外貨に関心を持つのはどんなときでしょう。たとえばーーー
ヨーロッパ旅行しようと思っていたけど高いから台湾旅行に変更しちゃった
ガソリン価格が上がっちゃって、商売あがったりだなあ
最新のiPhone買おうと思ったらけど高すぎてびっくり!
これらの方々が不満に思い悩んでいることの原因はみんな、一向に止まらない「円安」のせいです。
かつて「有事の円」「強い円」ともてはやされた日本円は、今や先進国通貨の中で最弱となり、日本人は世界の中でどんどん貧乏になっているのです。
「こんな日本にだれがした!」ーーなどと嘆いていても仕方ありません。
ご自身の資産を防衛するためにも、ここはひとつ、日本円以外の通貨=「外貨」にも目を向け、通貨安のリスクに対処しなくてはなりません。
そこで本記事では、お金の学校グローバルファイナンシャルスクール(GFS)の監修のもと、個人投資家である筆者が、外貨預金の基本とメリット・デメリット、外貨別の特徴、おすすめの通貨や金融機関の選び方について解説していきます。
外貨預金に興味がある方になるべく有益な情報を提供するよう努めますので、最後まで目を通してもらえたら幸いです。
★外貨預金をいまやるべきかどうかについて書いた記事もありますので、あわせてお読みください。
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監修者:市川雄一郎
グローバルファイナンシャルスクール校長。CFP®。1級ファイナンシャル・プランニング技能士(資産設計提案業務)。日本FP協会会員。日本FP学会会員。 グロービス経営大学院修了(MBA/経営学修士)。
日本のFPの先駆者として資産運用の啓蒙に従事。ソフトバンクグループが創設した私立サイバー大学で教鞭を執るほか、講演依頼、メディア出演も多数。著書に「投資で利益を出している人たちが大事にしている 45の教え」(日本経済新聞出版)
公式X アカウント 市川雄一郎@お金の学校 校長
目次
①外貨預金の基本とメリット・デメリット
まず最初に、外貨預金の基本とメリット(長所)・デメリット(短所)をさらっと説明しておきます。
特に、リスク(デメリット)を知らずに預金をすると大損することもありますので、ざっと頭に入れておきましょう。
1-1 外貨預金の基本
外貨預金とは、日本円ではなく、米ドルやユーロなどの外国通貨を金融機関に預金することです。
日本の普通預金と異なり、為替レートの変動により、日本円に換算した価値が上下します。
また、日本の普通預金と違い、通貨によっては日本の預金よりも金利(利息)がとても高く、長期で預金しておくのに向いています。
外貨預金を扱っている銀行で預金が可能ですが、取り扱い通貨の種類は金融機関によって、また普通預金か定期預金によって異なります。
以下でメリットとデメリットの両面を見ておきましょう。
1-2 外貨預金のメリット
外貨預金には以下のようなメリット(長所)があります。
- 高金利:日本円の普通預金に比べて、外貨預金は数十倍、数百倍の高い金利(利息)がつくことがあります。
- 為替差益の可能性:為替レートの変動を利用することで、為替差益を得ることができます。
- 預金期間の細分化:預金の期間を1ヶ月、2か月、3ヶ月、6か月、1年、2年、3年、4年、、、と細かく区切って選択できます。
- 投資への活用: 一部の金融機関では、外貨預金を外国株や外債への投資に活用できる場合があります。
- 海外取引の利便性:海外旅行時に現地のATMで外貨を引き出したり、国際送金に利用したりすることができます。
- 資産の分散とリスクヘッジ:外貨を保有することで、日本円に依存しない資産の分散とリスクヘッジが図れます。
1-3 外貨預金のデメリット
外貨預金には以下のようなデメリット(短所)があります。
- 為替リスク:為替レートの変動により、日本円に戻した際に元本割れをするリスクがあります。
- 為替手数料:外貨から円への替えや、円から外貨への替えには往復で為替手数料がかかるため、頻繁な取引がコストを増やす可能性があります。
- 元本保証の欠如:外貨預金は一般に元本保証がないため、預金保険の対象外です。預金していた銀行が破たんした場合、元本の保護がされません。
- 金利の変動:外貨預金の金利は変動することがあり、予想外の金利水準で運用することがあるかもしれません。
- 通貨価値の低下:高インフレ率国の通貨を預金すると、その通貨の価値が時間の経過とともに低下し、実質的な資産価値が減る可能性があります。
- 政治・経済の不安リスク:政治や経済が不安定な国の通貨を預金すると、政策変更や経済危機で価値が急落する可能性があります。
メリットばかりに目がいきがちですが、リスクも多いのが外貨預金の特徴です。
高い金利に誘惑されて預金すると、思わぬしっぺ返しを受けるので注意しましょう。
外貨預金のメリットとデメリットについては、以下の記事でもう少し細かく書いています。
②外貨預金におすすめの通貨と特徴
外貨預金を始めるならまず安全な通貨を選ぶことです。
前章で説明した通り、いたずらに高い金利の通貨を選ぶと、不安定な為替レートやインフレリスクで思わぬ損失を受けることがあるからです。
以下に安全な外貨の特徴を挙げておきます。
- 安定性:主要な通貨は政治的・経済的に安定しており、通常は大きな価値の変動が少ない特徴があります。
- 流動性:大手銀行や為替市場で広く取引されており、流動性が高いので取引が比較的容易です。
- 世界的に認知された通貨:世界中で広く使用され、国際的な信頼性が高い通貨です。
- 低リスクの預金先:一般的には信頼できる金融機関で預金することができます。
もちろん安全と言っても、予期せぬ政治・経済不安などで為替レートが大きく変動しますので注意は必要です。
以下に外貨預金で人気の安全性の高い通貨の特徴をまとめました。
米ドル(USD)
米ドル(USD)は、世界で最も取引されている通貨であり、信頼性が高い通貨として広く認識されています。
米国経済の安定性から、米ドルは他の通貨に比べて相対的に安定しており、外貨預金の初心者にもおすすめです。
また、米ドルの金利は、日本円に比べて高い傾向があり、利息収入を期待できるのも魅力の一つです。
為替レートの変動も比較的穏やかで、大きなリスクを取りたくない投資家にとって適しています。
ユーロ(EUR)
ユーロ(EUR)は、ヨーロッパの多くの国で使用されている通貨で、取引量も多く、流動性が高いです。
ユーロ圏の経済は多様であり、安定感があります。
ユーロは、米ドルと並んで世界の基軸通貨の一つであり、信頼性があります。
金利は米ドルと同程度かやや低いことが多いですが、為替の安定性を求める場合に適しています。
ユーロは、米ドルと組み合わせて分散投資するのに良い選択肢です。
オーストラリアドル(AUD)
オーストラリアドル(AUD)は、高金利通貨として知られています。
オーストラリアの経済は資源国としての側面が強く、特に鉱物資源の価格に影響を受けやすいです。
そのため、金利も高めに設定されることが多く、利息収入を狙う投資家にとって魅力的です。
しかし、資源価格の変動により為替レートも影響を受けやすく、リスクも伴います。
経済の安定性を考慮しつつ、高金利を享受したい場合におすすめの通貨です。
その他のおすすめ通貨
その他のおすすめ通貨としては、カナダドル(CAD)、ニュージーランドドル(NZD)、スイスフラン(CHF)などが挙げられます。
カナダドルは、資源国であるカナダの経済に依存しており、高金利と安定性を兼ね備えています。
ニュージーランドドルも同様に高金利通貨であり、リスクを取りつつ高いリターンを狙いたい投資家に適しています。
スイスフランは、リスク回避の通貨として知られており、安全資産としての役割を果たします。
外貨預金におすすめの通貨一覧
以下は外貨預金に適した安全な通貨一覧とその特徴およびリスクです。
通貨 | 特徴 | リスク |
---|---|---|
アメリカドル(USD) | 基軸通貨として信頼性が高い | 世界経済の影響を受けやすい |
ユーロ(EUR) | 欧州連合の共通通貨で安定 | EU内部の経済格差や政治リスク |
イギリスポンド(GBP) | 歴史的に安定した通貨 | Brexit後の経済変動リスク |
スイスフラン(CHF) | 安全資産として評価が高い | スイス経済の小規模さによる影響 |
カナダドル(CAD) | 資源国であり安定 | 資源価格の変動に影響を受ける |
オーストラリアドル(AUD) | 資源国で経済的に安定 | 中国経済の影響を強く受ける |
ニュージーランドドル(NZD) | 高金利通貨で安定性が高い | 農業依存が高く天候リスクがある |
シンガポールドル(SGD) | アジアの金融中心地で安定 | 地域の経済状況に影響を受ける |
香港ドル(HKD) | 米ドルにペッグされて安定 | 中国の政治経済の影響 |
ノルウェークローネ(NOK) | 資源国で安定性が高い | 石油価格の変動に影響を受ける |
リスクが大きいが金利と経済成長が魅力の通貨一覧
以下は価格変動リスクが高いけれど、金利が高く、長期では国の成長とともに価値が上がる可能性のある通貨です。
通貨 | 特徴 | リスク |
---|---|---|
南アフリカランド(ZAR) | 高金利で魅力的 | 政治的リスクや経済不安定性 |
ブラジルレアル(BRL) | 高金利で成長期待 | 政治不安やインフレリスク |
インドルピー(INR) | 高成長期待 | インフレ率や政治不安定性 |
メキシコペソ(MXN) | 高金利で米国との経済関係強い | 政治不安や経済変動リスク |
インドネシアルピア(IDR) | 高成長期待 | インフレ率や政治不安定性 |
ベトナムドン(VND) | 高成長期待 | 経済的・政治的不安定性 |
政治的経済的にまだ不安定な国の通貨は、金利こそ高いものの、デフォルト(国債の債務不履行)で国際的な信用を失ったり、身勝手な金融政策で高いインフレ(物価高)が発生し、通貨の価値が短期間で一気に急落する可能性があります。
ここ数十年でも、タイに始まるアジア通貨危機、アルゼンチンのデフォルト、トルコリラの暴落などで通貨が著しく下落しました。
また、ロシアのルーブルはウクライナ侵攻で国際的な金融制裁を受け、価値が急落し、ほぼ取引できない通貨になりました。
いくら金利が高くても貨幣の価値が急落したら、円に戻したときに相当な損失となります。
もしこれらの通貨を預金する場合は、なくなっても生活に支障をきたさない「余裕資金」でやりましょう。
③金融機関のサービスと選び方
3-1 外貨預金をする金融機関の選び方とポイント
外貨預金を選ぶ際のポイントとしては、安全性、手数料、金利、サービス内容の比較が重要です。
手数料については、為替手数料や口座維持手数料が含まれますが、これが高いと利益が減少するため、なるべく安い金融機関を選ぶのがおすすめです。
金利については各金融機関でそれほど大きな差はありません。
一般的には、一般の銀行に比べネット銀行の方が、手数料が低く、金利が高めに設定されています。
サービス内容としては、それぞれの金融機関が外貨預金の口座を増やす目的でのキャンペーンを打つことあがります。
預金の日本円から直接外貨預金に移行する場合や新規で口座を開くとき、あるいは取扱量を増やしたい外貨がある場合などに、期間限定で金利を特別高く設定したりします。
これらは各銀行のホームページでチェックしましょう。
3-2 メガバンクの外貨預金サービス
三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行などの日本のメガバンクは、多様な外貨預金サービスを提供しています。
これらのメガバンクは、信頼性が高く、幅広い通貨に対応しており、安心して利用できます。
円の普通預金口座を持っている人も多く、外貨との交換がやりやすいという側面もあります。
円の普通預金から外貨に換えると優遇金利や為替手数料の優遇が得られるキャンペーンもあります。
初めての外貨預金でも安心して利用できるのが特徴です。
一方で実店舗の銀行窓口で手続きすると、為替手数料などが高くなるのがネックです。
メガバンクもネットバンキング・サービスをしていますので、窓口ではなくネットで手続きすることをおすすめします。
3-2 ネット銀行の外貨預金サービス
ソニー銀行、住信SBIネット銀行、auじぶん銀行などのネット銀行は、手数料の安さやオンラインでの手軽な取引が魅力です。
下記で外貨預金の金融機関ランキングを掲載しましたが、ネットバンクは多くの項目で上位にランクしており、メガバンクを凌駕しています。
金利や為替手数料だけでなく、外貨情報の提供や取り扱いメニューが豊富なことも支持されている理由です。
ネット銀行は、手軽に取引できるため、忙しいビジネスマンや投資初心者に人気があります。
もうメガバンクに頼らず、給与・生活口座もネット銀行だけという人が増えており、そうした方なら外貨とのやり取りも抵抗なくできますね。
3-4 外貨預金できる銀行の人気ランキング
以下はオリコンが外貨預金利用者4000人以上の顧客満足度調査をもとにした毎年恒例の「外貨預金ランキング」です。
手数料・金利・入出金のしやすさ・定期預金・積立預金などの項目の満足度を点数化しています。
順位 | 金融機関 | 得点 |
1 | ソニー銀行 | 70.1点 |
2 | 住信SBIネット銀行 | 68.9点 |
3 | auじぶん銀行 | 67.9点 |
4 | SMBC信託銀行プレスティア | 67.7点 |
5 | 三井住友信託銀行 | 67.6点 |
6 | SBI新生銀行 | 67.1点 |
7 | 楽天銀行 | 66.9点 |
8 | PayPay銀行 | 66.3点 |
9 | 三井住友銀行 | 65.9点 |
10 | 三菱UFJ銀行 | 65.2点 |
11 | イオン銀行 | 63.9点 |
12 | みずほ銀行 | 63.1点 |
こうしてみるとメガバンクは下位を独占していますね。安全性が高い半面、手数料などが高いことがネックのようです。
当たり前ですが、上位行は項目別でも上位を独占しています。下記は各項目のベスト3です。
このほか、取引メニューや提供情報の充実度でもソニー銀行は1位でした。
外貨預金ではさまざまな側面でネット銀行がメガバンクより有利ということは言えるかもしれません。
まとめ
外貨預金は、為替差益と高金利を狙うことができる魅力的な投資手段です。
しかし、為替リスクや手数料、その国の政治・経済の不安リスクなどのデメリットも存在するため、慎重な選択が求められます。
特にレートや金利にかかわる為替相場に関しては、たくさんのファクター(要因)が働き、世界で24時間動き続けています。
外貨預金の基本とメリット・デメリット、外貨別の特徴、金融機関のサービスと選び方など、ここに書いたことはごく初歩的な内容ですので、本当に極めたければさらなる金融・経済の知識を身につけることが不可欠です。
わたしたちお金の学校GFS(グローバルファイナンシャルスクール)では、投資にかかわりの深い金融・経済の知識を高める基礎講義も充実させています。
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