、メリット側面の文脈で捉えられるのではないでしょうか。
・預入期間を選択できる
預金期間を選択できることもメリットのひとつとして挙げられます。
金融機関ごとに詳細のラインナップの違いはあるでしょうが、1ヶ月や2ヶ月といった短期間のものから、1年や5年、10年といった長期間のものまで、様々な期間設定の定期預金があるのです。
人によってライフプランは様々。
その計画に合わせて運用期間を設定することができることも大きなメリットといえます。
4.定期預金を始めるなら気をつけたいこと
「定期預金は意味ない」と語られがちな定期預金のメリットもわかったところで、始めようかとまだ迷っている人もいると思います。
そこで本章では、「定期預金を始めるならこの点に気をつけた方が良い」という点について解説します。
具体的には以下の2点です。
- 運用の目標や目的を設定する
- 金融機関ごとの金利を比較する
一つずつ説明していきます。
・運用の目標や目的を設定する
まず何よりも、定期預金で運用する目標や目的をはっきり決めることが大切です。
例えば預けるお金の額や、将来で使う予定の有無、期間や目指したい運用成果など、「自分は、何のためにどういった資産運用をしたいのか」という点を、しっかり考えてみてください。
目標や目的が決まったら「それを達成するために、定期預金という手段は有効と言えるか」と、考えてみると良いです。
目的や運用のロードマップをはっきりさせないまま定期預金を始めてしまうと、「使いたい時に使えない」もしくは「思ったほど成果につながらない」といったように「定期預金なんてやらない方がよかった」という文脈になりやすいといえます。
なお、これまで説明したように、定期預金は普通預金よりも金利が高く、安全性も高い反面、資金拘束の負担や大きくお金を増やすことには向かないという面があります。
そのため、
・1~3年程度の間に確実に使う予定がある資金をひとまず運用したい
・資産を増やすよりも大きく減らすことがないようにしたい
・リスクを取るくらいなら、運用成果は少なくても良い。
と言ったような状況において、定期預金が運用の手段の一つとして有効と言えるでしょう。
反対に、
・大きく資産を増やしたい
・自分のタイミングで自由に投資商品を選べる状態にしておきたい
などと考える場合は、定期預金は避けた方が無難といえます。
・金融機関ごとの金利を比較する
定期預金はあくまで各金融機関が取り扱う「金融商品」の一つです。
そのため、金利は全て一律で決まっているわけではなく、金融機関ごとに異なります。
もし定期預金を始める、という前提で考えるのであれば、金融機関ごとの金利の違いを、ぜひ比較してください。
例えば、同じ運用条件でも「0.2%」と設定しているところもあれば、「1%」と設定しているところもあります。コンマ1の違いかもしれませんが、できるだけ高い金利を設定している金融機関で運用できるに越したことはありません。
金融機関の使い勝手や管理の問題もあるかと思いますが、この辺りが気にならない場合、ぜひ金融機関ごとの金利の差を比較し、できるだけ高いところを選んでみると良いでしょう。
もしあなたが「今後のインフレが心配なので、資産運用を始めようと思っている」なら、以下の講座をぜひ覗いてみてください。インフレに負けないよう安全にお金を増やす方法を、無料で学ぶことができます。
5まとめ
いかがでしたか。
定期預金は「資産維持」の観点でみると有効な側面がありますが、大きく資産を増やすための手段としては不向きなため「意味がない」という内容で語られやすいです。
定期預金を検討していた、という方はぜひ本記事を元に、運用の目的や定期預金が自身の投資戦略において有効と言えるかどうか、考えてみてください。
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