【完全解説】日経平均10万円はいつ来る?5つの根拠・潜むリスクと個人の資産防衛術

【完全解説】日経平均10万円はいつ来る?5つの根拠・潜むリスクと個人の資産防衛術

かつて「失われた30年」と揶揄され、デフレと停滞の象徴であった日本経済が、大きな歴史的転換期を迎えています。

2024年2月、日経平均株価はバブル期の最高値(3万8915円)を34年ぶりに更新しました。そして現在、市場の専門家やグローバル投資家の間では、単なる一過性の株高にとどまらず、「日経平均株価10万円」 という言葉が現実味を帯びたシナリオとして真剣に議論されています。

「日経平均が10万円になるなんて、浮かれた楽観論に過ぎないのではないか?」 「株価がそこまで上がるなら、日本経済は豊かになるはずでは?」

そう疑問に思う方も多いでしょう。しかし結論から言えば、日経平均10万円の達成は十分に起こり得る未来であり、同時に「国民全員が豊かになる夢のような未来」を意味するわけではありません。

本記事では、金融や投資の知識が全くない初心者の方でも本質を理解できるよう、以下の4つのテーマを体系的に解説します。

監修者:市川雄一郎 監修者:市川雄一郎 
GFS校長。CFP®。1級ファイナンシャル・プランニング技能士(資産設計提案業務)。日本FP協会会員。日本FP学会会員。 グロービス経営大学院修了(MBA/経営学修士)。
日本のFPの先駆者として資産運用の啓蒙に従事。ソフトバンクグループが創設した私立サイバー大学で教鞭を執るほか、講演依頼、メディア出演も多数。著書に「投資で利益を出している人たちが大事にしている 45の教え」(日本経済新聞出版)

公式X アカウント 市川雄一郎@お金の学校 校長

  1. なぜ「10万円」を目指せるのか? 日本経済を突き動かす5つの構造変化

  2. 「日経平均10万円」はいつ来るのか? 最速・標準・遅延の3つのシナリオ

  3. 10万円時代に潜む「光と影」:私たちが直面する4大リスク

  4. 【資産防衛術】激動の時代を生き抜くための「金融・投資リテラシー」

第1章:「日経平均10万円」の根拠〜日本経済を突き動かす5つの構造変化〜

日経平均株価が10万円に達するためには、現在の水準からおよそ2.5倍以上に成長する必要があります。この数字は一見すると無謀に見えますが、日本経済の内部で起きている「5つの構造変化」を紐解くと、極めてロジカルな帰結であることがわかります。

1. 企業の稼ぐ力(EPS)の構造的上昇

株価の基本は「株価 = EPS(1株あたり利益) × PER(株価収益率)」という掛け算で決まります。 PERが市場の期待感を表す指標であるのに対し、EPSは「企業が実際にいくら稼いだか」を示す実力値です。

バブル期の1989年、日経平均が3万8915円をつけた際、EPSはわずか700円程度でした。当時のPERは60倍近くまで買われており、実力に伴わない典型的な「バブル(泡)」だったのです。

しかし現在の日本企業のEPSは、海外事業の拡大、コスト構造の改善、値上げの浸透などにより大きく増加しています。仮に日経平均のPERを世界標準である15〜16倍程度と仮定した場合、EPSが約6,250円〜6,660円に達すれば、数学的に日経平均10万円が成立します。 過去10年間の日本企業の利益成長ペースを維持できれば、EPSがこの水準に達することは決して不可能な領域ではありません。

2. 「脱デフレ」と名目経済の拡大(インフレ効果)

株価や企業の売上高・利益は、すべて実質値ではなく「名目値」で計算されます。

長らく日本を苦しめてきたデフレ(物価下落)の時代は、企業の売上数値が自然と縮小する時代でした。しかし、世界的な原材料高や人件費の上昇に伴い、日本経済は「マイルドなインフレ(物価上昇)」のフェーズへと完全に移行しました。

物価が上がると、企業の製品やサービスの価格が上がります。売上高(名目値)が増えれば、利益の額面も増えます。例え製造・販売する数量が変わらなくても、「インフレによって金額の数字自体が大きく膨らむ」ため、株価も名目値として上方へ押し上げられるのです。

3. 東証主導の「資本効率改革」と自社株買い

2023年以降、東京証券取引所はPBR(株価純資産倍率)が1倍を割れている企業に対して、激しい改善要求を行いました。これを受けて日本企業は、過去溜め込んできた内部留保(現預金)を活用し、株主還元へと大きく舵を切りました。

特に効果的なのが「自社株買い」です。企業が市場から自らの株式を買い取って消去すると、市場に流通する発行済株式数が減ります。その結果、全体の利益が変わらなくても「1株あたりの利益(EPS)」が跳ね上がります。この自社株買いの加速が、株価を力強く下支えしています。

4. グローバル地政学における「日本の再評価」と製造業の回帰

米中対立の激化や地政学リスクの高まりを受け、世界の投資マネーは巨大な資金の引き揚げと再配置を進めています。中国市場への投資リスクが懸念される中、アジアにおいて「法制度が整備され、地政学リスクが低く、政治が安定している巨大資本市場」として選ばれているのが日本です。

さらに、半導体工場などの国内建設ラッシュに見られるように、過度な円安と世界の供給網(サプライチェーン)見直しを背景として、「日本への製造業回帰」が急速に進んでいます。海外の機関投資家にとって、日本株は今や「持っていなければならない必須のアセット(資産)」へと変貌したのです。

5. 新NISAと「貯蓄から投資へ」の本格化

国内の個人投資家の動向も無視できません。日本国内に存在する約2,200兆円もの個人金融資産の半数以上は、依然として「現金・預金」に眠っています。

しかし、2024年に始動した「新NISA(少額投資非課税制度)」や、インフレによる預金の価値目減りに対する危機感から、長年叫ばれてきた「貯蓄から投資へ」の家計構造のシフトが不可欠な潮流となりました。家計の資金が毎月積立投資などを通じて株式市場へ流入し続ける仕組みが整ったことは、株価の長期的な底上げに寄与します。

第2章:「日経平均10万円」はいつ来るのか? 3つの到達シナリオ

「日経平均10万円」という目標地点に向けて、どのような道筋とスケジュールが想定されるのでしょうか。多くの証券会社アナリストやエコノミストの予測、および年率成長率のシミュレーションを基に、3つの到達シナリオを検証します。

シナリオ①:メインシナリオ(標準予測)

  • 到達時期:2032年前後(2030年代初頭)

  • 想定年平均成長率(CAGR):年率 6%〜8% 程度

多くの大手証券ストラテジスト(マネックス証券・広木隆氏、楽天証券・窪田真之氏など)が予測の軸としているのが、「2032年頃の10万円到達」です。

日本企業の利益成長(EPS成長率:年率平均約6.7%)と自社株買いが継続し、毎年6〜8%前後のペースで日経平均が上昇を続けた場合、数学的な複利効果によって2030年代初頭に10万円の節目へと到達します。過度な加熱(バブル)を伴わず、企業の稼ぐ力の拡大に即した持続可能な成長スピードと言えます。

シナリオ②:ブルシナリオ(楽観・加速予測)

  • 到達時期:2028年〜2030年

  • 想定年平均成長率(CAGR):年率 12%〜15% 以上

日本の労働生産性の劇的な改善、AI革命による企業の収益性爆発、政府の成長戦略の奏功、そして世界的な超ハイパーインフレが同時進行した場合のシナリオです。

海外投資家の資金が一気に集中し、市場の期待感を示すPERが過去の日本株水準(20倍台など)まで買われる「マルチプル・エクスパンション(PERの上昇)」が起きると、2020年代後半という想定以上のスピードで10万円を突破する可能性もゼロではありません。

シナリオ③:ベアシナリオ(慎重・遅延予測)

  • 到達時期:2038年〜2040年頃(または一時的な足踏み)

  • 想定年平均成長率(CAGR):年率 3%〜4% 程度

世界的な景気後退(レセッション)、深刻な地政学ショック、または日本国内での急速な少子高齢化による経済体力の減退が重なった場合です。

企業の利益成長は緩やかになり、途中で幾度かの暴落局面を挟みながら、インフレによる名目値のかさ上げだけを主因として、2030年代終盤から2040年頃にかけて遅れて到達するシナリオです。

【シミュレーション】年間利回り別の資産成長イメージ

株価の複利成長を視覚的に理解するため、以下にシミュレーションモデルを示します。仮に現在の株価から年率数%で成長を続けた場合、どのような軌跡をたどるのかを試算できます。

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第3章:日経平均10万円の未来に潜む「4大リスク」

「日経平均が10万円になる」と聞くと、多くの人は「日本が裕福になり、誰もがハッピーな世波がやってくる」と考えがちです。

しかし、経済の専門家たちが口を揃えて指摘するのは、「日経平均10万円の時代は、決してバラ色の未来ではない」 という点です。株価が上昇するプロセスの陰には、私たちの生活を脅かす4つの重大なリスクが潜んでいます。

【日経平均10万円時代における二極化の構図】

   ┌─────────────────────────────────────────────────────────┐
   │             日経平均株価 10万円の達成                    │
   └──────────────────────────┬──────────────────────────────┘
                              │
             ┌────────────────┴────────────────┐
             ▼                                 ▼
   【光:資産保有層・グローバル企業】   【影:非保有層・国内内需層】
   ・株価上昇による資産増大            ・悪いインフレによる生活苦
   ・外貨・世界成長の恩恵              ・円安に伴う購買力の低下
   ・格差の上位へシフト                ・実質賃金の低下と二極化

 

1. 購買力平価の崩壊と「悪いインフレ(悪性インフレ)」

株価が10万円に向かう最大のエンジンが「インフレ」である場合、それは「現金(日本円)の価値が著しく下落している」ことと同義です。

企業の業績数字がインフレで2倍になり、株価が2.5倍になったとしても、エネルギー価格や食品、生活必需品の値段がそれ以上に高騰していたらどうでしょうか。 給料の上昇が物価の上昇に追いつかない「実質賃金の低下」が続いた場合、日常生活の購買力は落ち、暮らしはむしろ苦しくなります。株高の裏側で進行する「円の価値の目減り」こそが、最大の恐怖です。

2. 「株を持つ人」と「持たない人」の格差の拡大(二極化)

資本主義の原則として、「資本収益率(r)は経済成長率(g)よりも大きい」 という法則(ピケティの法則: $r > g$ )が存在します。

  • 投資をしている人(資産家・株式保有層): 株価が10万円へ向かう上昇の波に乗り、資産を1.5倍、2倍、3倍へと拡大させることができます。

  • 投資をしていない人(現金・預金のみの層): 株高の恩恵を一切受けられないどころか、インフレによって銀行預金の価値が削り取られていきます。

この結果、社会全体の格差が急激に拡大し、「株を持っているかどうか」だけで個人の階層が決まってしまうという過酷な格差社会が到来します。

3. 円安の進行と「国力の低下」というパラドックス

株式市場の上昇が「極端な円安(日本円の価値下落)」を伴って起きるシナリオには注意が必要です。

例えば、日経平均株価が円ベースで10万円に達したとしても、1ドル=200円、250円と円安が進んでいた場合、「米ドル換算した日本株の価値(ドル建て日経平均)」はほとんど上がっていない(あるいは下がっている)という現象が起きます。

これは「日本企業の価値が高まった」のではなく、「円という通貨の価値が落ちたので、円で測った数字が大きくなっただけ」という状態です。世界的な購買力を失った日本は、海外からの輸入資材やiPhoneをはじめとする高度な製品・ITサービスを買いづらくなり、生活水準が低下するリスクを孕んでいます。

4. 財政懸念と「悪い金利上昇」のリスク

日本政府はGDPの2倍を超える膨大な公的債務(国債)を抱えています。デフレ期はゼロ金利政策によって利払い費用を抑えることができましたが、脱デフレとインフレの定着に伴い、日本銀行は金利の引き上げを余儀なくされます。

金利の上昇は、以下のリスクを引き起こします。

  • 国債の利払い増加: 政府の財政圧迫、将来的な増税や社会保障費のカットに直結。

  • ゾンビ企業の淘汰: 超低金利に頼って生き残ってきた業績の低い企業が破綻し、一時的な失業率の上昇を招く。

  • 住宅ローン負担の増大: 変動金利で住宅ローンを組んでいる家計の返済負担が急増する。

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第4章:激動の時代を生き抜く「金融・投資リテラシー」の重要性

ここまで解説してきた通り、「日経平均10万円」という未来は、準備をしている人にとっては「大きな資産形成のチャンス」であり、準備をしていない人にとっては「静かに資産が搾取される危機」となります。

この時代を生き抜くために不可欠なのが、「金融・投資リテラシー(お金の知識)」です。初心者が今すぐ身につけるべき、具体的な行動指針を整理します。

1. 「預金=安全」という思考停止からの脱却

日本人の多くは「銀行に預けておけば元本保証で安全だ」と教えられて育ちました。デフレの時代においては、物価が下がるため現金の価値が上がり、預金こそが最強の資産運用でした。

しかし、インフレの時代において「何もしない(現金のみで持つ)」ことは、「毎年確実に資産を減らし続ける選択」と同義です。

  • 年間2%のインフレが続いた場合、現在の100万円の買える力(購買力)は、20年後に約67万円にまで目減りします。

自分の手元にある資金を「ただ守る」ためだけにでも、購買力を維持できる資産(株式、不動産、外貨など)へ分散配置することが不可欠です。

2. 「長期・積立・分散」投資の基本法則を守る

投資経験がない初心者が、いきなり「どの日本株を買うべきか」と個別銘柄選びに悩む必要はありません。金融庁も推奨している投資の鉄則は以下の3つです。

  1. 長期(Long term): 10年、20年という長期視点を持つ。途中の暴落(ショック安)で慌てて売却せず、時間を味方につける。

  2. 積立(Dollar-cost Averaging): 毎月一定額を買い続ける。株価が高い時は少なく、安い時は多く買い付けることで、購入単価を自動的に平準化できる。

  3. 分散(Diversification): 1つの企業や1つの国だけに集中投資せず、世界中の企業や複数の資産クラスに分散する。

3. 具体的な資産配分の考え方(ポートフォリオ)

日経平均10万円の波に乗りつつ、円安やインフレのリスクから自分を守るための、初心者向けアセットアロケーション(資産配分)の考え方です。

初心者のための基本ポートフォリオ構成例

  • 生活防衛資金(現金・預金): 毎月の生活費の6ヶ月〜1年分。病気や突然の急出費に備えてすぐに引き出せる状態で確保。

  • 株式インデックスファンド(新NISAの活用):

    • 全世界株式(オール・カントリーなど): 世界全体の経済成長の波に乗り、特定の国(日本だけなど)のリスクを低減する。

    • 日本株インデックス(TOPIX・日経平均): 日本企業のガバナンス改革と「日経平均10万円」の上昇メリットをダイレクトに享受する。

    • 米国株(S&P500など): 世界のイノベーションの中心である米国市場の成長を取り込む。

日本に住み、日本円で給料をもらい、将来日本円で年金を受け取る私たちは、すでに「日本リスク」を大きく背負っています。だからこそ、新NISAなどを通じて「日本株の成長の波に乗りつつも、海外の成長や外貨資産にも目配りをする」という柔軟なスタンスが最大の防御策となります。

まとめ:未来を恐れず、知識を武器にして歩み出そう

「日経平均10万円」というテーマを通じて見えてくるのは、株価の数字そのものよりも、「日本経済の構造が不可逆的に変化している」という事実です。

  • デフレからインフレへの転換

  • 企業の資本効率重視と株主還元の強化

  • 「預金中心」から「投資中心」への社会構造の変化

10万円の時代が2030年代に訪れるのか、あるいはそれ以降になるのか、正確な日付を当てることは誰にもできません。しかし確かなことは、「変化に気づき、学び、行動を起こした人だけが、自分と家族の生活を守り抜き、豊かな未来を掴み取ることができる」という点です。

まずは月々数千円の積立投資からでも構いません。NISAの口座を開設してみる、経済ニュースを関心を持って読んでみる、といった小さな一歩が、激動の時代を乗り越えるための最強の武器となります。金融リテラシーを育みながら、来るべき新しい経済の未来へと一歩を踏み出していきましょう。

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